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散髪SOS

髪を切りたいと思っても、髪を切ってもらう場所がない。正しくは、お店なんてのはいくらでもあるけど、この店、もっといえば、この人ならおれの髪を預けても安心だ、と思えるところがない。

その美容師が切るのがうまい?イエスorノー?という話ももちろんあるけど、それ以上に会話の心地よさが自分にとっては重要だったりする。間の取り方、そして、話しかけすぎず放っておいてくれる配慮、こちらの言葉に対するリアクション、その小さな蓄積が心地よさをつくる。

相性でしかない、といってしまえば、そうなのだろうけど、相性がよさそうな店が見つかるまでが本当に時間がかかる。初めての店に行っては、いや違うんだよな、と次はまた違う店を予約し……を繰り返し、一つのお店に落ち着くまでにエネルギーを使いまくる。だから、定着するまでは基本(仮)でサロンホッピングをしながら彷徨っては、散髪に対する不安を抱えながら過ごすのだ。冗談ぽい書き方になっちゃってる気がするけど、まあまあその困り具合はマジである。

ぼくにとって、バーと美容師は似ていて、ゆっくり一人になって、ちょっと休憩したり、ぼーっと(だけど深く)考えごとができる場所であってほしい。もちろん、目的は「散髪」なので自分が気に入る髪型になれば最高だけど、バチッとくるものなんてほとんどなく期待もしておらず、髪がどうなるかは最低限でいい(へんにならなければいい)。くつろげる空間であっておくれ。それを支える会話であってくれ。いい時間を過ごせたら、総合的にいい接客だったといえるんじゃないだろうか。だから、

目を瞑ってるんだから話しかけてこないでくれ。興味ない話なら無理に広げようとしないでくれ。かゆいところも湯が熱いなんてことも滅多にないんだから髪を洗うときに毎度毎度聞かないでくれ。

髪を切りに行くたび、そんなことを考えさせられる。とりあえず、最低限の「嫌じゃない」のギリギリを保って(他の店をまた新たに探しはじめる労力との天秤にかけつつ)、2年半ほど通っているお店がある。ここも、先日もらった会話の中での何気ない一言が決定打になり、最低限を下回ってしまった。ああ、また探さなきゃだな。このエリアではもう無理なのかもな。

些細なことで、お客さんって来なくなる。実際の体験からそう感じざるをえない。逆の立場でサービスを提供する側であれば(つまり自分の仕事で考えると)、どんなことも基本は「対人」なわけで、同じお客さんであっても毎回のコミュニケーションを「一期一会」と思って、あぐらを掻いちゃいけないってことだよな。くわばらくわばら、と唱えたいところだけど、すでに思い当たる節があって、背筋が凍る。精進します。

とりあえず、また美容室難民になります。なるのかぁぁ。しばらく浮遊が続きそうだ。

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