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"会員制クラブTOKYO"を抜けて地方移住した私が読んできた本の話。 #1冊目『女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住』
ことし、20年以上勤めたマスメディア企業をやめて、かつて勤務していたとある地方に移住することにした。
退職って会社員にとっては大きな決断。いきなり「そうだ!やめよう」と思ったわけではなく。徐々に徐々に「そんな選択肢もありかな?」「いやいや、でも・・・」という気持ちの揺らぎを数年かけて繰り返し、あるとき霧が晴れて目の前に一本の道がひらけたような感じ。
その道中、さまざまな「本」との出会いがあった。それらを軸に、ライフシフトの過程を振り返ってみようと思う。誰かの旅のお供になれば、幸いです。
『女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住』(藤原綾・著/集英社)
1冊目は、本格的に退職を考え始めたことし(2023年)の春に読んだ、移住ルポ。東京在住のフリーライターの女性が単身、鹿児島県霧島市に移住を果たすという内容だ。
「ひとりで生きていく私には、もしかしたら地域社会が必要なのではないか」
セーフティネットとしての地域社会。令和の時代ならではの移住ルポだと感じた。
私には夫がいるのだがともに地方出身で、東京は仕事のために住んでいる”仮住まい”の街。私たちは「会員制クラブTOKYO」と呼んでいた。”会費”さえ払えば快適に暮らせるけれど、その額がやたらと高い。歳をとるにつれ、激務に身をやつしながら”会費”を払い続けるのがなんだかしんどくなってきていた。特にこの春はストレスのせいか眩暈が止まらず、点滴を受けながら仕事をする日々だった。何してるんだろう。病院のベッドで点滴の管から滴り落ちる液体をぼんやり眺める。これもクラブの”会費”か…。
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そんなときに手にしたこのルポ。温泉好きが高じて、霧島に単身移住とは!(もちろん理由はそれだけではないが)。著者の行動力には驚いたが、大胆なようでいて、至極真っ当な選択なように私には感じられた。そこには「地域社会」という、”会費”では買えない価値があった。あるのは、濃密な人間模様。めんどくさい側面もあるだろうが、”会費”を払うよりもずっと、人として豊かな営みではないか。昔仕事でお世話になった地域の人たちの顔が思い浮かび始めた。
どこか遠い世界のことだと思っていた「地方移住」が、人生後半戦に進むための現実的な選択肢として立ち現れた瞬間だった。
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今回はこのあたりで。ライフシフトの旅は続く。
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