新しいコードとリズムで、料理に風をとおす〜『自分のために料理を作る』を読んだ3人による対話のキロク〜
かれこれ5年くらい通っているご飯やさん「おがわのじかん」のオンラインサロンで『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』を紹介したところ、続々とメンバーが手に取ってくださり(うれしい!)、感想をシェアしよう!と読書会を開きました。
その名も「あーだこーだ会」(おがわのじかんの料理担当・mizukiさん命名)。
山口さんの著書を糸口に、料理にまつわる悩みや気づきをお喋りしよう!という会です。
参加者は以下3名。
1人ずつ本の紹介したい部分を朗読→感じたことや話したいことを発表する→それぞれに思ったことを言う、という形で進めました。
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面倒なことのなかにも楽しさはある
まずはmizukiさん。
本の中にあった「料理のプロセスに注目する」に共感した、という話から始まりました。
mizukiさんにとって料理は仕事でもある。義務になりがちだからこそ、この「過程を味わう」を拠り所にしているとのこと。
そして、日々のなかにある「面倒なこと」にも応用しているそう。たとえば洗濯物を早く乾くように、自分の思い通りに並べて干せて気持ちがいいな、とか。
家事って面倒くさい。
私は疲れているとき、時間のないときこそ「やらなきゃな〜」と思いながら後回しにしちゃう。
そして元気なときには、家事するより遊びたい。もっと楽しいことに時間を使いたい、と思う。
だから、どんどん人間がやらずに済むように、家事のスマート化が進むのもわかる。
でも。
この「面倒なこと」を「楽しいこと」に変えることができたら最高じゃない?
過程を味わう行為は、「面倒だな」と感じることのなかに、楽しさを見出そうとする行為。
これって「日々を能動的に生きる」ことにも通じるなぁ、とmizukiさんの話を聞いて思いました。
自炊に評価はいらないし、正解もない。
続いては私。
なぜ自分で作った料理が「美味しい」のかわからないのだろう?と考えた先に、
「作業のように料理をしてしまう癖」があることに気がついた、という話をしました。
脳内で作ったto doリストを消していく気持ちよさはあるのだけど、「やるべきこと」をこなしている感覚で、食べることすらタスクになっている。
どうしたらもっと料理を楽しく、好きになれるのだろう?どうしたら「美味しい」と思えるのだろう?
そんな疑問に応えてくれたのが、著者の山口さんが喫茶店にいった時の話。
以前から気になっていた喫茶店に入ったらすごく良いお店で、幸せな気持ちになった。そのことをSNSに書こうかと思ったけど辞めた、という内容でした。
私が特にグッときたのはこの部分。
私が自分の料理を「美味しい」と思えない根源って、外からの評価がないからかも、と、このエピソードを読んでハッとしました。
仕事は外からの評価が得られるけれど、料理は、とくに一人暮らしでは得られない。
だからつい、SNSで投稿される食卓や、外食の料理と自分の料理を比べて、「私の料理は大したことないよなぁ」と低めの自己評価をしていました。
「美味しい」の基準が外だった。だから「自分が」美味しいかどうかわからなかった。
これからは外からの評価ではなく、内の納得感を大事にできたらいいな、という話をしました。
50歳手前で、初めて料理にトキメク
ここでyuiさんが「わたし、最近料理が嫌いじゃなくなってきたかもしれないです」と、まさかのどんでん返し発言。
子どもが大きくなり、時間と心の余裕ができたことで、料理に気持ちが向いてきたのだそう。
しかもyuiさんは、1週間分の献立を考えて、その通りに作っている、というから驚き!私なら7日分も考えられない!(食材によって多少変わることもある、と仰ってましたが)
「今はネットで食材名を入れたらレシピがたくさん出てくるから、料理のハードルが下がったことも大きいかも」とyuiさん。
「私にもできた!」という達成感を味わえると、またやってみよう、となりますよね。
そういう喜びが料理にあったこと、忘れてたー!
