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ベートーベンとお金 その2

前回はベートーベンの収入と支出についてみたわけだが、今回はそこから見えるベートーベンの人間性について考えたい

高収入だったにもかかわらず、それ以上の支出によって借金までかかえていたベートーベン
しかし、その内訳は結局のところ家賃がほとんど占めていて、娯楽や贅沢のためにお金を使っていた節はない

彼は自分の音楽制作の環境を良くするためにはお金を使うことをためらわなかったようである
すなわち、全て音楽のためであるという音楽ファーストな考えによるところなのだ

ある友人に「地位や名誉のために音楽をするなど、どれだけ馬鹿げているか」と語っている

どんなに有名になろうともそれに溺れることはなかった
むしろ、その名声によって近づいてくる人間を軽蔑していたし、耳の持病もあって晩年は人限られた人以外なかなか会わなかった

ベートーベンが「流行好きのウィーン市民は、彼の軽薄なメロディを聴いておけばよいのだ」と皮肉った作曲家ロッシーニは、オペラの作曲家として成功をおさめ、莫大な収入を得て36歳であっさりと作曲家をやめ、その後72歳で亡くなるまで贅沢三昧をして暮らした

流行に乗り、市民が求める音楽を作っていれば、ロッシーニのような生活もできたに違いない

また、17世紀に地位と名誉を武器に権勢をほしいままにしたフランスの作曲家・リュリのように、多くの貴族の後援者を得たベートーベンならば、リュリのように権力を手に入れて好き勝手することもできたかもしれない
(時代も国も違うのでわからないが)

モーツァルトも高収入を得ていたにもかかわらず莫大な借金があったと言われているが、その理由はギャンブルと奥さんの浪費によるものだと言われている

とはいえ、これらの3人の作曲家が歴史に名前を残す大作曲家であることは間違いないわけだけれど


ただいくら稼いだかを見ただけでは見えてこない実像がこうして浮き彫りになった

音楽の売上げばかりが取り上げられ、音楽の本質については触れられない社会
今も昔もそれは変わらないのかもしれない

贅沢や金銭的成功を望むでもなく、ひたすらに自らの音楽を信じ芸術性を高めることに邁進したベートーベン
音楽以外のことを優先していたなら、数々の名作は生まれることはなかったであろう

周りの雑音にまどわされることなく純粋に音楽を愛し、音楽と向き合い、音楽のために生き続けた人生
なかなかそこまでできることではない

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