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Sonic Youthの軌跡を辿る③ (初期アルバムレビュー)

Sonic Youth(以下、適宜SY)について、主要アルバム16枚(+α)を振りかえる企画記事。

前回記事、「初期の見取り図」はこちらから。
企画の趣旨は「プロローグ」をどうぞ。

今回は、その起りからメジャーデビューまでの「初期」、そのアルバムレビュー。

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フロントマンであるThurston Mooreは、バンドの音楽性の変遷を、3つに分けて端的に語っている※1。

1. 初期のノー・ウェイヴな攻撃的サウンド
2. 90年代の過激なコード進行と曲構成
3. より焦点の定まったコンテンポラリーな音楽的訴求

言葉どおり、「初期」に当たるのは1.の箇所だ。大きく2つに分けてみていこう。

ノーウェーブ、ポスト・パンクもどきから、徐々に自我を獲得していく最初期の「誕生」の流れ。玉石混交で、そこには様々なプロトタイプが伺える。
そして「覚醒」。ノーウェーヴ出の歌ものバンドという矛盾した形式から、ハードコア、パワーポップ、パンクといった所謂「ロック」が、The Velvet Undergroundから脈々と続くNYアートスタイルの価値観で再構築されていく……その形は「SY」、あるいは「オルタナティヴ」としかいえないものとなった。一方で、何やってんだコイツらという自由さとユーモアもある。そんな初期の談。

プレイリストとともにどうぞ。

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注記
・引用や補足は※にて記事末尾にまとめています。
 特に示していない発言はこちらが引用、参照元です。
・アルバム画像はAmazonリンクに飛ぶので、気になる方はご注意。
・曲名を装飾して、個人的な評価やらを表しています。
 普通 < 太字(良い) < 赤字(素晴らしい) <赤太字(名曲)
 目安なので、雰囲気程度に。
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「初期」アルバムヒストリー

Sonic Youth、ソニック・ユース。中学生ながら(だから?)このバンド名を「カッコいいな」と思った。騒々しく青々と音が広がっていくようなイメージが沸くし、どことなく反抗的なパンクっぽさもある。その名前には確かに「方向性」が感じられた。これから始まっていく、瑞々しい騒音。

初期① (誕生)

■『Sonic Youth』('82)

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記念すべき初EP。本作は端的に言うとPIL『Metal Box』である。粗暴なファンクとダブ解釈、つまりある種のポスト・パンクからの影響を示しているが、単純にバンドの力量、録音技術が追い付いていない。今だとボーナストラックの1981年ライブ演奏のほうが聴きごたえがある。

彼らが最初に掲げた曲は「Burning Spear」だ。タイトルは、バンド名の文脈にそってレゲエ界のレジェンドからきており※2、サーストン曰く「世界に向けてのプリミティヴィストの声明」であるドラムスから始まって、「ダブレコードにインスパイアされた」らしいベースが続く。曲途中の異音はリーによる電動ドリルの可動音だ。普通に考えると意味不明だが、おそらくは大真面目なノーウェイヴ作法で、自身のポスト・パンク以外の出自を示すためのものだろう(レゲエ側からみれば冒涜な気もするが……)。

こんなふうにSYの楽曲にはモチーフやアイデアがある。ただ、言葉を追った時の強そうな印象に対して、初期の楽曲のおおくは焦点のぼやけた習作に留まるものだった。

ただ1曲、見過ごせない曲がある。本作のベストトラックは「I Dreamed I Dream」。その緊張感には10年未来のSlintを感じるし、過去のポスト・パンクやノーウェーブやと違ってSYが「歌」に近づこうとしているのも示唆的だ。のちの音楽性、一般的な響きから逸脱しようとするギター、曲展開への時間感覚もある。すでに確信めいた声の響きを得ているゴードンとリーにも驚く。

ここに在るのは、他にない何かを作らんとする無軌道な意欲の残骸だ。それはまだ形になっていなかったが、ユースは、まさにその意欲だけを信じて、あの華々しい80年代、の裏路地を突き進んでいく※3。

Rating: 50/100 ★★+

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すべてが模索中だったが、とりあえずEPを手にしたバンドは、自身の音楽をより広く届けるため、無謀にもこの時点で"ライブツアー"を計画した。これまで縁のあったクラブに手当たり次第声をかけて無理やり形づくったのだ。ツアーの同行者はSwansである。SwansもSY同様、Glenn Branca先生に認められ(この2バンドの出発を支えたの偉大すぎる)、彼のレーベルからセルフタイトルEPをリリースしたばかり、まだ音楽性を確立していなかった。若さ……。

