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長野県伊那市【豊かな暮らしづくりを通して、豊かな森をつくる】- 株式会社やまとわ 川内さん
大好きな森林と山を守り生きていく
地域の魅力やそこで活動する"ヒトの想い”を追いかけて、発信し、伝えていく"想いノ停留所"。
今回は長野県の伊那市で、【豊かな暮らしづくりを通して、豊かな森をつくる】を理念にされている株式会社やまとわの川内さんを追いかけました。
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株式会社やまとわ 川内さんノ略歴
東京都練馬区出身。大学卒業後9年間林野庁に勤務。
もっと森の近くで働きたいという思いから2020年より株式会社やまとわに転職。
地域の森林の計画をたてながら木こりとしても活動中。
憧れの人物は「もののけ姫」のアシタカ。
川内さんノ森林と山への"想い"を聴く
川内さんはもともと東京生まれの東京育ちでありながら、ご両親の影響もあって幼少期より、将来は森林に携わった仕事に就きたいとの強い思いのもと、信州大学の農学部森林科学専攻に進まれ、その時の縁もあって今でも、キャンパスのあった思い入れのある伊那の地にてよりよい森林と山を守っていくための活動を続けられています。
そんな川内さんに、実際に伊那市にお邪魔させていただき、森林と山、そして職場も覗かせていただきながら、川内さんの想いを伺ってきました。
まずは折角なので、やまとわさんが実際に管理をされている山を少しご案内いただいてもよろしかったでしょうか?
ここが今私たちが山の所有者さまからご依頼を受けて、木の手入れをしている一角となります。
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ご覧いただけたらわかる通り、ちゃんと整理をされているところは太陽の光が地面まで届いていますが、整備されていないところは暗いですよね。
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太陽の光が地面まで届かないとどうしても様々な植物が育ちにくくなってしまうんですよね。そうすると、とても脆い地表になってしまい大雨などの災害に弱くなってしまいます。
また、それだけではなく、同じ植物ばかりが育っていると、何かの病気が流行った際に一気に山がダメになってしまうこともあります。そのためにも、やはり多種多様の植物が育っていることがとても重要であり、しっかりと里山を管理することが必要なのです。
しっかりと間伐をして山を整備してあげることで、木と木の間がしっかりと確保されて、枝が張り出せるようになり、結果多くの葉が光合成が出来るようになります。そうすることで、幹も太くなり、地中にもしっかりと根を張ることで、災害にも強い森になっていくのです。
里山の管理の大切さが良くわかりました。ではなぜそうしたほったらかしの山が増えてしまっているのでしょうか?
実は自然の森では、様々な種類の植物が、共生し合っているんですよね。しかし日本では、戦後の国内木材需要の急増もあり、自然の森を伐採して一斉に植林をした時期がありました。そうした背景から、全国の森林のなんと4割もが人工林になっています。そしてその人工林も、海外木材輸入の自由化による国産木材価格の下落もあって、林業の衰退につながってしまい、放置された里山が増えるきっかけとなってしまいました。
また、山の持ち主さんの高齢化も影響していると考えます。
なるほど、里山の管理が今後の社会課題にもなるのだとよく理解できました。ところで、この一角ではどのような木が育っているのでしょうか?
こちらに見えるのが檜ですね。檜は住宅木材などでよく使われます。
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実は檜が植えられた当時は、今の5倍ほどの価値があり、将来の財産になると思って植えられていたことが多いようです。しかし、先にもお伝えした通り、外国の木がたくさん入ってきたことで価値が下がってしまいました。また、檜は建築の規格によって、4mの長さが必要であり、さらには“まっすぐ”でないと価値が出ないため、きちんと管理された土地で、太陽の光もしっかりと浴びせながら、育てる必要があるのです。
そして、こちらが先日伐ったアカマツになります。
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このアカマツについては、元々まっすぐに育ちにくい性質もあって、最近のツーバイフォー工法の住宅と相性が悪く、建築用木材としてはあまり価値がなかったのです。用途としては、薪やペレット等の燃料材として使われることが多いです。
ただし、少し切り口を香ってみてください。ほのかに良い香りがしますよね?
