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1日10分のときめき NHK国際放送が選んだ日本の名作

石田衣良 他 2024年

・あらすじ

慌ただしい日々の中に一日一編、極上の物語を――。稀代のダンサーが見せる無踏の無上の美しさと、孤独な魂。一人の青年に瞬時に恋した胸の高鳴り、そして儚さ。定年退職し、故郷の町に戻ってきた男が迎える新たな人生。深夜のタクシー乗り場で居合わせた老人が繰り出す奇妙な話……。NHK WORLD-JAPANのラジオ番組で、世界各国の言語に翻訳して朗読された日本の小説から、色とりどりの八作を収録。名だたる作家の短編を堪能できる、シリーズ第四弾!

『NHK国際放送が選んだ日本の名作 1日10分のときめき』 石田衣良 他 (2024)双葉社 表紙あらすじ

・感想

今回の作品は家族からの勧めでした。「ときめき??」という感じで最初はその抽象さにイマイチ掴めなかったのですが、後半になるにつれて、「ああ、こういうことか」と点と点を繋がったような感覚になりました。

私たちは普段生活する中で、何もない日々に時々「ときめき」を感じるような出来事がありますよね。この話は、そういったことを描いた作品です。一人の青年が瞬時に恋した胸の高鳴り、そして儚さ。定年退職し、故郷の町に戻ってきた男が迎える新たな人生など、普段の何気ない生活に「ときめき」を感じる作品です。

当作品の後半にあたる森絵都さんの「太陽」という章はとても印象的でした。歯が痛くて歯医者に行ったという話なのですが、診断結果が心からくるものだということに少し感じるものがありました。ひどく落ち込んだりしたときは、胸が締め付けられるというか鷲掴みにされるような感覚に陥りますよね。そういったことが書かれて、人の心の状態は顕著に表れるものだと改めて感じました。

「何が引っ掛かってここまで、歯の痛みにつながっているのだろう」と書かれていて、心の痛みって、これが原因と自分で予測をたてられても、「これだ」という確証がないですよね。そういったところに原因が分からずに、日々悩む人々の気持ちが映し出されているように感じました。

森さんの作品と言えば『カラフル』のイメージが強く、私も以前読んだことがあります。あの作品は自殺した中学生が主人公として登場するのですが、やはり、心に関する話題が多かったという印象です。「森さんの作品はそういった作品が多いのかな」と思いました。『カラフル』も「太陽」も少し行き詰った、この先どうしようかと悩む人の心に寄り添うような作品といった感じですね。

「ときめき」という言葉。何かかけがえのない人や物に対する、思い出であったり、日々の生活であったりなのではないかなと感じます。私は高校生までの思い出や、誰かにこれをしてもらったとか、そういったものがときめきなのではないかなと感じます。ちょっと違うかな…?と思ったりしながら...。

・書籍情報

1日10分のときめき NHK国際放送が選んだ日本の名作 石田衣良 他
初版刊行:2024年2月14日
刊行元:双葉社
定価:本体600円+税
ページ数:216p
ISBN978-4-575-52726-1
備考
「出発」        『再生』角川文庫 2012年刊
「私と踊って」     『私と踊って』新潮文庫 2015年刊
「アイスクリーム熱」  『愛の夢とか』講談社文庫 2016年刊
「給水塔と亀」     『浮遊霊ブラジル』文春文庫 2020年刊
「愛してた」      『おばちゃんたちのいるところ』中公文庫 
            2019年刊
「決して見えない」   『地下街の雨』集英社文庫 1998年刊
「太陽」        『獣の夜』朝日新聞出版 2023年刊
「父が背中で見た花火」 『家族の分け前』双葉文庫 2012年刊

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