【サブスク】月額5000円で乗り放題の相乗りタクシー「mobi」うまくいくか?
こんにちは、思考力特訓中の恩田です。
本日は、月額5,000円乗り放題相乗りタクシー「mobi」を取り上げます。
特徴は、
・サービスエリア内を循環する相乗りタイプの交通機関
・第1弾として、京都府の京丹後市で6月30日から、渋谷区で7月1日から運行が開始される
・必要な時にアプリや電話で呼ぶと約10分で配車され、AIにより利用者の予約状況や道路状況を考慮しながら最適なルートを効率良く移動できる
・サブスクリプションに参加している利用者同士で乗降ポイント等を提案しながら、自分たちが欲しい移動サービスを作ることもできる
・料金は月額5,000円で乗り放題。同居家族を6人まで登録可能で、1人あたり月額500円を追加することで利用できる。
・定額以外での利用も可能で、1回あたり大人300円、子供150円でも利用できる(現金のみ)。
要は、
「近場移動」×「AI」×「定額乗り放題」×「継続課金(サブスク)」
といったビジネスモデルですね。
わかりやすい図があったので、
なんか便利そうですね!
それではいきましょう!
『月額5,000円乗り放題相乗りタクシーmobi』
「利用者は増えるか?」
「利益は出せるか?」
1.背景
mobiを提供しているのは高速バスのWILLER社。
少し調べると同社以外にも
小田急電鉄やニアミーが同様のサービスを実験・開始しているようです。
この1年で人々の移動が大きく様変わりしました。
WILLERが提供していた長距離移動や小田急の通勤など。
これら従来の移動手段への需要が激減。
移動サービスを提供している各社にとっては一大事であり、事業の変換、移動における新たな事業の創出が余儀なくされています。
そこへ、
「通勤や旅行などの中・長距離移動は減ったが、ご近所スーパーへのお出掛けは増えた」
「高齢者の通院や買い物など近距離移動に対するニーズは従来からある」
人々の行動の変化、高齢人口の増加などによる近距離移動者が増え、そこにニーズが生まれた。
この新たなニーズに着目し、消費者インサイトを捉まていく過程で、このようなサービスに行き着いたと想像します。
2.利用者は増えるか?
「①顧客」と「②価格」の面から考えます。
①顧客
近場移動ニーズは、高齢者の通院・スーパーへの買い物、塾や保育園・介護施設への送迎、駅から離れた工場などへの出勤などなど。
このニーズに対し従来の移動手段だと、
タクシーは割高。
バスは停留所がピンポイントになかったり、待ち時間が長かったり。
徒歩や自転車だと雨・風、また重い荷物を運ぶ時など困難。
などの不が存在します。
ここに前項で述べた消費者インサイト(消費者も気づいていないニーズ)を当てはめると、
・スーパーで買い過ぎてしまい荷物が想定以上に増えてしまった
・急な大雨でびしょ濡れ、歩いて帰れない
こんなシーンで気軽に乗れる車があればいいけど、タクシーやバスだとタイミングや価格によりその瞬間にニーズと合致しない。だから我慢してしまう。
これら不に対して、同社の
「低価格で行きたい時に車両を呼び出し、好きな場所で乗り降りできる」
(言うなれば、自宅に電話して家族に車で迎えにきてもらう感覚)
こんなサービスがあれば利用したい人は一定数いそうですね。
②価格
まずはマイカー所有やカーシェアとの比較から。
mobiは月額5,000円、家族4人でも6,500円。
年間60,000円(家族4人78,000円)。
仮に月に1回程度長距離移動する場合はレンタカーで10,000円/1日(年間12万円)。
そうするとmobi+レンタカーで年間20万円ほど。
マイカー所有者にとって、mobiの利用で車両購入費、維持費、燃料費などを大きく削減できます。
また、カーシェアも相場は150円(10分)~200円(15分)程。
買い物行き帰りで1時間位は使用するでしょうから、約1,000円。
利用回数にもよりますが、ある程度乗るのであればmobiの方がコストは抑えられそうです。
次に、このサービスがサブスクとして成立するか?
