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【Audible本の紹介16】深夜特急3インド編(沢木耕太郎)

今回紹介する本は、1986年に初版が発行された、日本人青年のアジアからヨーロッパへの一人旅の記録と、その途中での思索を追った「深夜特急」の、第3巻のインド・ネパール編です。

30年くらい前に読んだ本ですが、内容は普遍的で、古びれた感じはありません。

2023年6月に第1巻がAudible化されたときは、とてもうれしかった記憶があります。
それ以降、順次移行が進み、現在は第5巻までAudibleで聴くことができます(第6巻=最終巻は今年12月の予定です)。

あらすじ(1~6巻)

深夜特急は、1970年代、「インドのデリーからイギリスのロンドンまでを乗り合いバスで行く」と思いたった著者の沢木耕太郎さんが、香港を皮切りに、ユーラシア大陸横断の旅をした話です。
日本の若者が、身一つで世界を見に行く、貧乏旅行ブームの時代であり、その文学的なアイコンのような存在です。

インド・ネパール編について

ホテル探しや賭博場での駆け引きが印象的だった香港・マカオ編、色々な人との出会いや国や都市による違いが大きかった東南アジア編、に比べ、最も、重たく、ディープな雰囲気があるのが、インド・ネパール編です。

今でもかもしれませんが、日本はもちろん、東アジアや東南アジアとも別物なほど、属する層による貧富の格差、カーストなどによる社会の格差が存在する南アジアは、日本社会との違いが大きいことが鮮明です。

置かれた環境を、自然なもの、当たり前なものとして、したたかに、辛抱強く、受け入れて、あるいは受け流して、生活している現地の人たちを見つめる筆者の視線は、若者らしさもありつつ、基本的に冷静です。

街中には物乞いをしている人が多くて、物乞いをする病気の子供やほとんど動けない老人の様子や、不慮の事故などで死んだ人は土葬されずに川に流されるのを、毎日眺めて過ごした中で、生活に死が隣り合っていることを筆者は感じています。この辺りも、インドに特徴的なことだと思います。

また、インドでは、同宿したヨーロッパの若者の中の精神を病んで死んでいく人を見て焦りを感じたり、自分が体調を崩して不安になることなど、放浪が長くなってきた旅人としての感情も強くなってきます。

なお、インドの児童養護施設のようなところで、日本の大学生とインドの子どもたちと一緒に共同生活をして、筆者は、インドの子どもたちを取り巻く環境の変化に、希望を感じています。
この記述や筆者の心の動きがあったことは、自分の過去の読書の記憶に残っていませんでしたので、今回読んだ時には強く印象に残りました。

このように、今回、30年ぶりくらいにあらためて読んでみて、昔読んだ時には気づかなかったこともいっぱいありました。昔読んだ本を久しぶりに読むのも悪くないです。

最後にあらためてAudibleと文庫本の紹介を。

冒頭述べたように、現在、Audibleになっているのは1から5です。6は12月の予定です。文庫本は2020年に新版が発行されていて、現在も手に入ります。



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