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何もない街角で。蒲郡駅前に住んでわかったこと~地域から出にくい状況でも楽しく過ごせるの巻~

写真:荒牧耕司

仕事は急激にオンライン化。「すぐに集まれる場所に住んでいる」ことの意義は減っている

 東京どころか名古屋にすら足を踏み入れにくい状況が続いている。8年前、愛知県蒲郡市という地方都市に住み始めた頃だったら焦燥感と寂寥感でイライラしていたかもしれない。今は違う。自分でも意外なほど気分良く過ごせている。コロナウイルスの有効な治療薬ができたら、都会で旧友と会いたいし仕事仲間とも膝を詰めて打ち合わせたい。好きな飲食店や映画館にも行きたい。でも、普段の仕事と生活は自宅周辺で問題なく完結できる。
 仕事に関してはITの発達が大きいと思う。今でもガラケーを使っている僕が思い切ってパソコンとルーターを買い替えたことは前に書いた(こちらこちら)。
 新しい機械やシステムはとにかくすごい。何事も速くて安定している。インタビュー取材が仕事の基本である僕はZoomの有料会員となり、多いときは1日のうちに6人にZoom取材。日時の調整は格段に楽になり、移動や場所確保のコストはかからない。海外など遠方への取材もできたことを考えると、2万円の年会費の元はすでに取った。
 何より新鮮なのは、僕と同じぐらいIT音痴らしい人でもスマートフォンを使ったオンライン取材に気軽に応じてくれること。この半年間で多くの人がテレワークやオンライン帰省を強いられた結果だろう。仕事上では「すぐに集まれる場所に住んでいる」ことの意義は減りつつあると感じる。今後、その傾向は強まっていく気がする。僕のような地方在住者にとっては不幸中の福音だ。

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仕事と家族だけじゃ満たされない。近所で友だちが10人は欲しい

 しかし、人は仕事のみで生きているのではない。趣味は会食だと自覚している僕にとっては、気軽に誘い合って食事ができる友だちが10人ぐらいは欲しい。妻との晩酌も楽しいけれど、週に1回ぐらいは素敵な他人とおしゃべりしながら食事をしたいのだ。もちろん、夫婦単位で遊んでも構わない。
 僕と同じように見ず知らずの土地に引っ越して来た人がよく使うのは保護者仲間ルートだ。保育園や学校でママ友やパパ友を作る。はっきり言ってうらやましいが、子どもがいない僕にはその手は使えない。8年前、寂しさに駆られた僕を迎え入れてくれたのが蒲郡駅前にあるコーヒーショップ「喫茶スロース」(写真)だった。
 蒲郡駅前と喫茶店という2つの検索ワードでスロースのブログを見つけた僕。古いビルを手作りで直して開店にこぎつけたこと、店主の清水くんはギター教室の先生でもあること、店長の奥さんはイラストを描くのが好きな文化系女子であること、などがわかって親しみがわいた。夫妻は僕と同年代。開店は2010年なので、今から「常連」になる余地もあるだろう。
 僕は毎日のようにスロースに通うようになり、読書会やバーベキューなどのお店主催企画にも参加した。その中で気の合う友だちができ、今でも仲良くできている人もいる。この「大宮ノートwithこば」を一緒にやっている小林さんもその一人だ。

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週1回でもお楽しみな気晴らしがあれば、自宅でパソコン漬けでも気が滅入らない

 スロースでの友だち作りで自信を深めた僕は、近所の和食店や鮨店、さらには同じマンション住民にも少しずつ「攻撃」を開始。妻の存在もフル活用して、子どもがいないのにママ友(近所の既婚女性)を作り、勢いに乗って彼女の夫とも親しくなった。ちなみに、僕が住んでいる賃貸マンションには現在12世帯が入居しているが、そのうち6世帯とは交流があり、おかずや食材を交換したりしている。
 ちなみに今月の予定は、明日は元マンション仲間のKくんと浜名湖で釣り、来週は我が家でご近所さんと家飲み(換気には気を付けます)、再来週は和食店の夫妻と三河湾の無人島でバーベキュー、月末は近所の歯医者さんと底引き網体験と昼飲み。これだけ気晴らしがあれば、他の日は自宅でひたすらパソコンに向かっていても気が滅入らない。僕と同業ではないけれど仕事を頑張っている人たちばかりなので一緒にいるだけで刺激を受けられる
 遠い親戚より近くの他人という諺がある。コロナによって東京も名古屋も遠くなった今、地域に留まっても精一杯働いて遊べる幸せを再認識したい。(おわり)

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