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新しいコードとリズムで、料理に風をとおす〜『自分のために料理を作る』を読んだ3人による対話のキロク〜


かれこれ5年くらい通っているご飯やさん「おがわのじかん」のオンラインサロンで『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』を紹介したところ、続々とメンバーが手に取ってくださり(うれしい!)、感想をシェアしよう!と読書会を開きました。

その名も「あーだこーだ会」(おがわのじかんの料理担当・mizukiさん命名)。

山口さんの著書を糸口に、料理にまつわる悩みや気づきをお喋りしよう!という会です。


参加者は以下3名。

料理への苦手意識が強いyuiさん、47歳。夫と3人の子どもの5人暮らし。特に目分量で味付けするのが苦手。
本に出てくる土門さんの「料理のロジックがわかると納得できる」に共感。

料理をつくる、を仕事にしているmizuki さん、45歳。管理栄養士。夫と二人暮らし。料理は嫌いじゃないけど好きでもない。
普段意識せずに取り組んでいたことを著者の山口さんが言語化してくれた。

自分の料理が美味しいのかよくわからなくて自信が持てない私、37歳。一人暮らし。4人兄弟の長女で、小学生から料理をしてきた。
料理は嫌いではないけど、「やらねばならぬこと」としての付き合い。この会の言い出しっぺ。

1人ずつ本の紹介したい部分を朗読→感じたことや話したいことを発表する→それぞれに思ったことを言う、という形で進めました。

***

面倒なことのなかにも楽しさはある

まずはmizukiさん。
本の中にあった「料理のプロセスに注目する」に共感した、という話から始まりました。

野菜をトントンと薄切りしていく小気味よさ、鍋の中で玉ねぎを炒めた時の甘い香り、仕上げにバターがゆっくりと溶けていく様子、そういった五感からの刺激は料理中にしかありませんし、料理をしている人だけが感じられる特権です。

『自分のために料理を作る』31p

mizukiさんにとって料理は仕事でもある。義務になりがちだからこそ、この「過程を味わう」を拠り所にしているとのこと。

そして、日々のなかにある「面倒なこと」にも応用しているそう。たとえば洗濯物を早く乾くように、自分の思い通りに並べて干せて気持ちがいいな、とか。

家事って面倒くさい。
私は疲れているとき、時間のないときこそ「やらなきゃな〜」と思いながら後回しにしちゃう。
そして元気なときには、家事するより遊びたい。もっと楽しいことに時間を使いたい、と思う。
だから、どんどん人間がやらずに済むように、家事のスマート化が進むのもわかる。

でも。
この「面倒なこと」を「楽しいこと」に変えることができたら最高じゃない?

過程を味わう行為は、「面倒だな」と感じることのなかに、楽しさを見出そうとする行為。
これって「日々を能動的に生きる」ことにも通じるなぁ、とmizukiさんの話を聞いて思いました。


自炊に評価はいらないし、正解もない。


続いては私。
なぜ自分で作った料理が「美味しい」のかわからないのだろう?と考えた先に、
「作業のように料理をしてしまう癖」があることに気がついた、という話をしました。

脳内で作ったto doリストを消していく気持ちよさはあるのだけど、「やるべきこと」をこなしている感覚で、食べることすらタスクになっている。
どうしたらもっと料理を楽しく、好きになれるのだろう?どうしたら「美味しい」と思えるのだろう?

そんな疑問に応えてくれたのが、著者の山口さんが喫茶店にいった時の話。
以前から気になっていた喫茶店に入ったらすごく良いお店で、幸せな気持ちになった。そのことをSNSに書こうかと思ったけど辞めた、という内容でした。

私が特にグッときたのはこの部分。

自分が小さな幸せを味わえているならそれでいいじゃん、誰かにシェアする話でもないな、と。「今日いいことがあった」という誰にも奪われない自分だけの嬉しさを味わうことって、生きていていい自信にもつながる気がしていて。そういう嬉しさを味わうのに、料理はすごく役に立つのではないかと思っています。

『自分のために料理を作る』263p-264p


私が自分の料理を「美味しい」と思えない根源って、外からの評価がないからかも、と、このエピソードを読んでハッとしました。

仕事は外からの評価が得られるけれど、料理は、とくに一人暮らしでは得られない。
だからつい、SNSで投稿される食卓や、外食の料理と自分の料理を比べて、「私の料理は大したことないよなぁ」と低めの自己評価をしていました。

