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ほわほわなKiss

俺は、ある女のぬいぐるみだ。

たまたま、女が寄り道したゲーセンのUFOキャッチャーでとられてから、ずっと布団の片隅に居座っている。

時折、俺を日の当たる場所に置いてくれることもある。

俺の女は、子どもじゃない。大人の女だ。

ひとり狭いアパートで、今日も、黙々と働いているんだろう。

帰ってきたら、いつも「疲れた」と、独り言。

実際に彼氏もいねぇみたいだ。

たまに、女は俺に香りの水をかける。

「アロマ」ってやつか・・・。

その日によって、石けん、薔薇、レモン、いろんな香りを俺に身に纏わせる。

それから、女は、眠る前にそっと、俺にキスをする。

チュッと。ほわほわなキッス。眠る前に歯を磨いた女とのキスは、ミント味。

今夜も俺は、女を抱いて眠る。

女の夢の中で、俺は、ミントのようにクールにしながらも、石けんのように甘く、薔薇のように大胆に、さらに、レモンみたいに爽やかに、女を抱いてキスをする。

女の唇が本物の男に奪われた時は、俺は、捨てられるだろう。

でも、その時までは、俺の女。

今夜はどんな香りを俺につけるのだろう。

言葉も話せない。動くことができない。そんな俺でも、唯一に女に贈れるプレゼント。

それがキス。

#創作大賞2023 #オールカテゴリ部門


(続編):

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