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「接面」から考えるオフラインミーティングの速度

 近年オンライン会議アプリ”Zoom”をはじめとしたオンライン上での顔を突き合わせての会議が仕事の主流に置き換わりつつあるように思います。我々も現在企業に向けてのミーティングを重ねていますが、住んでいる場所の関係上どうしてもオンラインで話すことがほとんどです。
 オンラインでの会議も今ではみんな慣れてきて違和感なく行えている方がほとんどなのではないでしょうか。しかし、初めの頃を思い浮かべてみてください。初めはスムーズにいかなかったのではないでしょうか?少なくとも私は初めは違和感だらけでした。機器の操作の不慣れ、自宅で行うという環境の不慣れなど要因は様々考えられますが、一番違和感だったのがコミュニケーションの部分です。なんとなくこちらの意図が伝わりづらい、向こうの話が入ってこない、それらが相まって話が進みにくい。そんな、何が原因でこうなっているのかはっきりしない違和感に悩まされました。
 オンライン会議が普及してからしばらく時間は経ってしまいましたが、そのような違和感の正体とも言えるような概念を私は学生時代に教えられていたことを思い出したので皆さんにも共有したいと思います。

現行最新技術でのオンライン没入感

 日本では、オンライン会議で主流なアプリケーションとしてはZoomやSkypeだと思います。これらは会議やオンラインでのビデオ通話アプリとして進化しており現行(私が知っている限りの)最新技術の会議アプリであると思います。果たしてその技術は従来のオフラインでの会議に追いつけているのでしょうか?
 4G回線、あるいは一部地域では5G回線が普及する中、ビデオを用いたオンライン上での画面のみやすさは格段に向上していると思います。そしてそれに合わせてビデオを盛り込んだアプリの特徴はまさに最前線。そして会議に特化し、画面ごと録画できたり、資料を簡単に共有できたりとそれに合わせたギミックも備えています。正直、非常に便利。今ではなくてはならない必需品と言えます。

 ところで、この話題について書こうと決めたきっかけとなる出来事がありました。先日起業仲間の林くんと久しぶりにオフラインで話す機会がありました。その時に林くんがいった一言が衝撃でした。

 「宇央って足生えてたんやな」

 確かに。格段に進化した会議アプリやインターネット回線を持ってしても、視覚・聴覚・嗅覚的に得られる情報を実際に感じるのと同じかそれ以上に伝えることは不可能なのです。オンラインミーティングでは上はジャケット、下はパンツ一丁で参加する人がいるということは有名な話で、実際にその人が今どういう格好でどういう匂いでどういう抑揚をつけて話しているのかということは、実際にはあまり伝わっていないということがわかりました。その人にはその人なりの文脈が一日、数分単位であります。汗をかいて会議室に入ってきた人は何かあって急ぐことがあったのかな?とか、こちらが暗黙のうちに汲み取る文脈もあります。そういった一見会議とは関係のない情報がコミュニケーション上では大切で、オンライン会議で私が感じている違和感なのではないかと考えました。現行の最新技術でも、そういったたくさんの情報をオンタイムで交換しあえる没入感はまだ足りていないと感じます。

”接面”という概念

 これは私が大学生の時に授業で聞いたことのある話です。その頃は、正直難しい内容でしたし、あまり授業に対するモチベーションもなかったので聞き流してしまっていたのですが、今になって勉強し直すとすごく面白く感じるものでした。

 「接面」とは発達心理学者で京都大学名誉教授の鯨岡峻(くじらおかたかし)先生が提唱している概念です。鯨岡先生によると、”気持ちを向け合う人と人のあいだには独特の空間、雰囲気が生まれます。そのような人と人のあいだに成り立つ独特の空間や雰囲気をさしあたり「接面」と呼ぶ”そうです。
 少しわかりづらいですね。すごく簡単に親しみやすい言葉を用いると、「空気を読む」ということではないかと理解しています。
 正確には鯨岡先生は、AさんとBさんがあるシチュエーションでその文脈をお互いが理解し、一方の主張にもう一方が寄り添うことで、客観的にそこにあるものではなく、あくまで主観的、あるいは間主観的に寄り添っている側の主体に生じるものであるとおっしゃっています。難しいですね〜。笑
 実際に私も正確無比に接面について理解できているわけではないので、ここでは簡単に述べさせていただきました。
参考:鯨岡峻,接面とエピソード記述,エピソード記述研究プロジェクト報告会

 私はコミュニケーションを取る際は結構相手に対して配慮しているつもりです。そのため、その場の空気感や相手の感情などには敏感な方かなと思います。そういうこともあり、この接面という概念は結構しっくりくるものがあります。そして接面を作り出すためには、私はその瞬間瞬間の文脈を非常に大切にしています。さらにはその瞬間の文脈を正確に捉えるためには、情報量が必要だと考えています。

 話は戻りますが、オンライン会議でこのような接面は作れているでしょうか?私はできていません。情報量が圧倒的に足りていないからです。
 それこそ、足が生えているとか、こんな服を着ているとか、息遣いとかそういった情報、文脈を捉えられていません。

久しぶりのオフラインミーティング

 先ほど林くんとオフラインで会う機会があったとお話ししました。林くんとは約2年ぶりに会うのですが、オンラインで毎週のように話しているので久しぶりに会うという感覚はあまりなかったです。しかし、いざミーティングをしてみると驚くことがありました。今まで散々オンラインで話していたにも関わらず、オフラインでのミーティングは異常なまでにシームレスで話が進むスピードも段違いでした。
 これが接面の影響かはわかりませんが、明らかにコミュニケーションはスムーズに取れました。お互い言いたいことの本質を汲み取ることができましたし、やはり、何度も言いますが、オフラインでの情報量はコミュニケーションにおいては凄まじく大切であると感じました。


 現在、オフライン中心の生活スタイルに戻すことはまだまだ難しい社会情勢です。そして、オンラインの充実によって今後もオンラインでの活動は増えることでしょう。しかし、我々も人間、コミュニケーションをし、その中では”空気を読む”生き物です。そしてここからは人それぞれだと思いますが、オフラインでの仕事、遊びは最高です。皆さん、来るべきオフラインへの復帰をクソ楽しみに待ちましょう!

 ではまた!

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