節と節(枝と枝)の間が50センチでもまっすぐに取れれば、実は経木として付加価値を生むこともできることに私たちは着目しました。現在“信州経木Shiki”とブランドをつけて、マーケティング活動にも力を入れています。また、アカマツはとても軽い性質もあって、室内でも屋外でも使える持ち運びしやすいポータブルファーニチャーをpioneer plantsとしてブランド化もし、間伐材の価値創造に取り組んでいます。
山のご案内ありがとうございました。やはり現地に来てみないと、実際の里山の課題や、そもそも森について考えるきっかけもなかなか作れないので、本当にいい体験となりました。ところで、川内さんが山に携わりたい、森を守りたい、と思うようになったきっかけを教えてください。
はい、幼少期のころから、両親が登山好きということもあり、山登りによく連れて行ってもらっていました。また、もののけ姫や、平成狸合戦ぽんぽこ、トトロなど、自然の大切さを啓蒙するジブリ作品にも多く触れてきて、そこで語られるテーマにも感銘を受けてきました。そうした経験から、大学では信州大学の農学部へ進学し、森林について学んできました。なぜ信州大学を選んだかといいますと、実際に山に触れながら学ぶ機会がとても多いと感じたからです。
卒業後は、林野庁で国家公務員として10年ほど仕事をしてきたのですが、やはりもっと直接的に山や森林に関わっていきたいという思いが日に日に強くなっていき、学生時代に縁のあった伊那に戻ってきて、いまは、やまとわに入社し3年目になります。
もともと木こりとしては素人でしたが、好きなことをやっているので、苦労を苦労とも感じずに、今日まで楽しく山と森林に向き合う仕事を続けてこられていて、とても幸せに感じています。
とても熱い山と森林への想いをありがとうございます。今、川内さんが里山や森林に関して感じている課題と、それに対する今後の取り組みを教えていただけますでしょうか。
東京などの都市部に住まわれている方にはあまり馴染みのない話かもしれませんが、実は里山って、とっても広大な土地にも関わらず、住宅のように区画分けされているんですよね。規模を大きくお持ちの方も中にはいらっしゃいますが、多くの方は、とても小さい区画を所有されているんです。そうした中で、所有者の方の高齢化も進んできていて、山の整備をしてほしいとのご依頼もいただくことは多々ありまして、手入れをしてあげたいとの思いはあるものの、残念ながら、中々わたしたちの力だけでは手が回っていないのが現状です。
また、木は植えてから35年から50年ほど育つのにかかる、足の長い取り組みになります。将来その木に価値が付くかどうかもわからないです。でも、将来何が売れるのかではなく、長野の土地、山、そして森林全体の生態系が良くなり、持続可能な暮らしを作っていくこと、それが僕の想いです。
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こうしていま歩いている道も、山を整備しているから、安心して歩ける道になっていますよね。全く整備されていないと、この道も作られることなく、森に興味を持ってくれた人も、入っていくことが難しくなってしまいます。そうすると人と森の間に大きな壁ができてしまいます。ヨーロッパのように、ハードル低く、山に関心を持ってもらえる、そんな環境づくりが大切なのかなと思っています。
そうした課題に対して、川内さんが今考える解決策はありますか?
そのためにも、山を所有されている皆様が、山を守っていくことへの意識をより強く持っていただくことが大切だと思っています。
例えば、都市部の方向けに伐採体験ツアーを組むことによって、多くの人に伊那の森林にふれてもらう。当然、都市部の方に森の話を伝えていくことも一つの目的ではありますが、そうした都市部の人たちに里山について関心を持ってもらえているという事実が、山主さん達の意識の変化にもつながっていくんじゃないかなとも考えています。なので、今後は是非、伊那と都心部を結び、人と森の距離をぐっと縮める、そんな活動をしていきたいと考えています。
また今後は森の豊かさを測れる仕組みづくりにも挑戦していきたいと考えています。森の豊かさにも様々な観点があると思っています。例えば、水の綺麗さであったり、防災に強い森なのかであったり、また生物の多様性などなど様々ですね。
直近では猛禽類の調査による森の豊かさの可視化を具体的に進めていきたいと考えています。
いずれにせよ、より多くの人に山、そして森林に関心を持ってもらえる、そんな取り組みを今後も進めていきたいと思っています。
都市部にお住いの皆様、是非一度伊那に遊びにいらしてくださいね!お待ちしています。
インタビュー後記
インタビューを通じて山と森林、そして自然への熱い想いがどんどん溢れてくるようにお話される川内さんの、伊那の美しい自然を後世に紡ぎ続ける、良い循環を生む、森と暮らしをつなぐ活動を、"想いノ停留所"は今後とも応援し続けていきたい思っています。
株式会社やまとわさんでは、本文中でもご紹介させていただきました、経木やオーダーメイド家具、そしてポータブルファーニチャーなどなど、様々な森と暮らしをつなぐアイテムを展開されています。
是非ご興味ある方は、以下よりホームページとSNSをぜひチェックしてみてくださいね。
株式会社やまとわ
https://yamatowa.co.jp/
Instagram @yamatowa_ina
Shiki (経木)
https://shinshukyougi.jp/
Instagram @kyougi.shiki
pioneer plants
https://pioneerplants.jp
Instagram @pioneerplants.jp
"想いノ停留所"
ライター
蕎麦屋de上機嫌
Instagram @sobaya.de.jyokigen
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