ウェルビーイングを押し上げる音楽「10の効能」
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ウェルビーイングを押し上げる音楽「10の効能」

ONENESS MAG - ワンネス財団

音楽の素晴らしさについて、今更説明するまでも無いでしょう。誰しも音楽に心を震わせ、活力・喜び・癒しを与えられた経験を持つもの。コロナ禍においては音楽を通して距離を超えて支え合う人々の様子が、ネット上に溢れました。(ロックダウン下のイタリアで音楽を楽しむ人々:https://www.youtube.com/watch?v=EBByYjjvNzs1)

今回は、近年様々な研究で明らかになっている音楽の効能についてご紹介します。音楽が健康にもたらす効果は、運動がもたらす効果の50%もあるとの研究結果も。本記事を読みながら、ウェルビーイングをグッと押し上げる、自分なりの音楽活用法を編み出してみてください。


音楽がもたらす10の効能

(1)認知能力の向上

あなたは作業時にBGM(バックグラウンドミュージック)を流す派ですか?それとも無音派ですか?

生産性を上げる目的でBGMが使われるようになったのは、1900年代初期のアメリカで、その頃より「音楽は仕事への意欲を向上させる」ことが広く認識され、工場内でBGMが流されるようになったそうです。実際、その後発表された多くの研究で、音楽によってパフォーマンスが向上することや、アップビートの曲で処理速度が上がること、記憶力が向上することが明らかになっています。2)

その背景には、科学的根拠があると、音楽心理学者の齋藤寛氏は説明しています。好きな音楽や作業に適した音楽を聴くと「やる気ホルモン」であるドーパミンが分泌され、適切な音楽を聴くことで、ストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌が抑えられるのだとか。3)

ただBGMがマイナスに働く場合もあります。計算やプログラミング、新しく仕事を覚えるときなど、脳への負荷が高い作業では、作業を邪魔してパフォーマンス向上にはつながらないことがあるそうですからBGMも使い分けが必要ですね。2)

(2)ストレスの軽減

リラクゼーションや瞑想のために作られたヒーリングミュージックは、今やジャンルとして確立していると言っても良いでしょう。2013年に行われたある研究では、ストレスにさらされる前に音楽を聴いた人とそうでない人の回復のスピードについて比較が行われています。その結果、音楽を聴いた人はより早くストレスから回復していました。音楽の自律神経への影響がその要因として挙げられています。2)

(3)食べる量を減らす

もしもあなたがダイエット中なら、部屋の照明を落とし、メローな音楽を聴きながら食事をしてみることをおすすめします。

ある研究によると、ソフトな音楽が流れる照明の少ないレストランで食事をした人は、他のレストランで食事をした人よりも18%も食事量が少なかったそうです。その要因として、音楽と照明がリラックスできる環境をつくり、その中で食事をすることで、満腹になるタイミングにより意識的になることが推察されています。家で食事をする場合、テレビや携帯電話など「ながら食べ」になりがちですが、食事とそれを取り込む自分自身の身体にゆっくりと意識を向けることで、減量だけでなく、心を満たす時間が過ごせそうです。2)

(4)記憶力の向上

音楽が学習効果を高めることは複数の研究で明らかになっています。ただ、どのような音楽が効果をもたらすかについては、その人の音楽の楽しみ方や音楽の好みによって異なると言われています。

興味深いのは、音楽がもたらす言語学習への効果です。音楽学習が言語習得を促進させることが複数の研究で明らかになっていますが、その要因には、音楽によって脳幹の言語音に対する感度、音声的・視覚的気づき、そして記憶力の向上があるそうです。4)5)

(5)痛みのコントロール

これまでの研究で、音楽が痛みの軽減に効果を発揮することが明らかになっています。線維筋痛症(全身の様々な箇所に痛みの出る病気)患者を対象とした研究では、1日に1時間音楽を聴いた人は、そうでない人と比較して大幅に痛みの軽減を感じていたことが分かりました。

2015年に行われた研究では、手術前、手術中、手術後に音楽を聴いた患者は、音楽を聴かなかった患者よりもより少ない痛みや不安を感じていました。また、7,000人以上を対象とした研究では、音楽を聴く人は、そうでない人と比較して、痛みを抑えるために必要な薬の量が少ないことも明らかとなっています。2)

(6)睡眠の質を上げる

不眠症は、倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下など、様々な不調をもたらすと言われており、深刻な病です。その不眠症の治療法にクラッシック音楽が効果的であることが明らかになっています。大学生を対象に行ったある研究では、参加者が3つのグループに分けられ、一つのグループは就寝時にクラッシック音楽を聴き、もう一つのグループはオーディオブックを聴き、3つ目のグループは何も聴きませんでした。その結果、クラッシック音楽を聴いたグループの睡眠の質が他のグループの睡眠の質よりも高いことが分かりました。2)

(7)運動のパフォーマンスを上げる

日本人なら「運動会で流れていた曲」と聴いてすぐに思い浮かぶ特定のクラッシック音楽がありますね。あの曲のような、テンポの速い音楽を聴くことと運動でのパフォーマンスの向上の関係性についても科学的に明らかにされています。