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Sonic YouthとSwans。フライヤーからしてゾクゾクするし、今なら一瞬で完売するだろうタッグだが、この時点では、観客が3人しかいない夜すらあった。バンには大の大人が後部座席に押し込められ、宿は各地の知人の部屋の床。インディと胸を張るにも辛い環境だ。Swansのジラは「がっかりするほどの悪夢」と評したが、そんな中でも、SYは毎回のショーを録音、メンバー全員で聴き返し、愚直に何かを掴もうとしていたようだ。ジラは語る。

ソニック・ユースはアティチュードを持っていた。
彼らは自分たちがやっていることが正しいと確信していた。


■『Confusion Is Sex』('83)

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記念すべきファーストアルバム。これもノーウェーヴ出ポスト・パンク好きの習作の域を出ない作品に思うが、ツアーの経験もあってか視点の定まった曲が増えてきた。ちなみにSYの代名詞でもある変則チューニングが用いられるのもここからだ。ファンがまとめているので、ギターを持っている方はぜひ見てみてほしい(「なぜそこまでする?」って思う)。
Sonic Youth Tuning Tutorial;

印象的なのはやはりゴードンの「Protect Me You」。この路線がもし成熟していったなら、それはポスト・ロックの語の射程に――Talk Talk『Eden』の静と、Slint『Spiderland』の緊張の中間あたりに――収まっていたかも、なんて想像する。『Daydream Nation』前前夜、シェリ―加入前のSY流ガレージパンク「Inhuman」では、ハエが鳴くようなか細いギターが飛び回り(←褒めてる)、意図せずジャンクロック化していて面白い。

ベストトラックは「The World Looks Red」。ツアーを経て同志となったSwansのジラが手掛けた(!)歌詞、「世界は赤くみえる」というアウトサイダーの視点※4、そこに乗るアナーキーなツインギターによる異形のパンクはまちがいなく表現に達している。
そして重要なのが「Confusion is Next」。「混沌にこそ未来が、その先に自由と真実が」というフレーズはバンドに通底する意識を具現化した。曲は、ホーンセクションで全員出す音を間違ったような腰砕けの不協和音(←褒めてる、が、聴くといつも笑ってしまう)で始まり、不完全燃焼に終わるが、それは確かな声明だった。音が説得力を持つのはもうすこし先だ。

ともかく、ほかのポスト・パンクやノーウェーヴのレジェンドたちと違い、Sonic Youthは1stアルバムで伝説となるバンドではなかった。だけども確かに、少しずつ「何か」が形づいてきていた。その音は、徐々にだがレビューも載るようになった。同年リリースであるR.E.M『MurMur』(!)の瑞々しさに沸くプレス誌の片隅に、こんな言葉が添えられていたのだ。

「地獄へ向かう最後のエレベーターに乗るときに耳にするもの」
「このアルバムはやりすぎており、そしてもちろん、彼らも度を越えている。
だが、他に誰がやる?

Rating: 58/100 ★★★+

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このころ、サーストンとリーは、(三度登場の)Glenn Branca師匠のヨーロッパ公演をサポートする機会に恵まれ、それを逃さなかった。得られたお金でバンドメンバーを集め、ブランカのツテからクラブに総当たりで売り込みをかけ、インディ、DIY流の"ヨーロッパツアー"を敢行、EP『Kill Yr Idol』も欧州リリース。挑発的なタイトル、凶暴なノイズが渦巻くそのライブと音源の評判は、やはりというべきか米国より先に英国誌に発見され、初めてちゃんと好意的にレビューされた

何かが動き始めていた。その先の放物線を誓うように、サーストン(25)とゴードン(31)は結婚式を執り行った。※5


■『Bad Moon Rising』('85)

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「Brave Mwn Run」の勢いあるギターストロークは、これまでより明らかに魅力的なスタートだ。サーストンの「僕たちはピッキングをするような曲をちゃんと演奏できるってことがわかった」という発言がどこまでマジかは分からない。が、DrにBob Bertを手にしたことで、Ramones、Wipersといった元来のパンク好きのポップな曲感覚が素直に現れはじめた。

とはいえアルバムは不穏なサウンドスケープが蔓延しており、ノイズにより全編がシームレスにつながっているという、SYの中でも特殊な構成をしている。ジャケのイメージあいまって、「挿入曲がいくつかある、ホラー映画のサウンドトラック」という感じだ。

