肝生検前のバセドウ病

世界中が得体の知れないウィルスに翻弄される日々。それはもちろん私たちの身近なところでも騒がれていた。先週2月22日も、今週ほどではないにしろ人々は見えない何かから自分たちを守るべく、日々の生活を変化させていたらしい。

その日は1か月半ぶりのバセドウ病の検診日で、私は表参道の伊藤病院へ行った。正確には予約を入れる病院ではないため、自らの意思で向かった病院ではあったが、私はこの後控える肝生検の入院のこと、薬の処方もそろそろだったので、どうしてもこの日に行きたかったから向かった。

甲状腺疾患の患者では、その専門性や混み具合で有名なこの病院。この日も大層待たされるだろう覚悟の上向かったのだが、それは杞憂に終わる。

電車はそれほどすいてはいなかったものの、表参道の町が、土曜日とは思えないほど空いていた。

立ち並ぶ高級ブティック、店員さんが退屈そうに外を眺めている姿が目に留まる。日本の人口減少が叫ばれる昨今だが、私はここ数年、週末の東京がやたら混んでいることに疑問を持っていた。しかしそれは、インバウンドだかなんだかよくわかんないけど、それは海外からのお客様だったんじゃないか、日本人は本当に減っているのかもしれない。特にセレブリティなお店でお買い物できる日本人は本当に激減しているんだって、初めて実感するほどだった。

そして伊藤病院の自動ドアをくぐる。受付くんに診察券を通す。いつもならこの入り口だけで人があふれているのに、この日はいつもとは全く違っていた。

人、少ない。

採血もすぐ終わり、あとは結果待ち。確認くんを見ると、8人。こんなにすぐ診察になるなんて驚くにもほどがあった。適切な外来受診と服薬をすれば急を要する患者が少なく、予約もいらないこの病院だからなのか。今の社会の様子が垣間見れたように感じた。

そして私の番号が呼ばれ、診察室へ。少し甲状腺の数値が上がっていたことに先生は、
「(服薬中の薬)ヨウ化カリウムの効き目が落ちてきたようなので、肝生検もあるだろうから、1錠増やしましょう。肝臓の治療方針が決まったら、メディカゾールに変えましょう。」
と言った。

その日の検査数値。

FT3: 4.1
FT4: 1.64 H
TSH: 0.01 L

前回の来院時、1か月の服薬で甲状腺数値が落ち着いたことに、ヨウ化カリウムすごさを感じていたのだが、これはおそらく、肝臓の数値が高い理由の1つとされる甲状腺の影響度を測るために、一時的に処方して甲状腺数値を落とし、甲状腺のきちんとした治療をしていたわけではなかったんだということを悟った。

おかげで肝生検が決まり、肝臓の治療が一歩前に進んだ。そのことにまず感謝するとともに、とは言ってもこれからまた治療が始まるのかという、ちょっとしたショックも味わった。

すでにわかっている持病は、バセドウ病と潰瘍性大腸炎。どちらも自己免疫が影響していると言われている。

先日見たテレビでは、ウィルスの「サイトカイン」というのを説明していた。「自己免疫」という言葉が飛び交う。

肝臓の数値が悪い根本的な理由はまだわからない。いつもなら賑わっているはずの天気のいい土曜日の昼下がりの表参道がこんなに空いている、その原因の撃退法もまだ見えていない。

帰り道、わからないことを考えてはわからなくて止まらなかった。

あんまり考えすぎないこと。止まらないのは音楽だけでいいんだよ。
MUSIC NON STOP。
そう自分に言い聞かせる。


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