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【長編小説紹介(時代)】虹ノ像

明治時代のふたりの女性を描く小説です。明治時代について調べているうちに時間が経ってしまい、途中の第10話まで書いて放置していました。第11話以降はGW中に図書館へ通い詰め、1週間でまとめ書きしました。
全21話。68,099文字。

しかし、いまだに明治時代のことが良く分かっておらず、後半は勢いだけで書いたため、後々時間があるときに修正と、もう少し肉付けをしようかなと思っています。

2023年5月に書き始めて、「やっぱ無理」とボツにして、それでも諦めきれず2024年1月に再開したけどまた止まり、2024年5月1日になんとか最後まで行き着くことができました。

Mr.Children「ハル」を聴いている時に頭の中で最終話の最後のシーンが浮かび、そこからイメージを膨らませ、いつも通り行き当たりばったりな感じで書き始めていました。明治村に行ったり、本をたくさん読んだり。とても苦労しました。
あとはSalyu、My Little Loverの曲にも助けられました。小説の内容はさておき、書き切れたことが、ただただ嬉しい。そんな小説です。


虹ノ像 あらすじ

明治23年。大火によって住処を失ったハルは、商店を営む水野家の下女となる。一方、水野家の一人娘トモは刺激のない毎日を退屈な気分で過ごしていた。
水野家の女中であるウメからこっぴどく叱られている時にハルは、女学校から帰宅したトモと出会う。
そこからふたりの、線香花火のように儚くきらめく日々が始まった。

登場人物

◇画像はすべてBing Image Creatorで生成しました。


立木ハル(たちきはる)
17歳。小さい頃、口減らしのために茶屋へ売られた。その茶屋が大火で無くなり、水野家の下女として働くこととなる。何でもすぐに忘れてしまう能天気な気質だが、水野家でウメに鍛えられ徐々に必要なことを覚えられるようになる。絵心があり、描いた絵は本職をも驚かすほどの魅力を持つ。


水野トモ(みずのとも)
18歳。商店を営む水野家の一人娘。幼いころから三郎とは許嫁関係だが、今までに数回ほどしか会っていない。現在は女学校に通っている。水野家の商売を継ぎたかったものの、小さい頃にそれは叶わない夢だと知り、勉強に熱が入らない状態で過ごしている。誰にでも優しい。


丘野ウメ(うかのうめ)
25歳。水野家の女中3人の筆頭。任された仕事は完璧にこなす。だから仕事に対して適当なハルに厳しい。厳しいが、ハルのことは気に入っていたりする。相撲の熱狂的な愛好者。肉も魚も好きだが鰻が苦手。


水野ミヨ(みずのみよ)
38歳。トモの母。誰にでも厳しい。娘だろうが夫だろうが、決まりに従わないものには鉄槌を下す。しかし過去の出来事から女中に対して無理をさせない。ハルの何事にも一生懸命な姿に、ある人の姿を重ねて見ている。トモの出産後、2回の流産を経験した。


水野栄達(みずのひでたつ)
40歳。トモの父。水野商店の旦那。商店は早逝した親から引き継いだ。フラフラと街を出歩くことが多い。ハルを実の娘のように可愛がる。手配師の縁からハルの絵の才能について聞き、絵描きである玅安と引き合わせた。誰に店を継がせるべきなのかが現在一番の悩みである。


初江三郎(はつえさぶろう)
20歳。トモの許嫁。大学生。13歳で初めて会った時からトモに惚れている。横浜に住んでいるため中々会いに来ることができず、手紙を寄越すことがある。虫も殺せぬ優しさを持っている。トモには変人だと誤解されている。


吉野玅安(よしのみょうあん)
34歳。絵描き。以前は高名を轟かせていたが、最近はほとんど絵を描かず、数人の弟子をとり自堕落な日々を過ごしている。ハルの絵の才能を生かす道を考えてくれる。鰻が大好き。


各話あらすじ

第1話 友

女学生のトモは、雨だからと人力車を使わせた親の過保護に、溜息をつきながら学校へ入っていきます。
一方ハルは、住んでいた茶屋が大火で消失し、新たに下女として働くため、水野家を探していました。なんとか水野家を見つけた彼女は、裏口でうろうろしているうち、買い物帰りの女中と出くわします。
トモが女学校から帰ると、女中のウメが女の子を突き飛ばしているところでした。ふたりの間に入り、その場をおさめたトモは、自分に近しい年齢と思われる新入り下女のハルと友だちになりました。

第2話 雨音

♪ イメージ曲 My Little Lover : 雨の音 ♪

ハルは、やたらと親切にしてくれるトモを不思議がります。
買い物帰りに、ウメは派出所前の掲示板で今日の天気を読み上げます。どうやら雨天がちの様子。
トモは父の栄達とともに夜会へと赴きます。作法に気を遣い疲れた彼女はテラスで風に当たっています。栄達によると、許嫁の三郎も来るはずが、汽車が遅れているかもしれないとのこと。
雨がどしゃ降りへと変わった頃、建物の正門にハルが現れました。中々家へ戻ってこないトモを心配して、来たと言います。
トモは無用な心配をさせないように、どこに出掛けても必ずハルのもとへ戻ると約束します。

