PdMとして大切にしている3つのこと
クラシルというレシピサービスを運営しているdely, Inc.でプロダクトマネージャー (PdM) をしている奥原拓也 (@okutaku0507) といいます。
素敵な企画を見つけたので、早速noteを書いてみたいと思いました。PdMとして大切にしていることは沢山あるのですが、このnoteでは特に大切にしている3つのことに絞って書きたいと思います。
愛すること
まず、大切にしていることは「愛すること」です。愛するというのは、抽象的ですが、ユーザー、チーム、そしてプロダクトを愛することがプロダクトの成功には必要不可欠であると信じています。
まず「愛する」とはどういうことか、についてですが「愛するということ」というエーリッヒ・フロムさんというドイツの精神分析学者が書いた書籍を参考にします。この本には愛するということは見返りを求めず、無条件で与えること、受け取るものではなく与えるもの、ダメな部分も愛することという示唆が述べられています。僕もこの本を読んで、所謂、プロダクト愛とは無条件で与え続けるものであると考えるようになりました。しかしながら、それが本当の目的であるプロダクトの成功とどう繋がっているのでしょうか。
まず、ユーザーを愛することについてですが、これは要するにユーザーの立場に立って、その人が抱えている課題を解決することに他なりません。愛するためには、相手の立場に立ち、相手がどういう状態になれば喜び、どういう状態になれば悲しみ、怒るのかを考えなければ、本当に愛することができません。たとえ、自分がユーザーの状態と完全に一致してなくても、ユーザーの声を聞いたり、できる限り同じことを体験することで、本当の意味で、ユーザーに憑依し、解決すべき課題が見えてきます。この時、10万人だとか100万人のユーザーに使われるプロダクトを創りたいんやということではなく、目の前の本当に困った人の課題に真摯に取り組むことだと考えています。その人のことを考え抜き、抱えている課題を解決して1mmでも幸せを感じるように行動すること、これは愛だと思っています。
もう一つ、チームを愛するということについても考えていきます。プロダクトは自然発生をするものではありません。創り手、つまり自分がいるわけです。そして、自分一人でプロダクトを創っているわけではないと思います。例えばエンジニアが自分だけだったとしても、例えばデザイナーやディレクター、セールス、コーポレート部門などさまざまな人が関わっているはずです。なぜ、チームを愛することが大事かというと、チームに所属する一人一人によってプロダクトに必要な要素が積み重なっていくため、それが直接的なプロダクトの成功要因になっていくからです。僕たちは人間なので、過ちをするし、固有な存在です。つまり、エンジニア1リソース、デザイナー1リソースという勘定でチームにアサインしても人が違えば完全に同じアウトプットが出てくるわけではないし、チームに所属する人たちの相互作用によってアウトプットが変化していきます。プロダクトマネージャーはチームに所属する全てを愛し、その人たちの所作、将来、すべてに対して自分ごと化をして臨んだ方がいいと僕は考えています。考えすぎでは?というのもあると思いますが、今回は僕が大切にしていることということで、ご紹介しました。「プロダクトは人なり」です。
最後にプロダクトへの愛についてですが、これは不確実性という観点から説明をしていきたいと思います。不確実性について、今回は詳しく説明しないので、気になった人は下記を読んでみてください。
不確実性と聞くとマイナスをイメージするかも知れないですが、プラスに転じることも不確実性があるという前提で話をします。逆に不確実性が低い状態とは、やれば上手くいくことが明らかな状態 (そんなことあまりないですが) ということになります。この本の中でも触れられているのですが、例えば短期の勝率だけにこだわって、無難でちょっとずつの改善を積み重ねていくと、それはそれで成果はできると思いますが、不確実性が低いために大勝ちするというのもない状態を意味しています。
不確実性が高いことにチャレンジするということは、マイナスに大きく転じることもあることにチャレンジをしていくことと同義です。つまり人間でいうとプロダクトの「ダメな部分」も垣間見える可能性もあるわけで、それに対して嫌悪しているならば、それは不確実性を許容できないということであると捉えています。もちろん、誰しも失敗することは怖いですし、それによって評価されてしまうことは非常に苦痛だと思います。しかしながら、勝率が高いことを積み重ねることは時としてプロダクトの同質化、つまり競合との差別化ができずに誰も幸せになれないレッドオーシャンに飛び込むことになってしまう可能性があります。それもそれで望んでないのではないでしょうか。つまり、プロダクトを愛するということは、プロダクトに存在する不確実性を理解し、チャレンジをして、もしダメだった場合でも諦めずに状況が好転するまで向き合い続けることだと想うのです。もしもダメなら、辞めればいいやとは思っていません。もちろん、無限にお金や時間があるわけではないので、引き際というのもあるとは思いますが、やれる限りのことを尽くす。これがプロダクト愛だと思っています。