しかし本作最大の魅力は、そうした試みの全てを最終曲でブッ飛ばしてしまうところにある。7曲目でノイズが終わり、一瞬静寂を取り戻した数秒後、ドラムのカウントからバンドは高らかに咆哮する。映画『悪魔のいけにえ』ばりの、解放と舞いのラストシーケンス。

代表曲「Death Valley '69」!チャールズ・マンソンを取り上げること、マンソンファミリーの関係性を男女ツインボーカルで表して歌いあげてしまうこと、そんな試みを快楽的なロックマナーで仕上げてしまうこと。「You're right...」から「Hit it! Hit it!」と続けて爆発するストーリー性ある間奏。すべてがスリリングだった。共犯者はノーウェーヴのレジェンドLydia Lunch。アウトロでノイズの果てに恍惚と浮かび上がっていくリンチの声は、この曲のモチーフに完璧な説得力を添えている。ライブVerがとにかくカッコイイのでそちらを進めたい。SYが手にしたひとつめのアンセムだ。

アルバムと楽曲は英国誌『NME』に発見され、1985年のベストトラックTOP10にランクインした。この年のランキングはぜひ見てほしい(リンク)。Jesus and Mary Chainを万雷の拍手で迎え入れ、Hüsker Düに沸き、そこにSonic Youthが続くのだ。 UKがどのように彼らを捉えていたかが分かりやすい(偶然ながら、ベルベッツのコンピがいるのも熱い)。

Rating: 62/100 ★★★+

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そしてSYはSSTレーベルへの移籍を果たす。これがどれだけ大きな意味を持つかは、当時のSST Recordsのラインナップを見ればよく分かる。盟友Minutemen、Meat Puppets、Hüsker Dü、そして何より偉大な先人Black Flagだ。彼らの功績は前回記事で触れたとおり。

また、この頃SYは「Dinosaur」――のちに「Jr」がついたバンド――をSSTに仲介している。彼らの飛躍については拙作だが昔の記事リンクを置こう。サーストンが彼らを「ノイズの要素とメロディを自然に融合させた」などと高く評価しているのは有名だ。その言葉は、自身によって10数年後の"中期"にて達成されるのだが、それはまた次のお話。

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初期② (覚醒)

時を同じくして、バンドは、DrにSteve Shelleyを手にする。ニューウェーヴとハードコアに影響をうけたドラミング、メンバー曰く「ある種の身体性を持っていた」「そしてノーウェイバーではなかった」シェリーは、バンドの実験性を、ロックの領域に絶妙に揺りもどした。音楽的評価を飛躍的に高めた時期で、一般的にはここからがSonic Youthとされ、このころが一番好きというファンも多い(当社調べ)。

■『Evol』('86)

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『Evol』はソニック・ユース誕生を告げる快作。初期を聴くなら、個人的には本作をオススメしたい。80年代のポスト・パンクと90年代のオルタナを結ぶミッシングピース。ハードコア接近前夜の内省的で重々しく暗い雰囲気が、犯罪や陰惨な情景を描く歌詞とあいまって、アートワークどおり強烈だ。My Bloody Valentine『Isn't Anything』と同じく、過渡期特有のアイデアと可能性に富んだ一作となっている。

シェリーの参加によって、リズムがメリハリがついただけでなく、間奏で好き放題しても空中分解することなく楽曲に戻れるようになった。「Starpower」は魅力的なイントロとフックを持つパワーポップだが、なぜか間奏で爆散し、何事もなかったかのように元に戻る。ここからデフォルトテンプレートとなる「SY印」の曲構成、その代表例がここにある。

「Tom Violence」は、タイトルでNYの先人、TelevisionはTom Verlaineへの影響を示し、重々しいリズムパターンと間奏の軋んだノイズセクションによって、曲のテーマである"幼少期の家庭内暴力"を回想していく。ヒッチコック映画がモチーフの「Shadow of a Doubt」は、変則チューニングによるハーモニクスフレーズが幽玄に木霊するなか、ゴードンが女性としての意識を夢の中をたどるように立ち上げていく。バンドの進化が伺える開幕3曲だ。

