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就活軸という言葉の無責任さに思うこと

就活生は「就活軸」という言葉のもつイメージのせいで窮屈に活動させられている感覚が自分にはある。価値観を定めることに注力することで、その窮屈さから解放され、自信をもって就活に臨めるようになるのではないか。

この考えをもとに、さらに考えた。その結果が下記のツイートである。

軸という言葉には、ブレない唯一絶対のものというイメージがあると自分は思った。ブレない就活軸を作ろう!という宣伝文句が出るのがその証拠だ。軸という言葉は、就活軸とか自分軸とか、いろんな場所で使われている。軸というものは、意思決定や考えや行動をブレさせないために固定するものだと認識している。この認識は、高速で回転する独楽をイメージした。

しかし、人間はブレるのが当然の生き物だ。だから軸という言葉を使うと、「ブレてはいけないのに、ブレてしまう自分はなんてダメなやつなんだ」と自己嫌悪に陥る可能性がある。そんな窮屈な状態は嫌だ。人間は単一の軸をもとに行動する生き物ではない。さまざまな価値観が存在する生き物だと思う。

ターシャユーリックの価値観テストを行い、84個の価値観リストから重要度の高い10の価値観を抽出したときに思ったが、人間の価値観は一貫性がなくても良い。神経質で頑固な人が友情を大事にすることなんて珍しいことじゃない。自分の価値観リストの上位10位は以下の通りである。

1 平安:自分の内面の平和を維持する
2 真実:自分が正しいと思うとおりに行動する
3 寵愛:親しい人から愛される
4 知識:価値ある知識を学ぶ、または生み出す
5 笑い:人生や世界のユーモラスな側面を見る
6 友情:親密で助け合える友人を作る
7 変化:変化に富んだバラエティ豊かな人生を送る
8 健康:健やかで体調よく生きる
9 精神:精神的に成長し成熟する
10礼儀:他者に対して誠実で礼儀正しく接する

どうだろう。すべての価値観に共通する概念を抽出するのが難しいことが分かるのではないだろうか。たとえば平安と変化は共通しておらず、別の概念である印象をうける。人間の価値観はそういうものだ。

ツイートにある価値の立方体という言葉は、いま読んでいるラスハリスの本に書いてあった。価値の立方体とは、上位6位までの価値観をそれぞれの面に定義した立方体という考え方だ。この立方体は、一度にどれか一つの面しか見えない。見えている面に定義された価値観と繋がっているときは、他の価値観は意識されていないが他の価値観がなくなったわけではない。意識されていないだけで、価値観は確実に存在している。人間は多様な価値観と共に生きている。行動がブレるように感じるのは普通のことで、けっしてダメ人間だからなんてことはない。

複数の内定が出た場合にどのように内定先を決めるかは、価値観に優先順位を付けて決める。たとえば自分の場合、社員同士の仲が非常に良いが突発的な業務の多いA社と、雰囲気は普通だが規則正しい業務が多いB社とでは、B社をえらぶ。A社は寵愛なので、B社の平安より優先順位が低いからだ。

価値観分析は一人でも出来るが、他人のサポートがあるとよりスムーズに行える。自分は性格診断、マインドフルネス、ふりかえりの3つのスキルを使い、対話を重ねて言語化するように努めている。ここでいう言語化とは、個性や悩みを分析して価値観を明確にする行為のことを指す。分析に使う技法は、傾聴と感情の肯定だ。自分は相手を否定しない。相手のすべてに共感するわけではないが、その感情が存在することを肯定するよう意識している。共感と存在の肯定は違う。共感すると分析が出来ないのだ。

自己分析で軸という言葉を使うと、「ブレること」への自己嫌悪を助長し、窮屈な気持ちにさせてしまう。多様な価値観の存在を認める「価値の立方体」という考え方が、人の気持ちに寄り添うキャリア支援に繋がるのではないか。



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