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銭湯。

銭湯が好き。

前職に在職中は、週2の割合で、リュックにバスタオルと銭湯セットと入れて出社し、勤務後の賄いを辞退して、22:45くらいに銭湯に滑り込んでいた。

1時間ちょっと、銭湯を堪能して、終電1本前の電車にも滑り込んで帰宅するような、そんなルーティンであった。

行きつけの銭湯は、自宅の最寄り駅から2つ離れた場所にあり、通勤定期圏内でもあったので通うコスパも良かったし、施設もキレイだった。


銭湯は良い。

ほぼ深夜に近い時間帯での利用なので、空いているし、他のお客さんも"今日の仕事を終えて”という人たちばかり。同年代の人もいれば、だいぶ年配の方もいる。

言葉を交わすことはないが「どうも…」というような会釈を交わす。労わるような、讃え合うような、本当に湯気のようにほんわりと優しい空間。

それぞれが「ひとり」を尊重し、堪能しているのが、心地良い。


お湯は熱めの設定なので、身体を洗っているだけでも充分身体は温もってくる。

銭湯セットには、小さな固形石鹸を入れていたので、くるくると手で泡立てて、その手で身体を洗う。自宅で身体を洗う時は作業みたいなものなのに、銭湯でだと丁寧になるのが、何だか可笑しかった。

特に足指や足裏を丁寧に洗っていると、優しい気持ちになるのだ。


熱めの湯がたっぷりと張られている浴槽に浸かる。
こっそり顎の先が浸かるまで沈むのが好きで。そうすると、頭の中でモヤモヤしっぱなしであった仕事のアレコレが霧散していった。


はぁぁー。


真冬に熱燗を一口飲んだら思わず出るであろう、質の良いため息がでる。

生きてるからこその悦びだわ。と毎回本気で思っていた。

なーーんにも考えられずに、目を瞑っていることもあれば、水面から立つ湯気をぼんやり眺めたりもしていた。

ぼんやりしているのに、どんどんとスッキリしていく感覚がある。


風呂は心の洗濯、とは良く言ったものだ。


私が通っていた銭湯には、炭酸の湯もあって、熱湯の浴槽で一頻り温まると、フラリと炭酸湯にも浸かりに行く。

炭酸湯はこじんまりとした洞のような造りで、薄暗く、湯もぬるい。
永遠にいられるような、極度に疲れてる時は「胎内みたい」とか思ってしまったりする位に、落ち着いた空間になっていた。

たまにカクンカクンと寝てしまっているお姉さんがいて、それを見守りながら何かをぼんやりしているのが好きだった。

こだわりは、炭酸湯→水風呂→炭酸湯→水風呂…の交代浴だ。
(水風呂で締めるのがとても重要だ)

後に起こるサウナブームのテレビ解説で、こだわりの交代浴の後に待ってる至福の状態が「整う」という状態であることを知るのだが、この言い回しには膝を打つ思いだった。


そう、整うのだ。




都内の銭湯は大体25時まで営業をしているので、終電1本前の時間に合わせて退店していた。

真冬はホームで電車を待っていると当たり前に寒いのだが、銭湯後はずっとポカポカしていて、その対比がたまらない。一人で「くふふ」としあわせに浸っていた。

だから冬って良いのだ…。

電車に乗るそばからもう眠い。
ふわふわと帰宅し、寝巻きに着替え、ふわふわと歯を磨き、ベッドに沈むと、のび太君みたく寝ついてしまう。それはもう「堕ちる」という表現が相応しく。




400円でこのパフォーマンスを得られるなんて、銭湯は最高だ。

友だちと連れ立っては行きたくない。
できるだけ孤独にして、それでこそ満ちるように過ごせるのが最高だ。

10回に1回くらいの割合で飲む「オロナミンC」が最高だ。

そしてやっぱり、
冬に通う銭湯が、風情が深まって一番最高だ。





-20220722-
最近全然行っていないので、今週末に銭湯してきます。











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