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誰も知らない昼寝の話

割引あり

2年前に「眠気が吹っ飛ぶだけじゃない!【昼寝】の真価と効果を最大限に引きだす実践レシピ」なんてnoteを書いたことがありました。

今回はそのアップデート版というか、「昼寝のメリットをいくつかの角度からチェックしたうえで、昼寝のポテンシャルを引きだすにはどうしたらいいかなー?」を考える回です。というのも、最近個人的に昼寝をとることが多くなりまして、どうせなら最高の効果を引きだしてやろうではないかってことでいろいろと論文を漁ってたら膨大なデータが集まってしまったので皆さんにもシェアしておこうかと思った次第です。

ご存じの通り睡眠不足によるダメージは甚大で、体重増加、糖尿病、心臓病、高血圧リスク増加、性欲減退、事故、記憶の問題、集中力の低下などなどありますが、昼寝はこれらのリスクを軽減・相殺してくれるほか、十分な夜の睡眠がとれている場合であってもさらに独自の効果を引きだしてくれる(可能性がある)点でかなり面白いテーマだったりするんですよね。

ってことで、夜十分な睡眠がとれていない方や、昼寝によってご自身のポテンシャルをさらに引き出したい方などの参考になれば幸いでございます。


で。昼寝の定義はいろいろですが、本noteではとりあえずよく引用されてる論文に従って、「いつもの夜の睡眠時間の50%未満の睡眠のこと」としておきます。かなりざっくりしてますな。5分でも3時間でも、昼じゃなくて夜勤中の休憩時間でも、ここでは「昼寝」と呼ぶことにします。

といってもやはりアバウトすぎるんで、少なくとも3つのタイプ分けくらいは紹介しておきましょう。

  • 予防的昼寝: 睡眠不足になることを予期してとるもので、予期される睡眠不足の影響を緩和する戦略として使われる

  • 代替的昼寝: 睡眠不足の後にその影響を緩和するためにとる昼寝

  • 欲望的昼寝: 必ずしも睡眠不足とは関係なく単なる楽しみ・個人的嗜好や文化的慣習によってとるもの

以下を読み進めるうえで別にこれらの名前を憶えておく必要はないですが、あなたの昼寝も(もしとっている/とったことがあるのであれば)これらのいずれかに当てはまるはず。そしてこのいずれに当てはまるかによって得られる効果が違ってくるだろうというのも予想に難くないところでしょう。睡眠不足によって増加するリスクを相殺するのと、十分な睡眠をとれている状態からさらなるブースト効果を得られるのとでは別の話ですからね。

ということで、こっからは身体能力、心血管の健康、認知機能など複数の観点から、それぞれ「昼寝」がもたらす影響をチェックしてみましょう―。

身体パフォーマンスへの影響

昼寝のメリットといえば気分や認知!というイメージが強い方もおられるかもしれません。実際古くから、昼寝はカフェインやモダフィニルとかと同じくらいに日中の眠気を打ち消し、気分や認知能力を改善するってことは確認されてきております。ただ、近年では、昼寝は身体能力をブーストする!って点でもかなり優秀なんじゃない?って知見が結構増えてきてるんですよね。

例えば、既に十分な睡眠をとれている人が昼寝をとった場合の影響を調べた研究をいくつか概観してみると、

  • Pelka先生たちの研究では、20分間の仮眠が、カウンタームーブメントジャンプやトレッドミルスプリントなどの活動を通して、アスリートのパワーやスピードにどのような影響を与えるかをチェック。すると最大パワーに有意な変化は見られなかったものの、最大スピードに改善が見られた

  • 同様に、O'Donnell先生たちの研究チームは、短い昼寝(20分未満)は、ネットボールプレーヤーのジャンプのピークジャンプスピードを高める可能性があることを発見した

  • Boukhris先生のチームによる包括的研究では、昼寝なしと40分、90分の昼寝を比較した結果、昼寝によって筋力と身体持久力の向上が認められ、90分の昼寝は40分の昼寝よりもさらに効果が大きかった

といった知見が報告されております。

また、夜に十分な睡眠がとれていない人においてはさらに昼寝の効果がブーストする傾向が認められてたりします。

  • 睡眠時間が限られているサッカー選手や重量挙げ選手(1晩あたり3~4.5時間程度)を対象とした研究では、昼寝によって身体能力が大幅に向上した。例えば、サッカー選手では20分の仮眠で脚力が向上し、重量挙げ選手では60分の仮眠で睡眠制限で低下したパフォーマンスの低下を相殺できた

  • 他にはDaaloul先生たちは、30分の仮眠によって空手選手の疲労が軽減し緩和し、ジャンプや持久力テストのパフォーマンス向上につながることを確認した

  • 同様に、Hammouda先生やRomdhani先生の研究では、よるの睡眠時間を制限した翌日に長めの仮眠(90分)をとることで、アスリートの無酸素性能力とパワーが有意に向上することが示された

基本的には、昼寝の効果は瞬発的なパワーやスピードにおいて確認されがちなんですが、いくつかの研究では持久力の観点でも昼寝がポジティブな効果をもたらすことを示てされたりします。

例えば、

  • ランナーを対象としたBlanchfieldたちの研究では、午後に90分の仮眠をとることで、ランナーが長時間負荷のかかるタスクに耐えられる時間が延びることが確認された

  • この効果は、前日の睡眠時間が7時間未満のランナーにおいて特に顕著であった

みたいな感じ。まとめると、特に睡眠不足の翌日に昼寝をとる(上のタイプ分けで言えば代替的睡眠)ことで、いろんな運動パフォーマンスが大幅に向上し、程度は下がるけれど十分な休息がとれている場合でもそれなりに効果を期待できるぞ!って感じですね。

時間としては、短い昼寝(20分程度)でも十分な効果が得られるものの、より長い昼寝(90分程度)の方が効果は大きいぞ!って感じ。この点については後述する他の要素を考慮するとうーんって感じなんですけど、あなたが今は身体能力が第一!とにかく今は早く筋肉・筋力をつけたい!って場合には、ちょっと長めに昼寝をとるようにしてみるのもありかもしれません。

代謝・心血管への影響

夜の睡眠不足が代謝や心血管に多大な悪影響をもたらすことを考えると、「昼寝をとればそのリスクが軽減する!」と言えそうな気もしますけど、実際はもっと複雑で、実はこの点に関しては昼寝は良くも悪くも作用するのでは?って話になってたりします。例えば、

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