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【本】2024年9月に読んだ本

ミステリー小説で勢いがついた9月。
読書の秋を堪能できて嬉しい。積読は山積みだけれど。
このままどうか10月に入りたいね。

noteでの空間作りを頑張りたいな、とぽつぽつ思っていて過去記事の整理も併せてマガジン作ってみた。

ブランディングはまだまだ勉強中で、淡くて儚い青色な空間も好きだけれど、その中にもあたたかみ(落っこちても這い上がれるような)空間を目指したいと思っている。そのほうが「らしい」かなとも。

といいつつ、とにかくできることを楽しみながら。マガジンを作ったら一気に安心する穴ぐらができたようで嬉しい。

さて、以下今月の読書記録。



①今宵も喫茶ドードーのキッチンで。/標野凪




街の奥にひっそりと佇む小さなカフェ「喫茶ドードー」に訪れる人々の小さな物語が5つ。

ストーリーはコロナ禍を設定していて、私も当時接客していて、今は亡きアクリル板での声の通らなさなど、お客様とのやり取りで歯がゆい思いをしたなあと思い出した。

途中途中、高圧的であったり強めな台詞が挟まるので「ううっ」となったり、SNS界隈の問題(自分と他人を無意識に比べる、炎上しないために言葉を選ぶなど)が取り上げられていて、表紙から想像するほっこりだけではいかない。

けれど、最後は喫茶ドードーで振る舞われる料理や店主の優しい言葉に、心が軽くなってくる。良い意味でわかりやすい本。

個人的には、店主やもろもろ詳しく明かされていない部分が多いことが気になるのと、語り手が1人ではなく、最後に誰の目線なのかわかる書き方が面白いなと思った。


②捨てられた僕と母猫と奇跡/船ヶ山哲



うつ病の主人公が心に傷を負った猫と出会い、社会復帰するまでの話。

読みやすく、文章量もそこまでなので、サクサク読める。

猫との暮らしで自分が救われることは、猫を飼う私自身共感することも多かったし、自分の猫のことを思うと正直寂しく思うラストではある。

大切な存在を失ったあと、生きていかなければならないことへの強さにまだ自信がないな。


③レモンと殺人鬼/くわがきあゆ



休日に一気読み。ミステリーは時間を忘れて没頭できるので、ある意味ストレス解消になる。

ストーリー中、人は殺されるし、血は流れるし、動物のグロい描写もあり。なので苦手な人のためにこのあたりはお伝えしておこう。

私はミステリーをそこまで多く読んできてないから、ミステリーならではの、構成や伏線のはりめぐらせ方などを他のミステリー小説との比較は難しいけれど最後まで飽きさせないのは確か。

虐げる側、虐げられる側どちらの立場にもなり得ることであったり、虐げられるばかりではないというメッセージを受け取ったけれど、個人的には主人公の二面性の書き方がすごいと思って。あのね、急に来るの!ぞわっとやられたし最高だった。


④通天閣/西加奈子



お知り合いと、よーいどん!と読み始めた本。お会いした時に互いのカバンから赤い通天閣が出てくるの、とても良かった。

私個人目線で、剥き出しだと感じる言葉に恥ずかしくなったり、パンチが強く感じたり。でも、だからかな。「あなたがそこにいてくれたらそれでいい」という気持ちが、まっすぐに強烈に伝わってくるのだと思う。

誰かと共に生きることの根幹を指しているとも感じ、失恋した人にも読んでほしい。

主人公の女の子が恋人に対して「どうか早く帰って来てよ、せめて電話くらい、しろよ。」の、この…!!!!句読点の位置とそれぞれの語尾から感じる振り向いて欲しさとオイコラって気持ちの共存…!!!

前半は誰がどう生きようと(死のうと)関係ない、こなす毎日、虚無感も綴られる。その絶望が後半に向かってぐんぐん再生していって引き込まれたな。

じゃかましい!
夢に向かって頑張っていないと駄目なのか、何かを作っていないと駄目なのか。自転車でバイト先に向かい、阿保の相手をして、マメのことだけを思って眠る生活をしている私は、駄目なのか。

本文より


⑤その手をにぎりたい/柚木麻子



柚木さんのリサーチ力は本当にすごくて、楽しいのはもちろん、小説1冊読むだけで知らない世界を深く知ることができるから好き。(BUTTERの読後感がすごかったことを今でも覚えている)

主人公の青子が銀座にある寿司屋に魅了されて、座るだけで3万円といわれるその店にガツガツと仕事で稼いだお金で10年通い続ける。

読み始めようと思ったきっかけは、自分が仕事で自己嫌悪に陥った時に、仕事に対する姿勢が自分とは違うもの、「稼ぐ方法よりも稼いだ先を大事にする」を見てみたいと思ったから。

本書をバロメーターとした時、私は青子みたいにはなれないなと思って、それは自分がどのように相手に役立てたのかにこだわっているからじゃないかな。

その思いが軸でありつつ、いろいろ重なって自分の思う最大限を相手にできなかった時に自己嫌悪に落ちる傾向があって、でも最低限の仕事はしているわけで。青子みたいに極端ではないけれど、稼ぐ過程はなりふり構わずな考え方は売上に疎い私に新しい風を運んでくれていたし、バランスというか稼ぐ過程を大事にできなかった自分も認めてあげられるかもなあと今思っている。

そして、本書は柚木さんらしい女性表現もありながら、なんといってもお寿司の描写がすばらしいのだ。

寿司職人の仕事の美しさ、シャリが口の中でほどける瞬間、魚の甘みやぷりっとした食感。こちらまでうっとりしてしまう。

人と関わる時間についてもメッセージが強いなと思っていて、寿司屋に通う何年という流れの中で、互いに育てあったり、どんな関係であっても関わりあうことができること。

濃い10年を過ごした街に、最後自分の居場所は…と考えた青子の答えにも私は勇気づけられた。何年も経ってようやくわかることもある。長い年月に費やした時間やお金を後悔しそうな人にもおすすめである。

あそこでの時間は自分の体に溶け込み、血肉になっているだろうか。いや、そうでなくても構わない。青子は手を引っ込めた。夢のような時間を自分のお金で買ったのだ。たとえ、消えてしまっても、あの手触りは永遠に心に残り続けるだろう。

本文より


季節の変わり目、体調気を付けてもぞもぞ本読んでいこう。

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