シェーンブルン宮殿の小さな思い出
オーストリアのウィーンにある世界遺産、シェーンブルン宮殿。
3年半ほど前にツアーで訪れたのだが、素晴らしいところであった。
現地のシェーンブルン宮殿担当の日本人ガイドさんが、とても面白い話し方をされる方だった。たびたび日本と絡めて解説してくれたり、独特の言い回しにくすりと笑ってしまったり、お話を聞いているだけで楽しかった。
広い宮殿を見終えて、さあ庭を見学しようということになり、外に出る。
宮殿の前での記念撮影を友達にお願いする。
事件は起きた。
海外感を出すため、足をクロスさせていい感じに撮ってもらおうと思っていたら、片足の足先が前にツトトトト。
足先がツトトトト。
メリッ。
その瞬間、靴底が完全に取れてしまった。
一瞬の出来事であった。
少しペロンとなっているのには気がついていたが、まさか取れるとは思わず、調子に乗ってペロンの部分に力を一極集中させてしまったものだから、見事に美しく剥がれたのである。
幸い靴底をなくしてもまだ底に布は付いていたが、靴底がなければ感触はほぼ地面である。
左右で高さの異なる靴で歩きながら、まあ靴さえあれば大丈夫だなと、海外旅行中の諦めと余裕を心に意識。笑顔で観光。
お気に入りの靴だったのもあり、靴底は持ち帰ろうということになり、かといって数々の道を踏み歩いてきた年季の入った靴底を直接かばんにしまうわけにもいかず、しばらく持ち歩くことに。
今思えば、バスのなかに入れておけばよかったのだけれど、何者かに盗まれては行けないとの思いが芽生え、靴底持ち歩きは続いた。
翌日、ツアーの行程の中で日本人向けのお土産屋さんへ。
相変わらず靴底持ち歩き女として観光していた私に、スタッフの方が声をかけてきた。
「瞬間接着剤、お貸ししましょうか。」
靴底を持ち歩いているので、明らかにおかしな女ではあるが、気づいてくださるなんて、、、
喜びと恥ずかしさで心がほんのり赤くなる。
無事に瞬間接着剤でつけてもらい、あまりの快適さに心が躍る。
足取りも軽くなり、お財布の紐も緩み、豪遊してしまった。
人生において、なくても少しの間はどうにかなるが絶対に必要なもの、それが靴底であると学んだ、オーストリアとシェーンブルン宮殿。
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