【勉強会報告】「患者さんの思いを知ろう」
11月16日(土)にOLAS for cancer survivorの初めての勉強会「明日から使える基礎知識!がん患者のセクシュアリティを支援する」を開催しました。
約30名の方にお集まりいただきました。皮膚・排泄ケア認定看護師や婦人科外来に務める看護師をはじめとして、乳がんや婦人科がんサバイバー、企業の方もいらっしゃいました。
医療者でもありサバイバーでもある方が多数参加されており、がんとセクシュアリティに関して医療現場を変えていきたいと考えている関心の高い方々にお越しいただけたな、と感激しています。
第1部はがんサバイバーとOLAS代表の宮本とサバイバーによる対談、第2部乳がん・婦人科がん患者さんへのセクシュアリティの支援というテーマで大川玲子先生に講義していただきました。
今回はお越し頂けなかった方に向けて講演の内容をご報告させていただきたいと思います。
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第1部「患者さんの思いを知ろう」
代表の宮本と子宮頸がんサバイバーのKEIKOさんとの対談です。
KEIKOさんは広汎子宮全摘術後、術後補助療法として化学放射線療法を行われた方です。
MAYUさんという子宮体がんのサバイバーの方にも来ていただいていたので、ときどきお話を聞いています。
宮本:がんになって性生活について悩みましたか。
KEIKO:最初はそれよりも命のことを考えました。しかもこういう病気になったので、もうセックスとはおさらばなんだ!って思い込んでました。そんなとき手術後にいったオフ会でサバイバーさんたちが「セックス」のことをいっぱい話していたんです。私はあきらめなくてもいいんだって分かりました。でも私の体は手術で膣が短くなっているし、治療でどんな影響が出るのか全く分からなくて不安になりました。
MAYU:私はパートナーがいなかったので最初は赤ちゃんができなくなるからだになるんだ…で頭がいっぱいでした。でも手術が終わったころに、赤ちゃんができないからだなうえにセックスもできないからだになったら私は女ではないんじゃないかって思っていました。
宮本:不安なことって医師に聞けましたか。
KEIKO:最初は聞きにくかったです。私の主治医は男の人だし、先生は命のことを考えてくれているのにこんなこと聞いてもいいのかなって…でも宮本看護師さんに会って、オープンに話せるようになって先生に聞くことができるようになりました。なにより大切なのは信頼できる人に出会うことなのかもしれません。
MAYU:私も術後セックスできますかって聞いた先生は、担当医のなかでもすごく話しやすい先生でした。主治医には聞こうって思わないかもしれません。
宮本:私の周りの医療者に事前アンケートを取った結果、がん患者から性生活についての相談を受けたことがある人は3割でした。大規模な研究でも同様の結果が出ています。でも相談がされたことがない=ニーズがないというわけではありません。ある研究の結果ではセックスについて相談したかったというAYA世代の患者さんの7割が相談できなかったと言っていました。診断された当初は命のことで頭がいっぱいだけど、セックスに関することを知りたい時期がくるということを見越して、普段接している医療者がセックスについて聞いてもいいんですよっていう姿勢を見せていくことがまずは大切なのかなって思います。主治医には聞こうって思わないというMAYUさんのご意見もあったみたいに、話しやすい医療者が対応する必要性を感じますね。
宮本:性生活について何が不安でしたか。
KEIKO:まずはやっぱり治療による体への影響。膣が短くなっているのに加えて、セックスを定期的にしないと放射線治療の影響で膣が硬くなってしまうっていうのも聞きました。パートナーとのことも悩みました。治療後私はすっかり痩せてしまって、セックスしても大丈夫って分かっていても相手が怖くてできなかったみたいです。
MAYU:卵巣もない、子宮もない、そんな体で自分はいったい感じることができるのかなって思いました。
宮本:がん患者さんからの相談は「子宮と卵巣を取った後ってセックスするときに影響が出るんですか?」と言った身体的な内容から「お互いがこの話題を避けていて再開できません。もう女性として見られていないのかな…」と言った精神的・社会的な内容まで幅広いです。よく医療者はセクシュアリティに対する支援=挿入がうまくいくようにする支援と捉えがちですが、パートナーとの関係性、自分の女性としての存在価値などそれだけではないことを認識しなくてはいけませんね。
宮本:それでは医療者にも聞きにくい、けど不安がいっぱいのセックスに関すること。情報収集はどのようにしたのですか。どんな情報を知りたいと思っていたのですか。
KEIKO:やっぱり最初はインターネット、特にインスタグラムから始めました。体験談を読んでいたんです。そのあと宮本看護師に「がん患者の幸せな性」という本を紹介されて、ようやくしっかり勉強できたなって思いました。
宮本:やはりニーズと合致するように「治療や疾患と性に関わる正しい知識」と「精神面・社会面に関わる情報」どちらもを求めているということですね。
宮本:それでは少し視点を変えて医療者はどうして支援ができないのかということを考えてみたいと思います。研究の結果では「必要性を感じていない」のが33%、必要性を感じている67%のうち「患者から相談される機会がない」のが93.5%、「患者が介入しているかどうかが分からない」のが89.2%、知識不足が88.2%、スキル不足が88.9%でした。
この問題は「性に関する話題そのものに対する恥じらい」と「医療者の知識不足・スキル不足による支援へのためらい」が重なってより複雑化していると言えますね。
宮本:しかし医療者の姿勢は患者さんの未来を大きく左右します。患者が「いつからセックスができるんでしょうか?」と聞いたとき、主治医(男)の第一声は「そっち?」だったそうです。それ以来彼女は性生活については病院では聞いてはいけないことと位置づけ封印しました。こんなことはあってはいけないなと思います。
宮本:最後にどんな医療者が増えてほしいかについて教えてください。
KEIKO:セックスに関することを他のことと同じように当たり前のように話してほしいです。私は最初の治療で手術か放射線かを選択させられましたが、そのとき性機能障害の違いについては説明されませんでした。そのことを聞いていたらまた違って視点で物事考えられたかもしれません。あとはやっぱり医療者から積極的に聞いてほしいです。話してもいいんだと思えます。
宮本:なにかと並列して当たり前のようにセックスのことを伝えるのはすごく大切なスキルだと思います。私は退院指導のとき、すごく詳しく話す腸閉塞のことと同じくらい性生活のことも話すようにしました。あえてしっかり目を見て、です。外来では「その他に気になることありますか、食事のこととか性生活のこととか…」と必ずへ並列して伝えるようにしていました。そうするとときどき「実は…」と言ってくれる方がいるんですよね。ちょっとした声掛けの工夫が必要なのかなって思います。
KEIKOさんありがとうございました。
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今回ハナミスイさん膣に直接挿入することができる潤滑ゼリー「ケアジェリー」「ウェットトラストプロ」を試供品としていただき、参加者にお渡ししました。
潤滑ゼリーにも幅広い選択肢があることをお伝えすると
「こんな形のものがあるなんて知らなかった」「今はパートナーがいなくてすぐセックスする機会がないけど、自分のために使いたい」と参加者の方から多くの反応がありました。
本当にありがとうございます。
次回は大川先生の講義をまとめていきます。
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