ベストトラックは「Expressway to Yr. Skull」(「Madonna, Sean and Me」)。Neil Young御大が愛した曲※6でもある。気だるげだが恐ろしい歌いだし「カルフォルニアの女の子を殺すつもり」、「そうすべきだと思う限りそこにいよう」と歌ってゆく様は、一種のクライム・ロードムービーを思い起こす。しかし曲は号令のもと突如爆発し、ノイズの波に散らばったあと、アンビエント、ドローンとなり、無音に結ばれる。展開の意味性はなにも分からないが、ある種のアメリカン・ニューシネマのように、言い表せない美学が1曲に宿っている。原曲も美しいが、バンドの魅力が詰まったライブ映像も(音質はともかく)とてもクールだ。

Sonic Youthのこうした"爆発"は、ロックのクリシェでもあるが、改めてヒモ解くなら、念頭にあるのは大先輩The Stooges「L.A. Blues」(フリージャズへ接近した作)だろう。そこに、UKはSwell Mapsが展開したパンク世代によるフリーキーなアートスタイルのインプロが加わるイメージだ。特徴的なのは、SYが爆発後のノイズの残滓までを曲と捉えているところだ。ここはやはり先の前衛音楽家Glenn Brancaの諸作への参加が美意識として連なっているんじゃないか。そんな、SYの静と動の美意識、グラデーションが詰まった名曲だと思う。
こうした諸々は一言でいえば"カオス"、つまり"Confusion(混沌)"の語に繋がって、ココで先の「混沌にこそ未来が、その先に自由と真実が」というフレーズが説得力を帯びてくるのだ。


一方、変わり種の「GreenLight」は、80s作法の単音リフ曲に流れこみそうなところで、リーが不協和音をあてつけ、更に調子外れのベースが絡むラブソングになっている。何を信じていいのか分からなくなるほど不快な音選びの間奏からは、「グッドソングを書こう」という意思が微塵も感じられない。Arto Lindsay率いるノーウェーヴバンドDNAを「世界一醜悪なバンド」と評した(もちろん価値観の反転で褒め言葉だろう)のはサーストンだが、いい勝負だ(?)。あるいみNW的なユーモアで、このあたりの"負"と"正"の倒錯した掛け合わせにはSYをひしひしと感じる。

序章は終わり、役者はそろった。「ノーウェーヴもどき」から始まったアテのない旅は、「ソニック・ユース」となったのだ。『Evol』はその第一歩であり、その足取りはここから25年続いていく。

Rating: 88/100 ★★★★☆


■『Sister』('87)

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ノイズを撒きながらハードコア、パンクに接近した楽曲がふえ(シェリーのドラムスに信頼を得てのことだろう)、コンパクトな『Daydream Nation』としても聴ける、攻撃力が高い人気作。音は軽く薄いが……。

ロックバンドのアルバム1曲目を飾るには大人しすぎるタムタムから、風にのるように乾いたギターが流れてくる。いきなりだがベストトラックは「Schizophrenia」(統合失調症)だ。サーストンの家庭内事情から発している何とも言えない舞台設定と台詞。やるせなさ、切なさといった雰囲気を帯びた、SYの中でも特殊な名曲だ。いつになく感傷的な間奏のギターフレーズにグッとくるのは自分だけじゃないはず。この曲だけはこの音の軽さじゃないといけないし、語り手(サーストン)と主人公の独白(ゴードン)で声を分ける表現もいい。ツインボーカルでは、SY流ドリーム・ノイズポップと言えそうな「Kotton Krown」も見逃せない。


バンドメンバーが固まり、長期ツアーが組まれていく中で、不可解な曲構成も増えてきた。「Pacific Coast Highway」では、異なる楽曲のセッションが挿入されたような展開をみせる。コレはSYの楽曲制作プロセスが、スタジオにこもって同じ曲(アイデア)を繰り返し演奏し、メンバー全員でひたすら音とアイデアを重ねていく、彼らいわく「民主的な作曲」に由来する。一発録り、衝動を収めるパンクとは全く逆のアプローチだ。

その最果てがボーナストラック「Master=Dik」。「HIP HOPの影響をうけた」らしく、コーラジュアートともいえるが、間抜けな歌詞とKISSのふざけたサンプリング(一応かくとサーストンは大ファン)、正しくジャンクである。『Evol』『SIster』とやっと確固たる評価を得てのコレは悪意の挑発すぎて笑ってしまう。ちなみに、Ciccone Youth名義にてマドンナの謎カバーを披露※7し、なぜかUKのダンス・クラブでヒットしたのもこの頃である。すべては崇高な実験でなく、自由なユーモアだった。批評家やファンは正しく混乱、もとい"混沌"に招かれたことだろう。SSTのメンバーは笑いながらこう綴っている。

