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島根県庁の食品輸出支援の取組をより具体的に紹介します

今回の記事は、前回の食品輸出の記事の続きとして、より具体的に県庁の取り組みの考え方やその内容を紹介してみたいと思います。写真のオーストラリア向けの食品輸出商談会を事例に取り上げます。

島根県の食品輸出企業の現状

 食品企業の輸出額は単価が低いため急に増加させることは難しく、すぐには増えません。現状、輸出額は、その企業の全体売上高の数%程度であるケースが多いです。
 輸出取組が進み、輸出額が全体売上の10~15%までいくと、事業者のやる気も変わってきて、より本格的な取組のステージに入ってきます。
 おおよそ、輸出金額が1,000万円を超え、数千万円から1億円になってくると輸出にしっかり取り組んでいると認識できると思います。現状、県内には、そのようなリーディングカンパニーが十数社あります。

島根県庁の輸出支援の考え方

 次の図に示すように、島根県庁は、各国のバイヤーや国内商社を招聘して商談会を行い、県内食品企業の渡航を伴う現地フェアを行って、定番化を図るという流れで活動を行っています。(この図は、商品が定番化するまでの理想的な流れを示すものでもあります。少なくとも島根県庁の考えでは。)
県庁が企画し、複数社(1回あたり10~20社程度)の県内食品企業がその企画に参加するという仕組みです。
平成23年ごろにこのやり方を始め、13年間、毎年、やってきています。


 上記の図のような島根県のやり方は、行政による手厚い支援と捉えられている一方、県庁がお膳立てや事後フォローするやり方は「企業の自立」に繋がっていないと指摘されることがあります。
 何をどこまで支援すべきか、よく考えながらの取組が求められています。

どんな食品企業が輸出を伸ばすのか?どんな支援を行うのか?

 第一には、やる気のある企業を支援することが大事です。一方、輸出を大きく伸ばす可能性がある企業(競争力の高い商品を持っている企業、商品ブランディングができている企業、輸出体制がしっかりしている企業など)を行政側がピックアップし、集中的に支援することも必要です。

 一定の企業に対し強力な支援を行い、成功事例を作り、その横展開を図るとやり方もあると思います。

 多くの県内の食品企業は小規模であり、海外展開のノウハウを有する人材は、まだ多くありません。このため、セミナーによる輸出人材の育成、無料で参加できる商談会の企画や企業向け助成金などの支援が行われています。

各国のバイヤー向けの食品輸出商談会の開催(具体例の紹介)

 今年度の最初の食品輸出商談会として、オーストラリア向けWEB食品輸出商談会が企画され、参加企業募集のちらしがウェブに公開されましたので、これを引用する形で、商談会の開催の仕方を紹介します。

 今回の商談会は、9月にオーストラリア現地で島根フェアを開催することが先に決まっている(←県庁と現地輸入企業との事前調整の結果として)ので、そのフェアでの商品採択を目的とする商談をするという形になります。
 輸出して商品が現地に届き店頭に並ぶには数か月かかるので、このタイミングで商談を実施する必要があります。

 ウェブ商談が増えていますが、これはコロナ禍を経た変化です。一方、現地輸入企業が来県して商談することも多いです。直接会う方が試食や商談がしやすいし、食品工場の視察もできるからです。

 基本的に、1回の商談には1バイヤーしか参加しません。そのバイヤー専用の商談会として、県内からは20社程度の食品企業が参加し、各社30分程度で順番に商談する流れを取ります。

 商談結果は、その場では判明はせず、後ほど採択・不採択の結果が伝えられることが多いです。成約した商品は輸出手続きに入ります。ここから先は、食品企業と輸入会社が直接、または輸出会社が間に入る形で交渉が進みます。一方、行政は現地フェアの開催について輸入会社と調整を進めます。

補足コメント(今後のこと)

 説明してきたのは、県庁と食品企業が連携し、輸出拡大を図る取組です。途中でも書きましたが、手厚すぎる行政支援と言われてもおかしくない部分も多いです。
 例えば、企業が、自らの力(だけ)で、上記のようなサイクルを回し、販路拡大することができれば、ダイレクトに活動できるという点で、より良いですし、現実にそのように自ら取り組んでいる県内企業が現れ、さらに増えてきているのも事実です。行政も、少しずつそのスタンスを現状により合うものに変えながら、効果的に支援を継続していくべき、と思います。

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