本と育つ、本で育つ A girl who likes adventure stories!
小学三年生で江戸川乱歩の「少年探偵団シリーズ」に夢中になった私。十歳までは冒険もの、探偵もの、どちらかというと男の子が好みそうなものを読み漁っていた。そのきっかけとなったのは小学校低学年で読んだ二冊、「宝島」と「ロビンソン・クルーソー」である。いずれも「夏休みの課題図書」の一冊として我が家にやって来た。本屋で自分で選ぶのであれば手に取らずに通り過ぎたかもしれない本と出合うことも、子ども時代にはとても大切である。その意味で「夏休みの課題図書」が果たしてくれた役割は大きかった。
どちらも小学校低学年向けに簡略化、単純化された物語ではあったが、私はその虜となった。読んでいてドキドキするような本は初めてだった。ドキドキしながらワクワクして、怖がりながらも先を読まずにはいられない。そんな本も初めてで、あっという間に読んでしまった。この二冊は私にとって、「海外文学」「異国文化」というものを初めて意識させてくれた記念碑的な本でもあった。「宝島」の「ベンボー亭」、「ヘイ・ホー」という掛け声、「ロビンソン・クルーソー」の「人食い人種」「フライデー」、そのほか海賊、悪党、野蛮人、葡萄酒にラム酒、山羊のチーズ、パイプ、革袋などなど・・・自分の周りの世界にあるものとは全く違う香りのする場所、人、ものたちの魅力的であったこと。まさに異文化との出合いであった!
さて、その様子を見ていた父が「もう読めるのではないか」と自分の古い蔵書から出してきてくれたのが「トム・ソーヤーの冒険」である。こちらは小学校中学年から高学年向きという体裁で、文字も小さく漢字も多かった。更に父が子供の頃の本なので言い回しが古い部分もあったのだが、古い本の持つ古風な雰囲気やにおい、昔ふうの挿絵も相俟って、マーク・トウェインの時代のアメリカの空気を感じているような心もちになれた。そして私はこの本にもすぐ夢中になった。まず、ポリーおばさんが「トム!」と叫ぶ冒頭がとても気に入った。どれくらい気に入ったかと言うと、その部分を音読してカセットテープに録音したくらいである!後年、原文を目にした時に、冒頭が「Tom!」で翻訳と全く同じであることに(当たり前なのだが)思わず感動し、児童文学における最初の一文の重要性を認識したものである。「主人公トムは『悪い子』らしい」と思わせるこの冒頭部分でぐっと引き寄せられ、そのトムがハックルベリーと繰り広げる冒険に心躍らせ、その自由な精神に憧れた。トムはずる賢く、さぼることばかり考えているが、この本を読んでいるとそれはいけないことではなく、むしろ子供らしくて素晴らしいんじゃないか!と思えてくる。ハックルベリーは学校に行っていない。そもそも学校に所属すらしていないのだから「不登校」ですら無い。学校が存在しない生活!ハックルベリーを羨ましがるトムの気持ちに共感である。読んでいてこんなに伸び伸びした気持ちになれる本も無かった。
「宝島」、「ロビンソン・クルーソー」、「トム・ソーヤー」、更に「ルパン」「ホームズ」「巌窟王」と読み進んだ私。いずれも「男の子向き」と言われそうな作品だが、好みに男女の別は無い。女子だって冒険は大好き!最近はジェンダーレスになりつつある世の中だけれど、子どもの読書もジェンダーレスをお勧めしたい。きっと素晴らしい出合いがあると思う。
なお、小学五年生の時に初めて訪れた東京ディズニーランドで、私が最も楽しかったのは「カリブの海賊」であった。これはまさに宝島の世界!私は一日のうちに「カリブの海賊」に十回近くも乗ったという珍しい小学生である。ディズニーランドの入口近くにあるこのアトラクション、多くの人が人気アトラクションまっしぐらの開園直後、そして夕方以降はガラガラで、乗り終わったらそのまま入口に戻れば待ち時間無しでまた乗ることが出来たのだ…係のお兄さんやお姉さんは、ぐるぐる何度も回っている小学生にきっとびっくりしていたことだろう!