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母の精神が崩壊⑪ 亡くなった祖母からのメッセージ

母の精神が不安定になっていくなか、私の心も同様に、不安定になっていった。

仕事はなんとか行っていたが、常に何もする気が起きず、頭の中は母の暗い未来ばかりを想像し、不安に占領された心と体は重苦しく、勝手に涙が溢れ出ていた。そんな精神状態で、夫婦関係もうまくいくはずもなく、主人と喧嘩する回数が、明らかに増えていった。

加えて、父や姉の何気ない言動も、目につくようになり、自分の中で、距離を置くようになっていた。

周りの声が、なにもかも無神経な発言のように思え、心には常に黒い靄がかかり、出口のない暗いトンネルで、孤独を感じていた。

ある朝、歯磨きをしていると、脳内に『ありがとうなぁ』と、懐かしい声がしたように思えた。気のせいかと思ったが、何回も、何回も脳内を駆け巡る感謝の言葉。聞き覚えのある柔らかな雰囲気。

『あっ、ばあちゃん…や』

母の母。私の祖母だと、直感でわかった。

『○○ちゃん、ありがと』
『○○さん、ありがとな』

私と父の名前を呼び、お礼の言葉を伝える祖母の声が、優しく、身体中が今まで体験したことのない、柔らかな温もりに包まれ、あまりの心地よさに、我を忘れた。

祖母の思いを、父へも伝えなくてはと思い、信じてもらえるか、不安だったが、父へ伝えることにした。

『お父さん、話があるんやけど…』

父に祖母の思いを伝えると、
『そのお礼の言い方、ばあちゃんや』
『いつもお礼言うてくれてたわ』

父は懐かしそうに目を細めていた。

母は、父に憎悪を抱いていたが、
祖母が伝えてきたメッセージは、

生きている私たちへ感謝の思い。

私は孤独ではなかった。
祖母がいつも側で見守ってくれていた。

そう思うと、安心感が広がり、
心の黒い靄の隙間から、
ぼんやりと温かな光が射しはじめたように思えた。



















































































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