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スマホ落としただけなのに

志賀晃 2017年

・あらすじ

麻美の彼氏の富田がタクシーの中でスマホを落としたことが、すべての始まりだった。拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なハッカー。麻美を気に入った男は、麻美の人間関係を監視し始める。セキュリティを丸裸にされた富田のスマホが、身近なSNSを介して麻美を陥れる凶器へと変わっていく。一方、神奈川の山中では身元不明の女性の死体が次々と発見され……。

志賀晃『スマホ落としただけなのに』(2017)宝島社 表紙あらすじ

・感想

名前だけは聞いたことのあった作品でしたが、一度も読んだこともありませんでした。何年か前に映画化されていたので多分それで知っていました。

物語は「麻美」の彼氏がスマホを落としたことから始まります。そこからさまざまなことが重なり、殺人未遂事件の被害者になってしまいます。ここに関しては、実際にお読みいただいた方が分かりやすいかと思うので、ここでは省きます。

私たちはいつもスマホとともに生活を営んでおります。それなしでは生きていけないほど、世の中もスマホに依存している状況です。しかし、日々平穏な暮らしを営んでいる中で、ちょっとした安全神話が確立し、「これくらいなら大丈夫」と甘く見ている部分があるように感じるとこの作品は伝えているように思います。

スマホを落とす、それを危険な人物に拾われるということで、今回の話は展開されていきますが、ちょっと抜けていたところから危険なものは入り込んでくるものだということがよくわかる作品だったと思います。スマホを落とすということは確率的にはまだ低い方かもしれませんが、SNSで発信をしている中で、写真から大まかな在住地域が特定されたり、住所が特定されたりして、自分やその身の回りが被害を被るということも何度も見てきました。そういった中で、インターネットやスマホの存在を決して甘く見てはいけない、スマホの画面ばかり見ていると、思わぬことに気づきにくくなったり、意図せず取り返しのつかない事態を引き起こす原因になったりしかねないと考えることができました。

私もこの間電車の中で、スマホを落としかけて、何とか後ろにいた人に「落ちてましたよ」と言われて届けてもらうことがありましたが、こういったことはいつでも隣りあわせなので、本当に気を付けないと危ないと、ここ最近思うところです。

・書籍情報

初版刊行:2017年4月20日
刊行元:宝島社
定価:715円(税込)
ページ数:403
ISBN978-4-8002-7066-5
備考
刊行にあたり、第十五回『このミステリーがすごい!』大賞最終選考作品「パスワード」を改題し、加筆修正した。

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