新しいライフスタイル「家泊(いえはく)」を鳥取から提案 ー昭和民宿 龍神荘 オーナー 間淵 武志ー
「鳥取の綺麗な海に惚れて、移住しました」と語るのは、民宿のオーナーや移住相談アドバイザ―として日々鳥取の魅力を県外の方々に発信し続ける、間淵武志さん。間淵さんは、大阪から地域おこし協力隊として鳥取にやってきました。
今回はそんな間淵さんに、鳥取に移住したきっかけや現在取り組んでいること、またコロナ禍でテレワークが広がりつつある今の時代に提案する「家泊(いえはく)」について伺いました。
鳥取の海に惚れて移住
大阪出身の間淵さんが、鳥取県東部に位置する岩美町への移住に至るまでにはどういった背景があったのでしょうか。
間淵:「僕、色々な場所で様々な仕事を経験してきたんですよ。旅行の添乗員もやったし、企業で営業もしていました。
他にも、飲食店を経営したこともありますし、アパレルで勤務したこともあります。スキューバダイビングのインストラクターもしていました。
あるとき『鳥取の岩美の海がきれいだよ』ということを聞き、当時住んでいた大阪から3時間弱ぐらいだし行ってみようということで鳥取県東部の岩美にダイビングに行ったんです。
そうしたら沖縄と比べても負けないくらい綺麗な海で、魚の種類も豊富で感動しました。
もともと自然の中での暮らしに憧れていて沖縄で生活したこともありますが、『なんや、関西から3時間程度でこんな海の綺麗な場所あるんや。いつか生活したいな。』と思いました。
そこからは年に数回岩美町でダイビングをしていたので、今で言うところの岩美町の関係人口になったのかな。
岩美町と関わりを持つ中で、ちょうど地域おこし協力隊の募集を見つけて最終的に岩美町に移住してきたという感じです。」
実際に生活を始めて感じた鳥取の魅力は、海だけではないと語ります。
間淵:「海が綺麗というのはもちろんですが、鳥取の良いところは他にもあるんですよね。
特に感動したのが、食べ物が本当に美味しいということ。海が綺麗なので海産物はもちろんですが、それ以外にも米もうまいし、柿などの果物も美味しい!
あとはとにかく人が優しいです。例えば横断歩道を渡ろうとしたら、車の方が止まってくれて、渡らせてくれたりするんです。
都会でもそうしてくれる場合もありますが、鳥取の方が割合が高い気がする。優しい県民性の現れなのかなと思います。」
地域の信用・信頼を得るために積極的に行動
現在オーナーとなっている民宿・龍神荘の再生に取り組み始めたのは、地域おこし協力隊の活動がきっかけだったと話す間淵さん。はじめは苦労も多かったそうです。
間淵:「地域おこし協力隊の任務は、現在運営している龍神荘の再生でした。当時はお客様が毎年数人しかいないくらいの規模で、このままだと廃業という状況でした。
役場としては、3年間という期間でじっくりと再生させるという流れで事業計画を考えていたようですが、僕の方はすぐにでも始めて早く軌道に乗せたいと思っていました。
ただ当初はやるべきことが多くて、何から手を付けなければいけないのかわからない状態で。運営当初は、手探りだったので結構大変でした。特に地域からのサポートを得るのに最初は苦戦しましたね。」
間淵さんは地域からの信用を勝ち取るため、積極的に地域に関わっていったと言います。
間淵:「どこの地域でもそうだと思いますが、ある地域に入った瞬間は、まず馴染むことが非常に大切である一方で、非常に大変なもの。
特に当時は地域おこし協力隊の制度自体も始まったばかりだったので、溶け込むのに苦労しました。
イベントがあれば率先して作業を手伝うとか、地域への想いを何度も伝えるとか。積極的に地域と関わることで、信用と信頼を築いていきました。
今では自治会の役員をするくらい、地域に馴染んでいます(笑)」
岩美町の海の幸の魅力をもっと県外にPRしたい
民宿経営だけではなく、漁師としても活動している間淵さん。松葉ガニやサザエといった海の幸の販売も手掛けています。そんな間淵さんに、現在の活動の経緯についても伺いました。
間淵:「最初に龍神荘のお客さんに色々と話を聞いて、どのようなものを龍神荘や岩美町に求めているのかを簡単に調査したんです。
すると、ほとんどのお客様が海の幸、特に刺身を求めているということがわかりました。
なので宿のメニューを刺身を中心としたものに工夫すると、予想の数倍のお客様にお越しいただくことができました。
売上も安定してきた今では、松葉ガニのような高級食材も仕入れることができるようになり、お客様に岩美町と龍神荘をさらに楽しんでもらえるようになりました。
ただ民宿だけだと、私自身なかなかごはんを食べていけないというのが現実です。
沖縄のように通年観光客が来るような場所だと問題ないのですが、岩美町周辺の民宿のシーズンと言えば、7月~8月の夏休みと11月~12月の蟹が旬の頃。
