サムネ

ゲストハウス×英会話を通じて、子どもの世界を広げたい ー  てま里 井上可奈子

「本当にやりたいことって何だろう?」そんな問いを胸に秘めていたり、「あれをやりたいな」とぼんやり見えても、行動に移せない人は多くいます。

「わたし、失敗を恐れるタイプなんです」と笑う井上可奈子さんもそのひとり。ただ井上さんの違うところは、もやもやをそのままにせず、もやもやを言葉にして自分と向き合い、出来ることをやり続けてきたこと。縁もゆかりもなかった南部町へ移住し、ゲストハウス・寄り合場の「てま里」運営と英会話教室を営む彼女に、いまの取り組みについてお話しを聞きました。

地域の人主導で動き出した『てま里』プロジェクト

地域おこし協力隊であり、『てま里』を運営する一般社団法人の専務理事でもあり、個人事業主でもある井上さんは、子ども向けの英会話教室と『てま里』の運営を行なっています。

井上:「町内に公民館や行政の運営するスペースではなくて、ふらっと遊びに来たときに誰かがいて、みんなでワイワイできる場所が欲しいということで、地域の方が検討委員会を立ち上げたことが『てま里』ができるきっかけになっています。」

自然体11-2

井上可奈子:広島出身、国際基督教大学卒業後、広島FM放送にて5年間イベント企画運営、広報に携わる。教育格差への問題意識から、NPO法人Teach For Japanより2年間公立中学校の英語教員を務める。2018年より鳥取県南部町地域おこし協力隊、一般社団法人手間山の里専務理事に就任し、地域の方と共に食べて泊まれる寄り合い場てま里を立ち上げる。2019年4月よりゲストハウス運営、英会話教室を担当。ゲストハウスで英会話教室をすることで、子どもにいろんな大人を出会わせることが目標。好きな食べ物はピザとさつまいも。

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井上:「南部町も関わり、賑わい創出事業の1つとして古民家改装を行うことに。地域の人たちが自分たちの手でビジネスを立ち上げて、自分たちの場所を守っていく活動をしようと、『てま里』が生まれました。」

『ご飯を食べられる場所が欲しい!』『宿泊スペースがあったらいいよね。』と施設の話は進んでいく一方で、誰が実際に運営するのかは決まっていなかったそう。その情報を知人から聞き、手を挙げたのが井上さんでした。

井上:「オープンまでの1年で、どのような中身にするか話を詰めることになったんです。そこで、手間地区の賑わい創出担当の地域おこし協力隊として応募して、南部町に来ることになりました。」

南部町に来て2年。地域おこし協力隊の任期が終わった後もゲストハウス運営と英会話教室を続け、色々な人が出入りできる場所にしたいと井上さんは語ります。

真剣横6

鳥取に来ることになるとは思いもしなかった

井上:「前職の『Teach For Japan』で知り合った人が鳥取で先生をしていたんです。その先生から『南部町で、ゲストハウスをやりたい人を探している』という情報を教えてもらいました。」

「実は、鳥取へ住むつもりは全く無かったんですよ」と笑う井上さん。結果として移住した彼女は、決め手になった理由は3つあると言います。

井上:「1つ目は、ゲストハウスで子どもの英会話教室を実施すると決めていたので、小学校や中学校が複数ある南部町は、のどかな場所だけど教育へのニーズがあると思いました。2つ目は、この建物が周りの環境も含めてすごく魅力があると直感で思ったことです。」

外観

「自分の田舎に似て田んぼに囲まれた、のどかな里山のような場所の方が落ち着くんです」と井上さんは続けます。

井上:「そして3つ目は、ゲストハウスの情報を教えてくれた男の子の挑戦的な取り組みを受け入れてくれる周りの人たちがいたことです。」

里山に囲まれた自然環境や建物の魅力も去ることながら、南部町の『珍しいことをやる時に面白がってくれる人』の存在が大きかったそうです。

井上:「都会から地方に住むのは『移住』と言って、おおごとなイメージがあるかもしれませんが、私自身、地元が田畑に囲まれた田舎だったこともあって、移住というよりは引越しという感覚です。知り合いがいないことが少し心配でしたが、地方の雰囲気はイメージできていたので、都会から地方に移り住むことに不安はあまりなかったですね。」

周りにいた大人が、親と先生ぐらいだった

井上:「大学時代、友達に『将来の夢ってなに?』と聞いた時『プロフェッサー。』と言われて衝撃を受けたんです。プロフェッサーって教授なんですけど、話を聞くとその子の祖父が教授だったみたいで。私のまわりの大人は親と先生ぐらいだったので、その時に、育った環境によって見える世界や目指すところが変わってしまうんだということを実感しました。」

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井上:「もっと小さな頃から、地域の方や外国から来た人、都会から来た人など、色々な人の話を聞くことで、自分のやってみたいことや世界が広がると思うんです。だから、色々な人が行き交う場所を作って、子どもに色々な大人を出会わせてあげたいんです。」

お話を聞いたのは、てま里の中にある大きな木のテーブルが印象的な場所。ここは地域の“寄り合い場”としてイベントや交流の場が定期的に開かれています。

イベント時

(絵手紙教室の様子)

宿泊者は、地域の人からおすすめのお店や体験を教えてもらったり、地域の子どもたちは外国や旅人の話しを聞く。お互いの日常の中にある“交わり”を、この場所を通じてつくっていきたいと話してくれました。

『本当にやりたいこと』ってなんだろう?