勘が良い人は、僕が初めに定義した「愛する」ということは「見返りを求めず、無条件で与えること」ということと仕事をして対価として賃金をもらい、成果を出せば昇進や昇給があること (それがいらないって人はあまり多くないはず) と矛盾をしているのではないかと思われるかもしれません。著書の中でも資本主義において本質的に愛するということは難しいというニュアンスが書かれています。そのため、僕は"短期的な視点"での見返りを求めてはダメだと思っています。プロダクトが大成功すれば、その過程で身についたノウハウ、それが裏づいた実績、人脈、もちろん給与という形でさまざまなものが返ってきます。僕もこれら全てがいらないというような出来た人間では全くありません。しかしながら、今すぐそれが欲しい、全部欲しいとは微塵も思ってませんし、プロダクト開発を通して誰かが幸せになること、チームの仲間と楽しく、ワクワクしながら働けることに喜びを感じることに変わりはありません。
成果を出し続けること
PdMとして大切にしていることは「成果を出し続けること」です。成果とは、プロダクトの成長です。PdMとしての自分はサラリーマンなわけで、プロダクトの意思決定を任してもらっている状態です。もっと言うならば、大切な大切な経営資源を託してもらっている状態なので、失敗は避けなければなりません。一回失敗したら即終わりというドラスティックな環境というのも珍しいとは思いますが、何も努力せず、学びもせず、失敗だけを繰り返していては何も任していただいたことに報いてないのに等しいです。
そのため、僕は成果を出すこと、つまりプロダクトを成長させることにこだわりたいのです。もちろん過程においては、至らない点が多く、この人に任せて大丈夫なのかと思われることもあるかと思いますし、失敗やしくじりもすると思います。手を抜いたことはエンジニアだった時も、PdMにキャリアチェンジをしてからも、一度だってないを自分自身は思っていますが、客観的な評価は他者が行うことです。自分がどれだけ見栄をはったり、主張したとしても他人を変えることはできないし、自分の行動のみしか変えることができないので、全て成果で返すという姿勢を大切にしたいと考えるようになりました。
変わり続けること
不確実性が高い時代を生きていくため、自分自身を成長させていくために、変わり続けることが非常に大切だと思います。二つの視点から考えていきます。
一つは役割についてです。PdMという役割の起源は1931年とされていますが、日本で注目されだしたのはここ数年ではないでしょうか。少なくとも、僕がプロダクトマネジメントを志した2018年頃は、今のように良質な記事が沢山あったり、書籍が多く出版されたりということは全くありませんでした。つまり、PdMというラベルを仕事にするようになったのもここ数年という方が多いのではないでしょうか。何が言いたいかというと、次の10年、20年を生きていき、社会を発展させていく中で、役割を変化させることは不可避だろうと思っています。僕自身も来年、再来年という近未来ですら何を仕事にしているかも予想がつかないほど、世の中は急激に変化しています。この変化に対して争うのではなく、積極的に迎合していこうという姿勢を僕は大切にしています。キャリアをチェンジさせることは非常に不安が付き纏います。なぜなら、キャリアには向き不向きもあって、全ての人が全ての機会を活用できるようにはなっていないと考えているので、新しくチャレンジしたことで失敗をするかもしれません。仕事ができない人というレッテルを貼られるかもしれません。しかも、不確実性が高い世の中においては同じ業界だったとしても、会社を変えたらプロダクトやチームの状況は異なるわけで必ず成功が約束されているわけではないのです。しかしながら、負の側面を考えてもどうしようもないので、常に新しいことにチャレンジしていく姿勢やunlearnしていく癖はつけておくのがいいと思っています。
次に他者のフィードバックについてです。当たり前ですが、自分以外は全て師です。自分にはない視点を与えてくれると信じているし、それが良いものだけとも思っていません。自分に向けられた改善点に対して、真摯に向き合わなければなりません。この内省のプロセスを大切にしてきました。恥ずかしながら、僕は頭も良くないし、頑固な側面も持っていると思っているし、コミュニケーションにも課題しかないです。しかし、その弱さを認めているし、少しでも改善し続けたいと思っています。他者にフィードバックをすることは多少なりともエネルギーがいることで、あえて言ってきてくれているならば、何か意図があるはずです。一番怖いのは無関心、何もフィードバックがないことです。そして、何より大切なのは、プロダクトを成功させることであり、その目的を達成するために、自分自身をアップデートさせることも一つの手段であると捉えることです。そうすれば、変化は必然であり、いかようにも自分をアップデートできると信じています。
終わりに
読んでいただき、ありがとうございました。このnoteが、少しでもどなたかのお役に立てたら幸いです。
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