すんごくキラキラした目で「料理、楽しいかもと思えてきました」と話すyuiさんに「いいなー!そのトキメキ!」と羨ましくなりました。
スーパーは宝探しの場
特に盛り上がったのがスーパーの話。
本の中にあった「スーパーを制する者は料理を制する」というテーマから、スーパーではどこをみる?という話に。
mizukiさんがスーパーでみるところは、
豆腐とこんにゃく!
ものの違いが出やすいのが、この2つなのだそう。あとは肉と魚。
どちらも安価な食材だけど、いつもよりプラス50円のものを選ぶだけで、違いがわかるというから驚きました。
私はいつも平積みの豆腐しか買っていなかった!こんにゃくは買ったことすらなかった!
mizukiさん曰く「スーパーは宝探しの場」。だから二周回る。隅々まで見る。
宝探しってワクワクしますよね。
ここでも「楽しくしたい」というmizuki節が滲み出てるなーと思いました。
「なに食べたい?」がわからなかったら「食べたあとどうなりたい?」と聞いてみる
会の終盤、私がポロッと「自分に『なにを食べたい?』と聞いてみてもイマイチ答えが分からない」とこぼすと、mizukiさんはこう言いました。
「私は『何を食べたい?』よりも『どんなものが食べたい?』って聞くことが多いな」
さらに「食べたあとどうなりたい?」と自分に聞いて、食べているシーンまで妄想するとのこと。
なにそれ、めっちゃ楽しそう!
ビールを飲んでスカッとしたい!とか、熱燗でじんわり温まりたいとか、ワインでリッチな気分を味わいたい、とか。
お酒だとイメージできるのに、なぜか料理を作る時には「どうなりたいか」はイメージしていませんでした。
妄想って能動的でクリエイティブな行為。
自分がイメージした「こうなりたい」を、自分で叶えてあげられたら最高ですよね。
あーだこーだ会、その後
1時間ほどの読書会だったけど、まだまだ話し足りないくらい盛り上がりました。
一人で作る料理について誰かと話しをすることで、こんなにも心が軽くなるのか、とびっくり。
『自分のために料理を作る』は、料理についてお喋りするきっかけとして、ぴったりの本だと思います。
料理が苦手、面倒、と感じる人にはぜひ読んでほしい!そして読んだ人同士でお喋りしてほしい!めちゃくちゃ楽しいです!
そして今回「料理に目覚めた!」yuiさんと、「料理の中に楽しさを見つけようとする」mizukiさんと話したことで、気づけたことがあります。
私は料理に飽きてたんだ、と。
作業化し、手癖だけで料理をしていたから楽しくなかったんです。
染みついたルーティンは何も考えなくて良いからラクです。これまで培ってきた自分なりのリズムもあります。
でも、料理を楽しみたい、もっと好きになりたいのなら。
新しいコードやリズムを取り入れるときなのかもしれないな、と思いました。
たとえば…
買ったことのない食材を使ってみる
今まで買っていた食材よりワンランク上を試してみる
「どんな風になりたい?」と食べるシーンまで妄想する
作る過程まで味わってみる
などなど。
こなすように繰り返してきた作業を見つめなおし、少しだけ変化させることで、「料理を作る」という行為に風が吹くイメージが湧きました。
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読書会の帰り道。
いつものスーパーに寄り、
一番上の棚にあった一番高い絹豆腐(1丁298円)と、一番高いこんにゃく(12個218円)を、えいや!と購入。
こんにゃくの味噌煮と、温奴を作りました。
自分ために作った料理で、自分を満たしてあげられた。その喜びがじわじわとこみあげる、嬉しい夜でした。
最近は空前のこんにゃくマイブームが巻き起こっています。こんにゃく美味しい!
料理、楽しいかも!!
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この会を開催してくれた「おがわのじかん」は、札幌にある「食事と空間」のお店です。
疲れた身体と心にじんわり沁みるおいしいご飯と、心地よい空間が味わえます。
食べたあとにやさしい気持ちになるご飯とスイーツです。ぜひぜひ。