見出し画像

地方の食品輸出は間接輸出が主流です

今回は「輸出に取り組む地方企業の実際の動きはどんな感じなのか?」を紹介する記事を書きます。これまで書いている「県庁の輸出支援の取組の考え方」のベースとなる事項として、輸出企業の動きを紹介します。


1.島根県の食品輸出企業の現状(前回記事と同様の記述)

 食品企業の輸出額は単価が低いため急に増加させることは難しく、すぐには増えません。現状、輸出額は、その企業の全体売上高の数%程度であるケースが多いです。
 輸出取組が進み、輸出額が全体売上の10~15%までいくと、企業の考え方も変わってきて、より本格的な取組のステージに入ってきます。
 おおよそ、輸出金額が1,000万円を超え、数千万円から数億円になってくると輸出にしっかり取り組んでいると認識できると思います。現状、県内には、そのようなリーディングカンパニーが十数社あります。

2.輸出には間接輸出と直接輸出の2種類があります

 次の図①②に示すように、食品輸出の方法は、海外バイヤーとの交渉や、物流業者の手配、輸出手続き、出荷、代金回収などを自社で行う「直接輸出」と、物流事業者や海外バイヤーの間に輸出商社が入る「間接輸出」 の2つがあります。

 「間接輸出」は負担やリスクが軽減できる方法ですが、間に商社が入る分だけ、食品企業にとっての利益は少なくなります。

 一般に、輸出取組の初期段階や輸出量が少ない間は間接貿易(輸出)を選び、輸出取組が進み、輸出量が増えてくると直接貿易(輸出I)を選択する傾向があります。

図①

図②

経済産業局資料より

ジェトロの方が、食品(農産物)の輸出の進め方を解説した記事があり、その中で、間接輸出が説明されていましたので、参考に紹介しておきます。


3.島根の食品企業は間接輸出が多いのか?直接輸出はどのくらいあるのか?

島根の食品輸出企業は100社強ですが、そのうち80%が間接輸出をしていて、20%が直接輸出をしています。

 直接貿易をしている会社は、県内でも輸出量の多い会社である傾向があります。例えば、冒頭述べたリーディングカンパニーの何社か、該当します。

 一方、間接貿易をしている会社の中には輸出量の多い会社から少ない会社までまんべんなく含まれます。輸出量如何にかかわらず、商社を通じた間接貿易にメリットを感じる場合は、この選択をする判断があると思われます。

 いくつかの県内企業は、直接貿易と間接貿易の両方をしており、対象国や海外バイヤーとの話し合いにより、より良い方を選択しているものと思われます。このやり方は、輸出のチャンスを(貿易条件が合わないことを理由に)逃さなくて済むし、場合に応じてリスクとリターンを判断できる、という意味で、良い方法だと思います。

 多くの県内の食品企業は小規模であり、貿易のノウハウを有する人材は、そこまで多くありません。このため、支援機関によるセミナーによる輸出人材の育成や、無料で参加できる商談会の設定などの支援は必要です。

4.食品以外の島根企業の輸出は間接と直接が半々くらいの割合

食品以外の輸出企業は70社程度ですが、そのうち半分が間接輸出をしていて、半分が直接輸出をしています。

 この中には、大企業の島根工場、地元資本の製造業、卸サービス業などのいくつかのパターンが含まれますが、特に、それらによる傾向の差はみられません。

 例えば、大企業の島根工業の場合では、企業として自ら輸出する場合もあるし、貿易専門の会社に輸出をしてもらっているケースもあるようです。

 ただし、地元資本の製造業の場合は、輸出量の多少にかかわらず、直接貿易をしているケースが多いようです。同じ地元資本でも食品企業とそれ以外の製造業では傾向に差が見られます。 

5.最後に(全国的な状況について)

 最後に、ウェブ上に掲載されている資料、『製造業の間接輸出に関する分析』(独立行政法人経済産業研究所)に、全国的な状況を分析した資料がありましたので、いくつかのグラフを借用し、あわせて、リンク先を紹介しておきます。

 先ほど述べた島根県の状況との比較としてご参照ください。

参考①

参考②

『製造業の間接輸出に関する分析』(独立行政法人経済産業研究所)

https://www.rieti.go.jp/jp/publications/pdp/19p002.pdf




この記事が参加している募集

#仕事について話そう

110,303件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?