見出し画像

理想のリーダー像についての持論:あるいはなぜ「有能な働き者」は指揮官に向かないのか

有能な怠け者は指揮官に
有能な働き者は参謀に
無能な怠け者は兵士に
無能な働き者は銃殺せよ

…いわゆるフォン・ゼークトの組織論として知られる格言ですね。
色々示唆的な話ではありますが、先日この話題をタイムラインで見かけて思ったのが、「有能な怠け者」とはどういう人であるのか、理解している人は意外と少ないのでは?ということでした。

というわけで今日はまるでビジネス系新書のようなタイトルで、この「有能な怠け者」とはどんな人か、なぜ指揮官に向くのか。そしてそれと対比される「有能な働き者」についても掘り下げてみたいと思います。


◆「有能な怠け者」はなぜ”有能”なのか

さて、まずは「有能な怠け者」と「ただの怠け者」は何が違うのかを考えてみましょう。

例えば、典型的な「有能な怠け者」と「ただの怠け者」の二人の前に、片付けないといけない仕事があったとします。
ただの怠け者は、単純にそれを後回しにしてサボるでしょう。それが怠け者たるゆえんです。
しかし言うまでもなく、これはあとでツケが来ます。夏休み最終日の宿題のように、あとでどっと仕事が押し寄せて結局痛い目を見ます

有能な怠け者はそういうことはしません。ただサボるだけでは、長い目で見ると楽ができないからです。
ではどうするかというと、例えば手を抜けるところを探します。もし多少時間がかかっても、実はやらなくていい仕事や、後回しにしても困らない仕事が見つかれば、その分怠けることができるからです。
怠けるためには努力を惜しまない、だからこそ「有能な」怠け者というわけです。

ちなみに、もし「有能な働き者」であれば、そもそもすべての仕事を真面目にきちんと片づけます
テスト勉強に例えるなら、

ただの怠け者:勉強しないで結局落第する人
有能な怠け者:上手くヤマを張ったりポイントを押さえて勉強することで合格点を取る人
有能な働き者:ちゃんと全範囲を勉強して満点を狙ってくる人

となるでしょう。
なお同じ例えでいうと、無能な働き者は、頑張って勉強するものの、努力の方向性が的外れで全然点数が取れないような人といえるでしょう。

こうして比べると、有能な怠け者とはいわゆる「要領のいい人」であることが分かると思います。
対して有能な働き者は「秀才」、努力を惜しまない優秀な人であるといえます。

一見すると「有能な働き者」の方が上に立つには望ましい人間のようにも見えます。
しかし、指揮官には「有能な怠け者」の方が向いているとフォン・ゼークトの組織論は言っています。

これはなぜでしょうか?


◆リーダーの仕事とは

さて、ここで指揮官、つまりリーダーの役目とは何かを考えてみましょう。

人の上に立つこと?人に指示をすること?
私は、リーダーの役目とは究極的には「決めること」に尽きると思います。

例えばチームで仕事をしている時に、プランAプランBの2つからどちらかを選ばなければならないシーンを考えましょう。いずれも一長一短あり、どちらを選べばよいかは分かりません。
チーム内でも意見が割れ、それぞれを支持する人が「Aの方がいい理由」「Bにすべき理由」を持ち寄ります。

ではどちらにも一理あるとして、最終的にAかBかを決める人は誰か?
それこそはリーダーに他ならないでしょう。チームが統一した行動をとるために、チームとしての意思決定を下すことがリーダーの役割です。

Aがいい理由、Bにすべき理由といった情報を集めて整理するのは誰でもできます。それを元に議論を深めることもできます。それ以外の「リーダーの仕事」とされる仕事だって、他の人でも肩代わりできることです。

けれど、最終的に決定を下すこと。これだけはリーダーにしかできない仕事ではないでしょうか。


◆リーダーに向いている人とは?

