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オリオン座とよだかの星。

昨夜のこと。

帰りが久々に24時を過ぎ、肩を少しすぼめるくらいの寒さにほくそ笑みながら、住宅街を早足で歩いていると、視界の端。

マンションの遮りがなくなった夜空に、オリオン座がくっきりと煌めいていた。
「!」と足を止めて、改めて見上げてみる。

放射冷却みたいなクリアさが感じられる。
まだそこまで寒くないのだけれど。

雲ひとつなく、星座見本表そのままの、
綺麗なオリオン座がそこに。

なんとも言葉にならない感動がここに。

ドキドキしてるのは、早足で歩いていたからだけど、なんか。なんていうか。
「オリオン座だぁ」としか思えないのだけど、なんか。なんだかとても。

じわぁ、と涙がせり上がってくる。
溢れるほどではないけれど。


思い出した。

前職、くたくたにくたびれて、よろよろダラダラと帰る夜道。
同じ箇所で、同じようにオリオン座を見つけたことがあった。

「オリオン座か」と一瞥だけして、足を止めることはなかった。
「もう冬か」とだけ思った。

それなのに、こんな風に思い出すのは、
その時のオリオン座も同じように美しかったからだと思う。

オリオン座は去年も今年も、10年後も200年前も美しい。
変わらず美しく在るのに、見え方は変わる。

全ては己次第であることを、深く確認できた。

でも南半球から見たら逆さまになるから…
いや、逆さまでも美しさは同じだ。
相変わらず、天邪鬼だ私は。

昨夜、溢れるほどではないけれど、
オリオン座に見惚れて、涙がせり上がってきたこと。
今の自分は悪くないことの証左に思えて、励まされた。


そして、
「星」というと「よだかの星」を思い出す。

宮沢賢治の「よだかの星」。
小学生…5年生くらいだったか…クリスマスプレゼントが「よだかの星」だった。
正直「え?」と思った当時の私。
もっとクリスマスっぽい、キラキラしたものが良かった。
てゆうか「よだか」って何。だった。

父が「もうわかる歳になるだろうから、読んで考えて欲しい」と思ってのセレクトだったらしいけれど、やさぐれた気持ちもあって、読まなかったのだ。

読まないまま、どっかにいった。
読まないまま、大きくなった。

今思えば、本当に申し訳ない。ごめんなさい。
捨ててはないから、実家のどこかに…あるのだろうか?


こう、思い出して、記す機会があるのだから
「よだかの星」何十年かの時を経たが読まなければ。

少女の心の、澄んだ読み方は難しいだろうけれど。
今の心で、読んでみて、父に感想を伝えよう。

「銀河鉄道の夜」もストーリーがあやふやであった。
宮沢賢治の作品を再履修、を年内の目標に加える。


-20221027-




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