民宿運営が比較的ゆとりのある時期に別の活動を行うことで、安定した生活を送れるようにしたいということで、5月~9月は素潜り漁師、それ以外はイベント出店や鮮魚販売を行っています。」
漁師の活動もしている間淵さんは、海の幸を通して岩美町の魅力を県外に伝えたいと言います。
間淵:「僕自身、龍神荘の運営をきっかけに岩美町に関わることになりましたが、自分が本当に美味しいと思う岩美町の海の幸を自分の力で獲って販売する活動は、地域のPRにさらに貢献できると考えています。
例えば、岩美町で獲れた海の幸を車で運んで関西で販売したり、楽天市場などのECモール上で、岩美町の美味しい味覚を紹介したりしています。
この事業をはじめて、鳥取ではまだ流通量が少ないものを県外で仕入れて、県内で販売することにも面白いと魅力を感じました。
以前、鳥取砂丘イルミネーションというイベントで”とんぺい焼き”という関西では有名なローカルフードを県内で販売してみたんですよ。すると、けっこう美味しかったみたいで良く売れました。
こういった鳥取の魅力を県外に運び県外の魅力を鳥取に持ち帰る活動を通して、鳥取の魅力と県外の魅力が交わった新しい商品が生まれれば嬉しいですね。
関西広域連合に鳥取県も所属していますが、こういったお互いの魅力を相互に伝えるような取り組みを通して近隣自治体とつながっていければ、自分の住んでいる地域も活性化していくのかなと思っています。」
古き記憶を追体験する古民家一棟貸”家泊(いえはく)”を広めたい
民宿経営や漁師の活動を通して岩美町を盛り上げている間淵さんに、今後取り組んでいきたいことについても伺いました。
間淵:「これから龍神荘で取り組んでいきたいことは、やっぱり町に来てもらうことを重視する取り組みですね。
龍神荘に宿泊される方々は、リピーターになる確率が高いんですよ。山陰ジオパーク海岸などの絶景だったり、食事だったり、ここ(岩美町)に来れば魅力に取り憑かれます。
これまでもこれからも、もっと岩美町のことを好きになる人を増やすため、来てもらうことを重視した取り組みには今後も継続的に力を入れていきたいと思っています。
なので今、”家泊”というのを新たにはじめようと思っているんです。」
間淵さんの言う”家泊”とは、どのようなものなのでしょうか。
間淵:「新型コロナウイルスの影響で、友達だったり、家族以外の人など、不特定多数のコミュニティと接することに抵抗のある人も増えていると思います。
一方で、都心から離れると地方にはたくさん空き家があり、受け入れることができる場所がある。
そこで今考えているのが、民家をまるごと一棟貸し切りで提供する”家泊”です。
さらに家をリノベーションして綺麗にするのではなく、その建物が歩んできた歴史をそのまま体感できるような空間を作りたい。
つまり、岩美町という綺麗な海、そして港町で生活してきた人たちの歴史を、来てくれた人も感じることができる場を提供したいんです。
住みやすく丸ごと変えてしまうのではなく、歴史を感じられることが古民家の魅力なんじゃないかなと。
その家で過ごしてきた家族の様子を追体験できること。古い家だと子供たちの身長を測るために使われた柱の跡があったりするじゃないですか。そういった当時の面影を感じてほしい。
そこで思いついたのが、観光色が強い民泊でもゲストハウスでもない”家泊”です。需要が高まっているテレワークに対応できるようネット環境は整備しますが、それ以外は今の古民家をそのまま利用するつもりです。
家泊という新しい概念を通して、観光を超えたつながりを作っていければ良いなと思っています。」
間淵さんが提案する”家泊”という新しい地域でのライフスタイル。観光という一過性のものではなく、より継続的に地域に関わってもらいたいという地域への想いが溢れています。
自身が惚れ込んだ鳥取の町を、ぜひ好きになってもらいたいと、終始明るいパワーに満ちた間淵さんの言葉。家泊は地域移住を考えている方にとって、一つのきっかけとなり得るライフスタイルの形なのではないでしょうか。間淵さんの提案する”家泊”で鳥取に少し長めの滞在をして、地域への居住体験もいいのではないでしょうか。
昭和民宿 龍神荘 オーナー 間淵 武志 岩美町の美しい海に一目ぼれをして鳥取県東部の岩美町に移住。地域おこし協力隊として昭和民宿龍神荘の事業再生を任される。岩美町商工会の特産品委員会、鳥取県移住アドバイザー。民宿を運営する傍ら、岩美町に中長期的に関わることができる宿泊施設”家泊”を提唱し、鳥取県東部岩美町の関係人口の創出に取り組んでいる。
龍神荘:https://ryujinsou.com/
家泊:https://www.atpress.ne.jp/news/238315
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