「こんなことを思いつき、自分たちのイメージを傷つけることを厭わないのだとすれば、ソニック・ユースはほとんどなんでもやる気構えでいるのだ」

Rating: 85/100 ★★★★+


■『Hold That Tiger』('87)

ここまでザッとみてきたが、この時期の彼らの魅力の一端、ヤバさを伝えるのにはこのライブアルバムもオススメ。特にtr6からの流れを聴いてほしい。怒涛の不協和音でノイズ・ハードコア・パンクを行き来する様は強烈で、小難しい理屈やモチーフ理解抜きの、シンプルに「暴動」が納められている。濁ったギターの和音は、ただ音の塊として切り込んでくる。コード進行もなにも分からないまま押し込められる様は圧巻の体験だ。音楽性はともかく、彼らが「パンク」の側にあったこと、その爆発力がよく分かるライブ盤。
ちなみにアンコールは4曲連続Ramonesカバーという暴挙に出ており(しかも1曲ごとに律義に「1, 2, 3, 4!」とコールする)、こちらもある意味必聴。

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地道な道程をへて、Sonic Youthはその自我を得た。すでに結成から8年弱がたっていた――偉大な傑作を残したポスト・パンクやノーウェーヴの先人バンドたちの多くなら、もう解散に至ってる年月だ。
しかしSYは、そこで金字塔をものにする。

『Dyadream Nation』
(続)


引用・注記・補足まとめ

※1. はからずもの最終作『The Eternal』('09)セルフライナーノーツより。
※2. 余談だが、Burning Spearは前にダブアルバムを紹介した。
  →ロックリスナーがダブ沼に落ちるとき
※3. 1st EPをリアルタイムで「クソ面白い。そしてまさしくNYC産だ」と好意的にとりあげたのが、ファンジン『Touch and Go』。SYと同じく80年代インディシーンを並走したものとして、横の視野を広げるためぜひ押さえておきたいレーベル。

※4. 初期SwansとSonic YouthはNYのアングラシーンでも異端だった。サーストンは「どっちのバンドも、誰からも好かれてなかった。僕らはそれを知っていた」「そこで、僕たちには絆が生まれた」と語っている。その疎外感と奇妙な絆を踏まえて、共作曲「The World Looks Red」を聴くと、かなりグッとくる。いったい誰が、彼らが30年を超える偉大なキャリアを積むと想像しただろう?

※5. SYメンバーに対する素直な評として、伝記のなかで好きな記述がある。「彼らは音楽以外のほとんどすべてに関しては結構伝統的であった」
※6. SYとニールヤング御大の発言集より。海外サイトだがファン必見!
※7. 長年これはマドンナへの当てつけだと思ってたのだが、伝記を見る限りリスペクトしてのカバーだったらしい。(それでこうなるのか……)


(オマケ)関連作

あまり本文中に他バンドの作品を拾えなかったのでオマケで。直接的な影響というよりは、時代背景の奥行を得る感じの選出。SSTやTouch and Go、Dischord周辺のバンドはアクセスしやすいので、それ以外です。ちなみにすべてサーストンが推してます。

Swell Maps『Jane From Occupied Europe』('80)
UKはバーミンガムのバンド。1stは「遅れてきたグデグデ低予算ガレージサイケパンク」といった感じで良いけども(Pavmentも愛している)、より混沌とした2ndがSYに近め。記事中にもリンクをはった「Big Maz In The Desert」は、音響的にもキてるUK版ノーウェーヴ・カオティック・オーケストラ(とは)。tr6 - 7あたりの流れは、アートワーク含め、裏Joy Division『Closer』ともいえるクオリティ。

Mission of Buruma 『Vs』('82)幾多のオルタナ勢が支持する、ボストンの(ポスト)パンクバンド。鋭いギターサウンドとベースライン、ドラムの絡みは単純にカッコイイ(音源)。Wireらの時代とエモ、ポスト・ハードコアをつなぐミッシングピースとしても機能する。

Wipers『Youth of America』('81)
USはオレゴン州のパンク後夜の雄。GURANGE ALTERNATIVEでも取り上げられているので詳細はそちら。個人的に本作はtr1, 2, 6がすべて。その焦燥感と単音フレーズの感覚はHüsker Dü、Dinosaur Jr.、そして『Daydream Nation』につながる。長尺曲のサウンドスケープの展開も影響をうけてそう。

改めてやはりこの年代のバンドもカッコいいなと。

『Goo』『DIrty』へ続く→


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