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誰もが「怪物」になりえるのなら

「怪物」を観た。

この涙はなんだろう、と思いながら泣いていた。

観終わったあと、言葉にならない感情にのまれながら、今すぐ誰かを抱きしめたくなった。
もし私が一人暮らしではなかったら、帰ってすぐに一緒に暮らしている人を抱きしめただろう。
どこにも寄らずにまっすぐ帰ろう、と思って映画館を出た。


*
帰り道、涙ぐみながら小雨の中を歩いてたら、前にいたおばあちゃんに、ふいに道を聞かれた。
私の涙に気づいたのか「あらごめんなさいね」と言ったあと、「地下鉄の駅はこっちで合ってる?」と尋ねるおばあちゃんの逞しさよ。
一気に思考が切り替わり「合ってますよ」としっかりした声で答えてから、ちょっと笑ってしまった。
そして思わずつぶやいた。人間だなぁ。

雨の音を聞きながら、スクリーンにいた「ふたり」を思い出していた。生まれ変われないことを受け入れて、生きることを選んだふたりを。残酷ともいえる結末の映像は、一番眩しくて綺麗だった。

*
*
誰もが「怪物」になりえる、といえばそうなのだろう。
では「人間」とはなんなのだろう。

心があるから人間なのか。
心を無くすと人間ではなくなるのか。
心とは、なんなのか。

そんな問いが聞こえてきた、映画だった。


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