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ヅカメン お父ちゃんたちの宝塚

宮津大蔵・著 2020年

・あらすじ
「女なのに男の格好して……一体どこがいいんやろ?」鉄道員一筋だった多々良源蔵は定年直前、それまで全く関心のなかった宝塚歌劇団の<生徒監>に任命された。突如娘たち(タカラジェンヌ)の”お父ちゃん”となったことに戸惑いつつも真摯に向き合ううち、そのまなざしに変化がー。大道具、プロデューサー、演出、父兄……タカラヅカを支える男たち=ヅカメンが織りなす、七つの奮闘物語。(本書、あらすじより引用)

・感想
約20倍の倍率の超難関の音楽学校を有し、数多くの芸能人を輩出してきた、日本トップクラスの名劇団、「宝塚歌劇団」を題材にした小説です。

私は、宝塚にはあまり興味がなく名前を時々聞くぐらいでしたが、女性しか入ることの出来ない場所と言うことは知っておりました。ですが、後ろでは多くの人達が男女関係なく、多くの人たちが手を取り合って一つの舞台を作り上げているんだという事が、よくわかる小説でした。

物語は、定年前の阪急の鉄道マンが、会社経由で宝塚の生徒監(生徒を仕切る役職)に抜擢されるところから始まります。そもそも、阪急と宝塚が関係していることを知らなかったので、驚きました。演劇では、右も左も分からないような素人で困惑しているようでしたが、なんだかんだ慣れてきて、ちゃんと、形になってきているのが印象的でした。

また、音楽学校に入りたいと、専門の演劇塾に通い、友達とともに絶え間ない努力をして、試験を受ける学生の姿も描かれていました。ものすごく厳しい指導を受け毎日、涙を流しながらも成長してゆく姿、印象的です。

その後、入学できた人はさらに2年間の声楽や稽古もして、ここでも涙を流し…。この話は、生徒たちの成長物語でもあるのです。最終的に、大規模公演の主演級の役をもらったりして成長する姿は、外部に力を加えられ、折れそうになりながらも、咲こうと懸命に努力する花のようでした。

私も、本以外の趣味に舞台観賞があります(この二年くらいの間に始まったから、まだ、そんな沢山行ったわけではないけど)。前回は、2022年の春頃ですが、演者の方々の演技の一つ一つの魂が込められているようで、とても感動しました。そして今回、演者だけでなく、チケットを販売する業者の方、劇場内のスタッフの方々、そして、監督や演出家、脚本家まで、そこに関わるたくさんの人たちが手を取り合い、総力を挙げて私たちに提供しているという事を、気付くことの出来る物語だったと感じております。

次回から舞台を見るときは、そのことも心の片隅で考えながら、見ていきたいと思いました。

・書籍情報
初版発行:2020年3月20日

発行元:祥伝社

定価:本体700円+税

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