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僕とカードゲーム(遊戯王カード)

僕はカードゲームが好きだ。

それぞれのカードが効果を持ち、他との組み合わせ方次第でその内容がメリットにもデメリットにもなる。
一枚一枚を読み込んで、ポテンシャルを最大限に引き出すパートナーたちを見つけ、最大限に実力を発揮できる環境を構築する。
こうして出来上がった40枚のデッキの中で、今まで誰からも見向きもされなかった一枚が主役になり、相手の強大な攻撃力を持ったモンスターを打ち負かす。それが何よりも快感だった。

3年前、大学4年生だった僕は就活をしていた。僕たちは「会社」というデッキに組み込まれるカードだ。
お世辞にも、僕はレアカードではなかった。顔は並、留学経験はないし、学歴も誇れる程ではない。
人事だってリスクは負いたくない。無難なものを選ばなければ、捨て札になるのは自分自身だ。

2つの選択肢がある。
自分をレアカードとして売り込むか、カードとしての生き方を諦め、企業に属せずプレーヤーとして生きるか。
前者の方が簡単だ。多くの人がそうしている。ただ、効果が噛み合わなかったカードがデッキの中でどんな扱いを受けるのか、僕は痛い程知っている。

企業の説明会の帰り道、コンビニでパックを一つ買った。
そこで、もしこの中にレアカードが入っていれば、そのカードを転売してプレーヤーとして生きる資金の元手にし、入っていなければ自分をカードとして生きると決めた。
手に汗が滲んでいく感覚を今でも覚えている。
ビリリと小気味いい音を立てる銀色のビニールから、僕はカードを取り出した。

今僕は、プレーヤーとして生活をしている。
恥ずかしながら、順調と言うには程遠いし、あの日タダ同然で売ったカードは、まだレアカードにはなっていない。
けれど僕は知っている。
パートナーが見つかれば、カードは輝く。だからきっと、あのカードもレアカードになる時が来る。

カードゲームは僕の期待に何度も応えてくれた。
だから今度は、僕がカードを信じる番だ。

僕はカードゲームが好きだ。

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