「美味しい」の基準が外だった。だから「自分が」美味しいかどうかわからなかった。

これからは外からの評価ではなく、内の納得感を大事にできたらいいな、という話をしました。


50歳手前で、初めて料理にトキメク

ここでyuiさんが「わたし、最近料理が嫌いじゃなくなってきたかもしれないです」と、まさかのどんでん返し発言。

子どもが大きくなり、時間と心の余裕ができたことで、料理に気持ちが向いてきたのだそう。

しかもyuiさんは、1週間分の献立を考えて、その通りに作っている、というから驚き!私なら7日分も考えられない!(食材によって多少変わることもある、と仰ってましたが)

「今はネットで食材名を入れたらレシピがたくさん出てくるから、料理のハードルが下がったことも大きいかも」とyuiさん。

「私にもできた!」という達成感を味わえると、またやってみよう、となりますよね。

そういう喜びが料理にあったこと、忘れてたー!
すんごくキラキラした目で「料理、楽しいかもと思えてきました」と話すyuiさんに「いいなー!そのトキメキ!」と羨ましくなりました。


スーパーは宝探しの場

特に盛り上がったのがスーパーの話。

本の中にあった「スーパーを制する者は料理を制する」というテーマから、スーパーではどこをみる?という話に。

mizukiさんがスーパーでみるところは、

豆腐とこんにゃく!

ものの違いが出やすいのが、この2つなのだそう。あとは肉と魚。
どちらも安価な食材だけど、いつもよりプラス50円のものを選ぶだけで、違いがわかるというから驚きました。

私はいつも平積みの豆腐しか買っていなかった!こんにゃくは買ったことすらなかった!

mizukiさん曰く「スーパーは宝探しの場」。だから二周回る。隅々まで見る。
宝探しってワクワクしますよね。
ここでも「楽しくしたい」というmizuki節が滲み出てるなーと思いました。


「なに食べたい?」がわからなかったら「食べたあとどうなりたい?」と聞いてみる


会の終盤、私がポロッと「自分に『なにを食べたい?』と聞いてみてもイマイチ答えが分からない」とこぼすと、mizukiさんはこう言いました。

「私は『何を食べたい?』よりも『どんなものが食べたい?』って聞くことが多いな」

さらに「食べたあとどうなりたい?」と自分に聞いて、食べているシーンまで妄想するとのこと。

なにそれ、めっちゃ楽しそう!

ビールを飲んでスカッとしたい!とか、熱燗でじんわり温まりたいとか、ワインでリッチな気分を味わいたい、とか。
お酒だとイメージできるのに、なぜか料理を作る時には「どうなりたいか」はイメージしていませんでした。

妄想って能動的でクリエイティブな行為。

自分がイメージした「こうなりたい」を、自分で叶えてあげられたら最高ですよね。

あーだこーだ会、その後

1時間ほどの読書会だったけど、まだまだ話し足りないくらい盛り上がりました。

一人で作る料理について誰かと話しをすることで、こんなにも心が軽くなるのか、とびっくり。

『自分のために料理を作る』は、料理についてお喋りするきっかけとして、ぴったりの本だと思います。
料理が苦手、面倒、と感じる人にはぜひ読んでほしい!そして読んだ人同士でお喋りしてほしい!めちゃくちゃ楽しいです! 



そして今回「料理に目覚めた!」yuiさんと、「料理の中に楽しさを見つけようとする」mizukiさんと話したことで、気づけたことがあります。

私は料理に飽きてたんだ、と。
作業化し、手癖だけで料理をしていたから楽しくなかったんです。

染みついたルーティンは何も考えなくて良いからラクです。これまで培ってきた自分なりのリズムもあります。

でも、料理を楽しみたい、もっと好きになりたいのなら。
新しいコードやリズムを取り入れるときなのかもしれないな、と思いました。

たとえば…
買ったことのない食材を使ってみる
今まで買っていた食材よりワンランク上を試してみる
「どんな風になりたい?」と食べるシーンまで妄想する
作る過程まで味わってみる
などなど。

こなすように繰り返してきた作業を見つめなおし、少しだけ変化させることで、「料理を作る」という行為に風が吹くイメージが湧きました。

***


読書会の帰り道。
いつものスーパーに寄り、
一番上の棚にあった一番高い絹豆腐(1丁298円)と、一番高いこんにゃく(12個218円)を、えいや!と購入。
こんにゃくの味噌煮と、温奴を作りました。

ゲスト:愛猫とおり。丸いものが気になるご様子


自分ために作った料理で、自分を満たしてあげられた。その喜びがじわじわとこみあげる、嬉しい夜でした。


最近は空前のこんにゃくマイブームが巻き起こっています。こんにゃく美味しい!

料理、楽しいかも!!


***


この会を開催してくれた「おがわのじかん」は、札幌にある「食事と空間」のお店です。
疲れた身体と心にじんわり沁みるおいしいご飯と、心地よい空間が味わえます。


食べたあとにやさしい気持ちになるご飯とスイーツです。ぜひぜひ。

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