定額と都度を価格面から比較すると、
定額は5,000円/月。
都度は大人1回300円、子供150円。
大人が月17回以上利用するなら、定額利用がお得。
2日に1回、もしくは1回の外出で病院行ってその帰りにスーパー寄ってなど1日に何回も利用する人。
これに該当する場合はサブスクの方がお得です。
一方、月17回未満であれば、サブスクは採算が合いません。
まず、この回数が都度かサブスクかを選択する大きな要因になりそうです。
しかし、1回300円はかなりお得ですね。
都内タクシー初乗り410円。
2km移動すると730円。
都度利用ユーザーも多くなりそうですね。
ここまでの論調だと敢えてサブスクにしなくても・・
という印象ですが、ここで一考!
サブスクが成功するための要件は何か?
いくつかあるでしょうが、私が思いつくのは、
「一発支払いよりも継続払いの方が割安(但し、リースのように契約期間の縛りはない)」
「継続した方がメリット・ロイヤリティー・優越感が高まる(購入後のサービス価値が高い/サービスが売切りモデルではない)」
「インフラ化されたもの(昔でいうところの新聞や牛乳の宅配、現在では通勤・通学の定期券など)」
この中で、mobiはインフラ化できる可能性を感じます。
特に、ご近所移動が多い高齢者にとって。
先の項で述べたように近場移動には確実に不があります。
mobiのサービスに慣れてしまうと徒歩・自転車・バス移動よりは快適でしょうから、元の生活には戻れなくなってしまうのでは?
そうすると定額利用でありがちな支払った分の元を取れないと勿体ない的な発想は減るのではないかと。
(新聞を読まない日があるから定期購読は無駄、土日電車に乗らないから定期はやめようとはならないのと一緒)
そう考えると、サブスク利用者を確保するためには、サービス初期の段階でなるべく多くの人に利用してもらい、その人たちに快適な移動を提供し、このサービスから離れられなくすることが会員定着を図るポイントかと思います。
(ちなみに同社のHPを見ると、先着200名様を先行割引で募集してました。ここからいかに定着を図るかは興味深いですね)
3.利益は出るか?
本サービスで想定される問題として、
「利益」
「会員と車両のマッチング(車両は足りるか?)」
が考えられます。
同社は、
「地域ごとの200世帯・30店舗に絞り込む」
「1エリアにつき2~5台で運用」
と発表しています。
会員が増えすぎるとマッチングできず、「呼べば10分で来る」がコミットできなくなる可能性が高まります。
利用者数はサービスが提供できる数に制限する。
しかし、その一方で利用者数を制限すれば、売上もそれ以上は上がりません。
そうするとコスト削減による利益捻出となりますが、一番のコストはドライバーの人件費でしょう。
これに対する解として、同社は自動運転、ロボタクシーでのサービスの展開を視野に入れています。
今のところ2エリアでのサービス開始ですが、2025年までに60都市・90エリア拡大を想定。
この頃にロボタクシーが実用化されれば利益は十分に見込めるでしょう。
将来利益を見込んで、今はサービス、技術開発の実験・投資に力を入れている。
同社の利益は、協業先とのパートナーシップ、技術開発、そこに至るバリューチェーンが鍵と言えそうです。
今回の学び
「一つのニーズの消滅(不の解消)は新たなニーズ(不)を生む、もしくは新たなニーズ(不)が顕在化しやすい)」
今回の場合だと、通勤・旅行の需要がなくなったことで、新たな近場の移動という行動が増え、またその行動における不が出現したり、その不に気がついたり。
「事業定義は広く、俯瞰して、時代に適合して」
もしWILLERが自社の事業を「高速バス事業」と捉えていたら、今回の高速バス需要減により、同社の存続は危ぶまれていたかもしれません。同社HPの事業内容に「交通ネットワークの創造」と記されています。本事例はまさにその言葉を体現していると感じます。
以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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