見出し画像

「ボ育て」サバイバル(1)

皆さん「ボ育て」という言葉を知っていますか?これは「子育て」と「ボードゲーム」を組み合わせた造語で、ボードゲームが好きな人の間ではよくつかわれる言葉です。明確な定義はないのですが、子育ての中で、子供との遊びにボードゲームを取り入れた子育てのことを言います。また、ボードゲームと言っても最近はカードだけ使うゲーム、サイコロや積み木のような部品だけを使うゲームも「ボードゲーム」のカテゴリに含めることが多いため、それらをすべて含めて「ボードゲーム」と呼ぶことにしたいとおもいます。

さて、最近はボードゲームが好きな大人が増えています。ボードゲームで遊ぶことができるカフェ、通称「ボドゲカフェ」なるものもあり、そこにはたくさんの大人が集まってボードゲームに興じています。ボードゲームが好きな人の中には、子供が生まれたときから、少し大きくなったらすぐにでも一緒にボードゲームをしたい、ボ育てをしたいと思っている人も多いかもしれません。かくいう私もそうでした。

現在、子供は一年生になりますが、「ペンギンパーティー」や「ハゲタカのえじき」はもちろん、最近では「モノポリー(簡易版)」や「インカの黄金」で楽しく遊べるようになりました。

しかし、初めからそういったゲームで遊べたわけではありません。子供とボードゲームで遊ぼうと画策するなかで、もちろん失敗しそうになったこともあります。

ボ育てはサバイバルです。ボ育てサバイバルの敗北は「ボードゲームは面白くない、やりたくない」と子供が思ってしまうことです。

子供と一緒にボードゲームで遊びたい、ボードゲーム好きになってほしいという気持ちが強すぎて無理に遊ばせようとすると、子供はかえってボードゲーム嫌いになってしまうことがあります。ボ育てサバイバルで生き残るために、どのような考え方、どのようなやり方でボ育てを進めていくか、どんな順序で「ボードゲーム楽しい、もっとやってみたい!」という気持ちに導いていくかが大切です。そこで、ボ育てサバイバル生き残りのためのノウハウをみなさんにお伝えしたいと思います。

ゲームを遊ぶスキル

さて、子どもと一緒にボードゲームを遊ぶには何からはじめればいいでしょうか。もちろんいきなり数字を扱うゲームはできません。計算ももちろんですが、数字が順番や大きさを表すということもわかりません。それどころか「数字という記号」同士の区別をつけることすらひとつのスキルで、最初からできるものではありません。ひらがな、カタカナなど文字が出てくるゲームも無理です。ではボ育ては何からはじめればいいでしょうか。

ボードゲームが好きでいろいろなボードゲームを所有している人に気を付けてほしいのですが、自分の好きなゲームだからと、はじめから子供向けでないものを持ってきてもうまくいきません。下手するとカードを破かれたり、かじられたりしてそのゲームが使えなくなってしまうこともあります。大切なゲームであればあるほどそれを子供に紹介する時期は見極めましょう。

そういう意味では子供向けをうたっているゲームには良いものが沢山あります。コンポーネントが壊れにくく、カードも破れにくくなっています。しかし、子供向けのゲームであったとしても、それらで遊ぶためには前提として必要となるスキルがあります。それは以下の3つです。

  • ゲームのルールどおりにできること

  • 負けをみとめられること

  • カードや物をぞんざいに扱わないこと

ゲームのルール通りにできること

ゲームにはルールがあります。ルールがないものはゲームに当てはまらないといっても過言ではありません。子供がまだルールを意識できず、その通りにできない場合は、その子の発達段階がまだそこに到達していないということです。おそらくそのルールに沿わない他の活動をしたいか、ルールが複雑すぎて理解できない、理解できるけどその通りにできないなどの理由によるものでしょう。

前者の場合、即座にそのゲームで遊ぶことをあきらめましょう。その子の理解力が無いとかあるとかそういうことでなく、他のことがしたいのです。その場合はルールの無い遊び、例えば積み木やブロック遊び、お絵描きなど「ルールなく自由に遊べる遊戯」をさせてあげましょう。

また、そのゲームのカードや部品のデザインが面白くてゲームをするよりとにかく触ってみたいという場合もあります。その場合も、そのゲームのルール通りに遊ぶことにこだわらず、カードを一枚ずつめくってデザインを楽しむなど、その子がしたいことをさせてあげましょう。この時、子供向けのゲームでない場合、カードを破られたり、口にいれたり、くしゃくしゃにされたりということもありますので、そうされたくないゲームを出すのは子供がルールどおりにできるようになってからがいいでしょう。

「ほらルール通りにして」「そんな触り方しないで」「破れるからやめて」など、注意しながら続行しようとするのは最悪です。子供はそのゲームを二度と見たくないと思うでしょうし、下手するとボードゲーム全般に悪い印象が残ってしまうこともありえます。「じゃ、ほかの事しようか」といってそのゲームはさっと引き上げるのです。

