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4月28日 ぽってりと、モダン。

根津美術館で、尾形光琳の燕子花図を初めて観た。

国宝というからには、硬い、凛々しい燕子花なんだろうと想像していた。
事前にネットで見た画像からもそんな印象を受けていたし、なんとなく『金閣寺!』だとか『平等院鳳凰堂!』だとか、そういうご立派!な建造物に元々飾られていたような屏風なんだろうな〜と思っていた。

だから驚いた。
実際に描かれていた燕子花のドリーミーさに。
ぽってりとした、可愛らしさに。
「え?なんかモダン・・。」
良い意味で裏切られた。

屏風の高さは約1.5メートル。
実際よりも大きく見えるのはなぜだろう。
目の前に立つと、自分がありんこにでもなったような気分になる。
目を凝らせば視界いっぱいの燕子花の群生。その奥の奥までかきわけて入っていけるかのように錯覚してしまう。

屏風は一隻だけかと思いきや二隻並べてあった。

左隻
(根津美術館HP https://www.nezu-muse.or.jp/jp/collection/detail.php?id=10301)
右隻
(根津美術館HP https://www.nezu-muse.or.jp/jp/collection/detail.php?id=10301)

左隻の燕子花には濃い群青が使われているが、右隻の青はもう少しマイルドな感じがした。その群青色と、葉に使われている淡いターコイズグリーンの色合いが、画像で見るよりずっとずっとドリーミーなのだ。
本当に色が違うのか、はたまた目の錯覚だったのか。

燕子花に輪郭線が描かれていないのも良かった。花が押さえつけられておらず、品行方正ながらものびのび咲いている印象を受ける。

それにしてもあまりに燕子花の画風がモダンで、もはや背景の金箔に違和感を感じ始める。金箔がなければ(そして屏風に描かれていなければ)、これが江戸時代に描かれたと思われないのでは?
専門的なことは分からないけれど、当時としては相当に革新的な絵画だったのではないだろうか。

今では根津美術館が所有しているこの国宝は、大正時代初頭まで京都の西本願寺に所蔵されていたそうだ。
寺かぁ・・・。このモダンな画風を見た後では、寺に置いてあったというのがちょっぴりミスマッチにも感じてしまう。

燕子花図が描かれた時代、屏風はアートというよりも生活調度品であった。要はインテリアなので、寺よりも大名屋敷のような個人の邸宅に飾られている方が似合うような気もする。
でもまぁ、これだけの量の金箔ですからね。(なんと1000枚以上使われているのだとか。) 仮に飾れたとして、個人宅なんぞ屏風に食われてしまうのが関の山だったのかもしれない。

根津美術館には立派な庭園がある。
4月中旬から5月中旬の約1ヶ月だけ燕子花が咲くのだが、それと時を同じくして、毎年この屏風も公開されている。

生で見る国宝が本当にモダンでドリーミーなのか気になる方は、ぜひ次回に行ってみてくださいね。
庭園の燕子花も、それはそれは見事でした。




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