真剣5-2

もともと教育に興味のあった井上さんですが、最初に就職したのはFMのラジオ局でした。

井上:「最初に就職したFMラジオ局では、イベントを企画やしたり、色んなLIVEへ出かけて取材をしたり、ラジオのライブCMを作りながら、『どうやったらお客さんは来てくれるかな?』とか、『どういうイベントで、どういうゲストを呼んで、どんなことをしたらクライアントもお客さんも喜んでくれるのか?』というようなことを考えたり。裏方をしていて、音楽が好きだったのでとても楽しく働いていました。」

井上:「でも、ずっとやらなきゃいけないというか、やりたいと思っていた『教育』とは離れていたので、そこをどう自分のやりたいことと組み合わせるのか悩んだ時期もありました。社会人5年目の時かな。『自分のやりたいことってなんだろう?』という問いと向き合った時に、『ゲストハウス×英会話』というのが見えたんです。」

旅が好きで世界中のゲストハウスを巡り、『旅先での出会いが自分の世界を広げてくれる』体験をしてきたことが今につながっているそうです。やりたいことに思い悩んだ時、井上さんのように『自分の好き』に気づくことで、可能性が広がるのかもしれません。

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自分が納得できるまではやらない

井上:「自分のベースは怖がりなので、『やりたいからやっちゃえ!』というわけにはいかなくて。だから、やりたいことに向かって、少しずつ進んでいくんです。英会話教室を開くために、先生になり、ゲストハウスを運営するために開業合宿に参加したり、自分の中で納得できるまではやらないんですよ。もやもやする気持ちがあったら、『なんでもやもやするんだろう?』って自分に問いかけて、書き出した後に、その理由を潰すようにしています。」

途中でめんどくさくなってしまいがちですが、もやもやと向き合う時間はとても大切。『私は詰めが甘いと周りの人に言われるんですけど』と苦笑する井上さんですが、そんなスキがあるのも、まわりから好機が運ばれてくる理由かも。

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もっとディープな南部町を楽しんで欲しい

井上:「『てま里』に来られるお客さんは、どちらかというと米子のホテルのお客様層に近くて、鳥取市の方で砂丘にいった人が、翌日に大山へ行く時や、境港や出雲大社に行く時のハブとして使われているんです。私としてはもっと長期間滞在してもらって、南部町を楽しんでもらいたいので、今後は南部町をディープに楽しむことができるきっかけや体験を作りたいと思っています。」

果物の収穫体験や、そば打ち体験を始め、昆虫博士との探検会やザリガニを食べたり...?!、様々な体験イベントを紹介してくれます。

横顔 解説-3

井上:「面白い体験は多くあるのですが、地域の方の協力を借りながら定期的にやっていくことがなかなか難しくて、『自分にできることはなんだろう?』って考えたときにサイクリングに行き着いたんです。」

地元に住んでいる詳しい人のガイドがつくことで、これまで見えなかった景色が見えて、新たな発見や心地よさを感じると井上さんは言います。

井上:「先日走った時はコウノトリが見れて。出会いもあり、美味しいものもあるので、今後はサイクリングツアーをてま里でも企画しようと思っています。」

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井上:「外国の宿泊者の方が来たときに、子どもたちが英会話教室で習ったことを実践できる機会をつくりたいんです。『好きな食べ物はなんですか?』とか、簡単な会話でもいいので、英語が通じたっていう体験をして欲しい。そのような機会を増やすために、もう少し外国のお客さんを増やしていきたいですね。」

地域を深く、深く。記憶に残る旅を

井上:「『てま里』のホームページから予約してもらう際に、興味あることにチェックを入れてもらうようにしてるんです。『明日、出雲大社に行こうと思うんです。』という人には、もっと小さいディープな神社をオススメすることで、地域をもっとおもしろがって、記憶に残る旅をしてほしいと思っています。」

笑顔正面

世話焼きだから紹介したい。そう話す井上さんはまさに、『地域の案内人』。彼女のもとへ飛び込んだらきっと、自分が予想もしなかった出会いや可能性に気づけるはず。

井上:「とりあえず『てま里』に来ていただければ、面白い人に繋げることができます。人との関わりから鳥取をもっとおもしろがりたかったら、ぜひてま里に遊びに来てくださいね!」

てま里:https://temari.tottori.jp/

文・撮影:米泳ぐ(森田 悟史/河津 優平) 編集:藤吉 航介

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