第3話 絵

栄達はトモとハルを連れ、道端で買い食いしながら浅草を越えて絵描きの玅安を訪ねます。奔放な感じの玅安は、ハルに何か絵を描いてみろと指示しました。
何を書けばよいか戸惑うハルに、玅安は「色の着いた夢を見るか」と訊きます。ハルが今朝方見た夢は、焼けてなくなった友達の姿でした。
本格的な材料を使い絵を描くのも初めてなハルは、その友だちの像をカンバスに描いていきます。しかし途中で泣いてしまい、首元まで描き上げたところでトモに抱きつき、泣きじゃくります。
玅安は、ハルの描いた絵に感銘を受けます。そして、彼はハルを通いの弟子としました。

第4話 風呂

なくなった友だちの絵を描いてから、ハルはふさぎ込んでいました。そんな彼女を元気づけるために、ウメが五右衛門風呂を用意します。
女学校から戻ったトモは、ハルと一緒に風呂に入ると言います。
負けず嫌いのトモは、いつまで浸かっていられるか勝負しようとハルに言います。我慢比べの好きなハルも同調し、熱湯勝負が行われました。
ふたりとものぼせてしまい、筵の上で横たわります。ウメはトモとハルに着物を渡し、ハルにはさっさと仕事に戻るよう言います。
ハルは、ウメに対し初めて感謝の言葉を伝えるのでした。

第5話 夢

ハルは大きな河川の土手で花を摘んでいました。色塗りの材料にするためです。土手の上から、若い男が声をかけてきます。男はハルの行動に興味を持ち、一緒に花を摘んで回ります。男と一緒に水野家へ戻ると、ウメがその男のことを三郎と呼びました。
トモが家に戻った時、三郎はハルと一緒に洗濯をしていました。トモは、家事を遊びだという三郎に抗議します。
三郎は帰りを見送るトモへ、ハルから「トモはずっと、いつまでも一緒にいてくれる」と聞いたことを伝えます。先日の約束を、ハルは少し勘違いしているようです。目を潤ませ落ち込むトモに三郎は、トモと結婚する時、ハルも一緒に連れていけないか父に頼んでみる、と言ってくれました。

第6話 相撲

相撲大好きのウメが、トモとハルに相撲講義をしています。今日は栄達とともに4人で勧進相撲の観覧へ行くので、予習をしておこうという計らいです。
体の大きいトモに土俵際へと追い込まれるも、ハルは家事で得た腕っぷしによりトモを投げ飛ばしました。
両国の寺院へたどり着いた4人。あまりの人の多さに驚きます。いつもと違う雰囲気のウメに、ハルは背筋が寒くなります。
ウメの解説付きで相撲を楽しむトモとハル。ウメから度々出る大声にハルはげんなりします。横綱と大関の対決で頭に血が上ったウメは、その勝負がつくと同時に卒倒してしまいました。
という話を玅安に伝えるトモでした。玅安は、ハルの描く相撲の絵に、彼女の心の復調を見ました。玅安はトモへ、ハルの絵を生かす方法を考えておくと言いました。

第7話 本

トモは、ハルに本の読み聞かせをしています。フジという女が幽霊に追われる話です。怖がったハルはウメの服の中に隠れようとします。その読み聞かせに、丁稚の平太も加わります。
そのあと、本を眺めながら家事をするハルに、ウメは叱りつけます。その話を聞いたトモは、古本屋へ行こうと言い出しました。
日本橋の大きな本屋を訪れるトモ、ウメ、ハル。ウメは「安愚楽鍋」という古本を買いました。そこでトモは、玅安が挿絵したらしき本をハルに見せます。その本を、言葉の勉強に使おうと言って買いました。
その翌週、ウメがハルを追いかけています。どうやらウメの本を燃やしてしまった様子です。トモはハルを叱ろうとしますが、大火を思い出したのか涙にじませるハルに対し、それ以上何も言えなくなってしまいました。

第8話 手紙

昼休憩、ハルは女中部屋で絵を描いています。その絵をうっとりして観るウメ。その時、下階から平太の声がしました。
平太はウメに、三郎から届いたトモ宛ての手紙を渡します。番頭の一助が気を回し、直接本人に届けるため女中へ手紙を託すこととしたようです。
ハルはその重要な役目をおおせつかりました。忍びに忍んで、トモへ手紙を届けます。なんとかトモの部屋までたどり着いたハルでしたが、気配を察知したミヨがトモの部屋の引き戸を開けます。トモの後ろに隠れたり、着物の中に入ったりしてその危機を乗り越えました。
という茶番のあと、トモは栄達に手紙を見せます。三郎からの手紙には、来年の春には結婚したいという言葉がありました。トモは、ハルも連れていけないかと栄達に訊きます。しかし栄達は、下女を嫁入り道具にするわけにはいかないと突っぱねます。
そのやり取りを端で聴いていたミヨは、昔あった出来事を思い出し涙を見せました。