ところで、プランAプランBを天秤にかけた上で、プランAを選ぶということは、それはプランBのメリットを切り捨てることでもあります。逆もまたしかりです。

例えば旅先で宿を選ぶ時に「狭くて食事もイマイチだがすごく安い宿」と「高いけど広々として食事も美味しい宿」があるとします。
安くて部屋も食事もいい宿があればベストですが、普通はそれは両立しません安さか、快適さか。何が自分にとって大事なのかを考えて、どちらかを諦める必要があるのですね。
このように決めるとは、別の選択肢をあきらめることに他ならず、そのためにいわゆる「見切りの良さ」が大事になります。

だからこそ、重要なこととそうでないことを、要点を押さえてスパッと判断していける。そんな人の方が、決断こそが本分であるリーダーには向いているといえます。

さて、かたや上手い手の抜き方を心得ている、つまり要点を見抜く力に優れる有能な怠け者」。
他方、手抜きなど考えもしない、真面目な努力家である「有能な働き者」。
「決断」が求められるリーダーへの向き不向きという点で、どちらに軍配が上がるかはいうまでもないでしょう

要領がよく見切りが良い「有能な怠け者」は、決断が必要なシーンにこそ向いているのです。


◆「有能な働き者」が輝くポジション

ただ注意しないといけないのは、だからといって「有能な怠け者の方が偉い」という訳では決してないということです。

ともすると、私たちはリーダー=偉いというイメージを持ちがちですが、それは間違いです。
リーダーが偉いのではなく、リーダーに与えられている「決断」という役目がチームにとって重要であるからこそ、リーダーは一段上の立場にいます。偉いから決めるのではなく、決めるために偉いのです。

では「有能な働き者」がどういうことに向くかというと、リーダーが決断を下すのに必要な「材料」を用意する立場、つまり参謀です。
具体的には、メリット・デメリットの分析や、そのエビデンスとなる資料の作成。あるいはそもそものプランA・プランBという選択肢を提示するのも参謀の仕事です。優秀な実務者ポジションですね。

根っこが怠け者である有能な怠け者は、こういう地道な仕事は手を抜きがちで、あまり向いていません。
しかし手を抜かない有能な働き者は、こういう仕事に関しては大の得意です。そしてどれだけ有能なリーダーでも、こうしたサポートなくしては最適な判断を下すことはできないのです。

ともすると花形として大きく見えがちなリーダーですが、その影には必ず「有能な働き者」の優れたアシストがあります。
こうした縁の下の力持ちの支えがあってこそ、チームや組織が輝くということを私たちは忘れてはいけませんね。


◆まとめ

というわけで、一周回って冒頭の格言に帰ってきました。

有能な怠け者は指揮官に
有能な働き者は参謀に
無能な怠け者は兵士に
無能な働き者は銃殺せよ

見切りが良くて決断に向くが、手抜かりも多い「有能な怠け者」は指揮官、リーダーに。
要領がよいとは言えないものの、丁寧で漏れのない仕事と実務能力に優れる「有能な働き者」は参謀、リーダーのサポートに。

両者は優劣で語るものではなく、性格による向き不向きなのだと思います。
あなたもチームの中では自分が、そして周りの人が4つのどれに当たるのか?そんなことを考えてみると、今まで見えなかったものが浮かび上がってくるかもしれません。

---------------------------------------------------------
この他にもちょっとしたエッセイや、VRやVTuberに関する考察記事を日々投稿しています。
もしよければぜひnote、Twitterをフォローいただければ嬉しいです。

また次の記事でお会いしましょう。

---------------------------------------------------------
【Twitterでのシェアはこちら】

---------------------------------------------------------
今回も長文にお付き合いいただきありがとうございました。
引用RT、リプライ等でのコメントも喜んでお待ちしています。

https://twitter.com/omoi0kane
https://www.youtube.com/channel/UCpPeO0NenRLndISjkRgRXvA
https://omoi0kane.medium.com/
https://www.instagram.com/omoi0kane/
https://www.facebook.com/profile.php?id=100058134300434
マシュマロ(お便り)https://marshmallow-qa.com/omoi0kane

○引用RTでのコメント:コメント付のRTとしてご自由にどうぞ(基本的にはお返事しません)
○リプライでのコメント:遅くなるかもしれませんがなるべくお返事します

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?