ある実験では、健康な男子学生12人に固定式の自転車を自分のペースで25分間漕ぐという課題を与えました。それぞれが6曲のポピュラーソングを聴きますが、その速度は学生らには知らされることなく調整されていました。その結果、曲のスピードを高めると、走行距離、ペダリングの速度、パワーなどのパフォーマンスが向上し、曲のテンポを遅くするとこれら全てが低下しました。2

(8)持久力をアップさせる

音楽を聴きながら走ることで、より速く走れるようになるだけでなく、モチベーションが上がり、持久力も高まることが明らかになっています。このことついてある研究者は、音楽によって身体が出す呼吸の増加、発汗、筋肉痛などの疲れのサインへの注意が削がれ、そのことによってパフォーマンスや持久力が高まるのではと説明しています。

また、運動に適したテンポの音楽は、1分間に125から140拍子で、音楽に合わせて体の動きをシンクロさせると、パフォーマンスやスタミナが向上するという研究結果があります。そして、その効果が最も顕著に現れるのは、運動強度が低~中程度の場合とのことで、つまり、激しい運動を行うプロのアスリートよりも、マイルドに運動を楽しむ一般人の方が、音楽を聴くことで得られる効果が大きいのです。2)

(9)幸福感アップ

音楽の利点のもう1つは、幸福感の高まりです。2017年に発表された日本の25歳から34歳の社会人男女2,700名を対象に行われた調査では、子ども時代の音楽系の習い事経験の有無と、大人になってからの幸福度の関係について調べています。その結果、子ども時代に音楽系の習い事を経験した大人は、幸福度が高く、「つながりと感謝」(幸福感を構成する要素)を大切にした人生を送っていて、「信頼関係構築力」が高いことが明らかになっています。6)

(10)うつ病を軽減する可能性

音楽療法は、音楽の持つリラックス効果やコミュニケーションを促進する効果を利用し、心身障害の改善や生活の質向上を目指す療法です。その歴史は古く、古代エジプト時代(紀元前5,000年頃)において、音楽は「魂の薬」と考えられていたそうです7)。

近年の研究結果では、音楽療法が認知症、脳卒中、パーキンソン病などの神経疾患を患う患者のうつ病を軽減することが明らかになっています。2)



いかがでしたか。冒頭でも触れましたが、音楽の効能に関する過去の様々な研究結果を分析した最新の研究では、音楽視聴、楽器演奏、歌うことなどが健康全般に与える効果は、定期的な運動がもたらす効果の約半分にも匹敵することが明らかになっています。

ただ実のところ、これらの効果のメカニズムについての詳細は明らかにされていません。一説では、特定の意図をもって音を作り出す作曲者と、その情報を受け取る聴衆の間に感情的なつながりが生まれることが、視聴者の心にポジティブな作用をもたらすと言われています。また、音楽と繰り返し関わることで、自律神経系の活性化パターンが引き出され、ストレス耐性が高まるとの説も。8)

さあ、今からでも、あなたの活動にピッタリな音楽を流してみましょう。ウェルビーイングの向上に最も効果の高い音楽、それは自分の好きな音楽だそうです。まずは過去に自分が「ワクワク」や癒しを体感した音楽の棚卸をやってみるのもいいですね。

(寄稿:泉谷道子 - 心理学博士)

引用文献:

1)The Italians Making Music on Balconies Under Coronavirus Quarantine | The New Yorker

2)Cherry,Kendra(2019), How Listening to Music Can Have Psychological Benefits. verywellmind, https://www.verywellmind.com/surprising-psychological-benefits-of-music-4126866

3)「BGM選びで業務効率に差が出る!在宅勤務でも仕事に集中できる音楽とは?」(リクナビNEXTジャーナル, 2020)https://next.rikunabi.com/journal/20201112_m01_s/

4)Wong, P. C. M., Skoe, E., Russo, N. M., Dees, T., & Kraus, N. (2007), Musical experience shapes human brainstem encoding of linguistic pitch patterns. Nature Neuroscience, 10(4), 420-422.

5)Herholz, S. C., & Zatorre, R. J. (2012), Musical Training as a Framework for Brain Plasticity: Behavior, Function, and Structure. Neuron 76, 486-498.

6)一般財団法人ヤマハ音楽振興会, 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 ヒューマンラボ(2017)「幼児期・児童期の音楽学習と幸福度やグローバルネットワーク 社会への適応力との関係性に関する調査」 報告書

https://www.yamaha-mf.or.jp/pr-release/2017/img/2017-1/2017-1_pdf01.pdf

7)高橋多喜子(2004)「音楽療法概説」日本補完代替医療学会誌1巻1号

8)J. Matt McCrary, Eckart Altenmüller; Clara Kretschmer; et alDaniel S. Scholz (2022)

Association of Music Interventions With Health-Related Quality of Life: A Systematic Review and Meta-analys, JAMA Netw Open. 2022;5(3):e223236. 



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