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普通列車で聴く方言

大学1年の春休み、私は無性に京都に行きたくなった。というのも、私が大好きな森見登美彦さんの作品の舞台が京都になっており、聖地巡礼をやってみたくなったからだ。手元にある軍資金は7万円、4月にたくさん教科書を買うことを考えれば、あまり贅沢はできない。
そこで思い浮かんだのが、青春18切符を使って在来線を使って京都まで行く方法だ。仙台を朝6時に出て京都につくのは夜の10時半。16時間半の長旅ではあるか、景色もよく見えるし、悪くはないだろう。結局私は青春18切符を購入することにした。

しかしながら、何もしないで16時間を車内で過ごすのはヒマである。何をしようかしばし考えた挙げ句、私は人の話す言葉にひたすら耳を傾けてみることにした。1日かけて、仙台から京都まで行くのだから、何かしらの違いを楽しめるのではないか。そんなことを思いながら私は電車に乗り込んだ。完全な主観ではあるが、以下のような印象があった。

仙台→郡山(東北本線)
馴染みの言葉、馴染みのイントネーションがよく聞こえてくる。相槌で「だから!」を使うのは、福島でも共通なようだった。福島は宮城に比べるとイントネーションが平坦?な印象だった。

郡山→黒磯(東北本線)
相槌の「だから!」は聞こえなくなった。話し方はほぼ標準語に近い(少し平坦なイントネーション)。

宇都宮→平塚(東北本線→東海道本線)
ザ標準語。話すスピードが速くなっているように感じた。ちょいちょい浦和レッズのユニフォームやジャイアンツの帽子を身に着けた人が乗ってきた。

平塚→静岡(東海道本線)
標準語に近いイントネーションに聞こえるが、語尾が独特。熱海を過ぎたあたりで「〜するら?」を自然に使いこなす中年の男性がいた。生で初めて聞いたので驚いた。

静岡→名古屋→米原(東海道本線)
徐々に西日本の「〜やろ?」が聞こえるようになる 子供の被っている帽子が中日ドラゴンズになった。大垣を過ぎたあたりから関西弁がよく聞こえてくるようになった。

米原→京都(東海道本線)
米原駅で乗り込んできたサラリーマンたち、歯切れのよい関西弁で話す。(大阪に比べるとやや柔らかく聞こえる?)関西に来たと本格的に実感した。

新幹線や飛行機を使うことで、便利に素早く移動することはできる。しかし、各駅停車を使ってゆっくりゆっくり旅を進めることで、それぞれの土地に暮らす人々の言葉や息遣いにほんの少し触れることができた。お金を節約したからこそ得られる経験もあるのだ。

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