後者の場合、つまりルールが難しすぎる場合はルールを変更して遊びましょう。ゲームとして一番スキルが少なくてもできる行為は「同じものをみつける」です。つまり神経衰弱です。神経衰弱のようなゲームでなれて「ゲームのルール通りに遊ぶ」というスキルを習得するまでは、それ以外のルールを含むボードゲームで遊ぶのは無理と思っておいたほうがいいです。ババ抜きですら「カードを手で持つ」「数字の違いを認識する」「同じ数字を見つけて捨てる」という複数のスキルが必要であり、それは4,5歳になるまで難しいものです。

余談ですが、神経衰弱が一番簡単と言っても、トランプを使ってしまうと「数字(抽象的記号)の違いを見分ける」というスキルが必要になるため実は難易度がひとつ高いのです。数字のペアでなく、絵柄が同じペアを見つけるような神経衰弱がおすすめです。具体的なゲームについては次回紹介したいと思います。

負けをみとめられること

ゲームには勝ち負けのあるものが多くあります。先ほど挙げた神経衰弱も基本的にはたくさんのペアを取った方を勝ちとするのが一般的なルールだと思います。しかし、勝ち負けがあることを知り、自分が負けたと知ると最初は子供は負けると悔しがったり泣いたりすることもあるでしょう。かんしゃくを起こす場合もあるかもしれません。

悔しがるのは「そのゲームに勝ちたい」という欲求がかなわないことによるものです。赤ちゃんの頃から自分の欲求を叶えてもらい、欲求がかなわないと不愉快、泣くということを繰り返してそれを学習してきたのですから、勝ちたいけど負けた、ゆえに不愉快である、となるのは不思議ではありません。自然界の場合、欲求が叶わなければ生命の危機につながることもあるため、これは自然な事と言えるでしょう。

しかし、負けるたびにかんしゃくをおこしていてはゲームになりません。ボードゲームを遊ぶ上で早期に学ばせてあげたいスキルの一つは「ゲームに負けても自分の評価や立場は危うくならない」という事を知ること、もっと言うなら「ゲームに負けても生命の危機にはつながらない」ことを学習してもらうことです。

最初は負けて悔しがって泣くこともあるでしょう。ゲームを投げ出すこともあると思います。その時は「負けても大丈夫だよ」と負けることがおおごとでないことを教えてあげるのはよいですが、「負けたぐらいで泣かないで」とか「負けたからと言って途中でなげださないで」などは言ってはいけません。せっかく楽しいはずのゲームが、もうやりたくないのに続行を強要される、負けて悔しがることを怒られるなど、嫌な遊びとして記憶されてしまうこともあり得ます。これはボ育てサバイバル失敗への第一歩です。

また、そもそも勝ち負けがないゲーム、協力して勝ちを目指すゲームもあります。そういったゲームを遊んでまずはルールに沿ってゲームを遊ぶスキル、ゲームを遊ぶ楽しさを感じてもらうのも一つの手です。こちらも次回紹介します。

カードや物をぞんざいに扱わないこと

カードを破いたり、折り曲げたり、ゲームの部品をなめたりということをされてはゲームが痛んでしまいます。だからと言って「カードを破かないんだよ」「ほら、舐めないで」など注意されながら遊ぶ遊びは楽しくありません。そもそも折り曲げようという意識なく、手癖で曲げているように場合もあり、当人にとっては無意識な行動なのにそれを注意されてしまうのは子供にとっては不愉快であるかもしれません。

赤ちゃんは、周りの環境、もっというなら世界をしるためにすぐにその辺にあるものをどんどん触ってみたり、手にとってみたり、舐めてみたりすることで物の感覚や体の使い方を学びます。その行動をやりつくすことで次の段階として、どのように触ればいいか、何をしたら壊れるかなどを学びます。

カードを破く、舐めるということをするのであれば、まだそれをしたい発達段階なのです。ここで親がすべきことは破いても舐めても良いものを与えることであり、破くな、なめるなと注意することではありません。

「キライにさせない」が一番大事

ボードゲームを始めるには、実は多くのスキルが必要な事がわかったと思います。我々大人は当然のようにできること、例えば同じ絵柄をみつける、カードを広げて手にもつというような行為であっても、子供には難しいのです。

子供がしゃべれるようになった、数字を言えるようになった。しかしだからといってすぐにゲームができるわけではありません。一番大切なのは「子供の発達段階に合わないゲームをプレイさせてゲームを嫌いにさせない事」です。ボ育てサバイバルは長期的な視点で考えないと生き残れません。

神経衰弱ができるようになれば少しずつ他のゲームもできるようになります。しかし、ゲームを説明してみて理解できてなさそうならすぐにやめる、ゲームをはじめてもつまらなそうならすぐにやめるという見極めが大切です。焦らずにボ育てをしていけば、いずれそのゲームが遊べる時がきます。

間違っても「ルールどおりにやって」「そうじゃないでしょ」などと、ゲームをすることを優先させてしまって、子供がボードゲームが嫌いになってしまわないように注意しましょう。

次回のボ育てサバイバルは、具体的にどのようなゲームからはじめればいいかを紹介したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?