母の精神が崩壊① 幻聴と幻覚が姿を表した
季節は夏へと変わり、蝉の声が頭に響き、今にも倒れ込みそうな暑さのなか、母は幻聴と幻覚の世界に怯えるようになっていた。
『クーラーの室外機に誰かいる』
『私をずっと監視している男と女がいる』
『この電話は、ずっと盗聴されている』
『近所の人が、うちの家のゴミをあさって、5人ぐらいの人がヒソヒソと文句をいっているのが聞こえている』
そして、見えない誰かから隠れるように、『この男に狙われてる…』と消えそうな声で囁き、男の名前、車のナンバー、銀行口座番号を書いた小さく切ったチラシを私の手にネジ入れてきた。
この男に、母は狙われているという。
この世に存在しない男に…
日に日に幻聴と幻覚の世界が濃くなっていく母。
どうにかしなければ…
藁をもすがる思いで、
市が設置している、こころの不調を相談できることができる、相談室に相談してみることにした。
第三者に、話ししたことによって、少し前を向けた気がしたが、この後、緊迫した状態で2回目の電話をすることになるとは、思ってもいなかった。
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