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『風のアンダースタディ』(鈴木美紀子氏)を読む。
『風のアンダースタディ』(鈴木美紀子氏)を読んだ。
本について
書肆侃侃房による
新鋭短歌シリーズ34である。
「アンダースタディ」は英語で代役の意。
※語義が広いため、詳細をご覧になりたい方はwikipediaのリンクをご覧ください。
五首選
こぼれゆく日々にひかりをあてたくてこの身くぐらす白いワンピース
服を着ると、内側は暗くなる。
しかしこの短歌では、「白いワンピース」なので、白い光で体を包むイメージだろうか。
「これはあなたの物語です」と帯にある本は今でも読みかけのまま
「読みかけ」という途中さが、人生が途中であることを暗喩していて上手い。
鉤括弧が目を引く。
かさぶたの色の葉っぱが剝がされてひりりとひかる秋の空あり
秋の空の独特の雰囲気が、工夫のある喩で綺麗に表現されている一首。
「かさぶた色の葉っぱ」という発見が活きている。
伝書鳩の味がしたんだほろほろときみを想って食む鳩サブレー
鳩サブレーの鳩の形という視覚と、ほろほろとしたサブレーの食感という触覚と味覚を存分に活用した一首。
感覚的な良さだけではなく、題材の素朴さと上手な喩も見どころ。
さくらにも運命はありあんぱんのへそにすわってしっとりと咲く
さくらあんぱんも、さくらの運命としては珍しいかもしれない。
へそにすわるという言い回しの面白さがある。
ひらがなでしっとり詠まれている点が、内容に合っている。
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