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-勝手にサラメシ#5(後編)- ”人生最期の一曲”を奏でる仕事

今回は前後編でお届けしている『勝手にサラメシ第五弾』の後編です。
前編では「”人生最期の一食”をつくる仕事」の話を料理長に聞きました。

前編でお伝えしたとおり、本日の職員食堂のメニューはこちら

『牛バラ肉の赤ワイン煮込み』です。
前菜・スープ・メイン・パン・ドリンクがついて350円!

病院の中の珍しい仕事


さて、まずはいつものスタイルで、食堂に来ていた職員に話を聞いてみましょう。
今回はすこし変わったお仕事をしている、こちらの方。

院内でピアノの演奏を担当しているレクリエーションワーカーのIさんです

病院では珍しい仕事だなと興味を惹かれ声をかけてみました。

松野:病院職員でピアノ演奏が仕事というのは珍しいですね。

Iさん:そうかもしれませんね。
でも10数年前、この病院で働き始めた時の仕事内容は今ほどピアノ中心ではなかったんですよ。
元々は患者様の趣味活動全般をお手伝いする職種として採用されて、そのうちの一つとしてピアノを弾くという感じでした。

 
松野:そうなんですか。
てっきりピアノ演奏の専門職として採用されたのかと思っていました。
病院で働く前はやはりピアノに関わる仕事を?

Iさん:そうですね。音大を卒業した後、ピアノ講師をしたりウェディング奏者の勉強もしていました。


松野:そこから病院職員へ、というのは思い切った進路変更でしたね。

Iさん:ある日テレビを見ていたら、アメリカの病院で患者さんのために音楽を演奏をする職業が紹介されていました。
例えば手術前でナーバスになっている患者さんのために生で演奏をしてポジティブな気持ちになってもらう、というような活動をされている方でした。

その番組を見て以来、医療現場に興味を持つようになって。
ちょうどレクリエーションワーカーの募集をしていた青梅慶友病院に申込みをしたんです。たまたま応募条件に「ピアノを弾けること」とあったので。

病棟で出張演奏をするための“移動式”電子ピアノ

松野:なるほど。元々は「ピアノ“も”弾ける」スタッフとして入職されていたんですね。
現在のように、ピアノ演奏がメインの役割となったのはどんな経緯だったのでしょう。

Iさん:入職して間もない頃は、小さなピアノで弾いていました。それでも歌の会で伴奏したり、病棟で演奏をしているうちに「生の演奏っていいね」と、徐々に院内で認知してもらえるようになりました。
しばらくすると本格的な移動式の電子ピアノを用意してもらえて、演奏できる場面も少しずつ増やしていただきました。
ただ、レクリエーションワーカーという職種名にもあるとおり、現在もピアノ演奏だけが仕事ではなくて、イベントの企画やレクリエーションの運営にも関わっているんですよ。

院内のコンサートホールにて

楽しみは一瞬だとしても


松野:なるほど、ひとつひとつの積み重ねがあって今のような活躍につながっているのですね。
ところで、本題です。このシリーズは職員食堂をテーマにした記事です。本日の「牛バラ肉の赤ワイン煮込み」はいかがでしたか?

Iさん:感動です!だって家では作らないですから、こんなに手間のかかる料理。
メインの赤ワイン煮込みも当然おいしかったですけど、「にんじんのスープ」がこれまで食べたことのない味で、どうやって作ったんだろうって驚きました。
ちなみに、娘にしょっちゅう自慢しています。「うちの職場のお昼ご飯ってすごいんだよって」

 
松野:たしかに言われて気がつきましたけど「にんじんのスープ」おいしかったです。赤ワイン煮込みに注目しすぎて、スルーしてしまうところでした。メインだけではなくサイドメニューにもこだわりを感じます。

Iさん:この職員食堂のすごさは、私たちを迎え入れてくれる雰囲気作りにあると思っています。
もちろん料理が美味しいことも魅力ですけど、いつもワクワクさせてくれるおもてなしの雰囲気が大好きです。

カメラのピントも赤ワイン煮込みに注目しすぎてしまいました

松野:音楽で人を楽しませるIさんの仕事にも共通する部分がありそうですね。

Iさん:本当に!そう思います。今日の料理だって、私たちの前に出てくるまでにはメニュー開発の試行錯誤があったり、入念な準備があってようやく日の目を見るわけですよね。
私たちピアノスタッフも人前で演奏するために、練習を繰り返して常に準備していますので。


松野:私たちに見えている「楽しみの提供」の裏では入念な準備が行われているんですね。

Iさん:料理も演奏も、楽しみは一瞬で消えてしまうものですけど、その後に良い余韻が残せたらいいなと思っています。


松野:料理長は、この病院で「人生最期の一食」を作らせてもらえることを誇りに思っているとおっしゃっていました。音楽の演奏も同じかもしれないですね。

Iさん:私たちも、病室で「人生最期の一曲」を演奏させていただくことがあります。
「若い頃に好きだった曲」や「ふるさとを思い出せる曲」、クリスチャンの方に讃美歌を演奏したこともありました。

人生の最期に、患者様とご家族様が一緒に人生を振り返る良い時間を過ごしていただきたい。そのお手伝いをさせていただけるのは、この病院で働いているからこそですね。

松野:人生最期の一曲・・・、料理長が「人生最期の一食」をつくる仕事の責任感と誇らしさを教えてくれましたが、「人生最期の一曲」を奏でるIさんの存在もこの病院を支えてくれているんですね。
これからも、音楽の力で豊かな時間を創り出していってください。

演奏パートナーのKさんとの連弾も人気

本日もお相手は青梅慶友病院PR担当、松野でした。


【院内コンサートでの演奏をショート動画でご覧いただけます】