第9話 祭

浅草の大通りで祭が開かれており、トモとハルは、黒山の人だかりの中を進んでいます。ハルが川縁の細道を見つけます。人ひとりが横向きでないと歩けなさそうな細い道です。高所恐怖症のトモは、ハルについて恐る恐る歩いて行きます。
ようやくウメらと合流し、お次は橋を渡ることになりました。橋の上で人波に流されるうち、トモはハルを見失います。丁稚の平太や番頭の一助を見つけたトモは、ハルを探すようお願いしました。
またウメらと合流したトモは、火消し隊の梯子に上るハルと平太の姿を見つけます。そして下りてきたふたりを一助が抱えてその場から逃げ出しました。火消し隊の怒りを買うと大変だからです。
しかしハルと平太は、神輿をかつぐと言ってまた群衆の中へと走り去るのでした。

第10話 牛鍋

肉問屋から貰った牛肉の残りを使い、女中3人とハルは牛鍋を食べようとしています。割り下を作り、鉄鍋へ角切りの牛肉を投入し、ネギとしめじ、豆腐を入れたら完成です。
ご飯と取り皿を用意し、牛鍋をめぐる戦いが始まりました。
全員が野菜や豆腐そっちのけで牛肉をつつく最中、ハルは煙草の臭いに気付きます。台所の引き戸を開けると、悲しそうな栄達がしゃがんで煙草をふかしていました。
寄り合いで酒がすすみ、夕飯に間に合わなかったためミヨとトモの怒りを買ったとのこと。夕食抜きとなった栄達を引き入れ、5人で牛鍋をつつきます。
そこにトモがやって来て、にぎり飯を渡し台所から栄達を連れ出そうとしますが、結局ミヨに見つかってしまいました。トモは女中たちを責めないようミヨに頼みます。
栄達は朝飯も抜きとなりました。

第11話 猫

ある秋の夜、応接間でハルと栄達が寸劇を繰り広げています。それは言葉の勉強のためでした。しかしハルの口癖が強すぎて、トモは困惑します。
その時、中庭から猫の鳴き声がしました。トモとハルがじっと中庭を見つめていると、ミヨが突然現れます。ミヨによると、それは白い子猫とのこと。
翌日、平太から貰った鰹節を持ち猫を探すハルに、ミヨは自分の仕事をするよう諭します。ハルは鰹節をミヨに渡し、走り去ります。
トモが女学校から帰ってくると、ハルが松の枝にしがみついています。その懐には猫。平太が火消しから高梯子を借りて戻るまで待つよう、一助は言います。強風で枝がしなり折れそうになったところで、ミヨやウメらがたくさんの着物を持って走ってきました。
枝が折れ、ハルは着物の山に墜落して転がります。全身を痛めても猫を守ったハルに、ミヨは猫の親が見つかるまで面倒を見るよう伝えました。

第12話 落語

落語好きの平太が、横丁長屋の前で落語を披露しています。芝浜という落語ですが、ハルたち聴衆は内容がよく分からず。ハルは買い物のために出たことをすっかり忘れており、ウメに思い切り叱られました。
トモがハルを銭湯に誘おうと女中部屋下の土間へ行くと、ハルが泥団子を用意していて、饅頭が怖いと言い始めます。饅頭こわいの噺を知っているトモは、逆にハルへ悪戯なことを言いました。
それはさておき銭湯へ向かう途中、いつか猫と別れることになるという話になり、トモはそれをこれからのふたりのことと重ね合わせて黙ってしまいます。
そして帰りの茶店で、トモはハルに「どこへ行っても必ず戻ってくる」と約束しました。
翌日の昼、平太が子猫に寿限無という落語にある長~い名前を付けたらしく、ハルはその名前を練習していました。そこへミヨがやって来て、もう長助でいいのではと言います。
よって子猫の名前は長助となりました。

第13話 鰻

玅安に連れられて、ハルは鰻屋の主人、寛次郎を訪ねます。栄達、トモ、ウメも、食事目当てについて来ました。
高名だったころの玅安を知る寛次郎は、大きな鰻の絵を壁に描いてほしいと言います。漆喰の壁に直接書くことはできないので、まずは木の板をうちつけ、そこへ画紙を貼ることにしました。
トモとハルが動く鰻を見ている時に、一匹の鰻が逃げ出します。
その鰻は、鰻が苦手なウメの眼前まで迫ります。ウメは卒倒しました。
目覚めたウメは、からかってくる玅安と口喧嘩します。激昂した玅安に、ウメの事を悪く言われたハルが怒りの平手打ちをしました。
数日後、トモとハルが工房を訪れると、髭を剃って身なりを正した玅安の姿がありました。
玅安は、もう一度天下を取るとハルに宣言しました。

第14話 幽霊

とある寺を、トモとハル、玅安は訪れます。本堂とは離れた場所にあるお堂に、玅安が現役絵師だった頃の掛け軸が納められており、それをハルの絵の勉強のために見せているところでした。
その時、突然激しい雷雨となります。三人はお堂で雨宿りをすることに。
小雨になった頃、三人の前に火の玉、そして髪の長い女の姿が現れました。何をするでもなくただ佇む女。ごろごろという音に、ハルは何か気付いて女に近付きます。女は腹を減らしてお寺に迷い込み、すぐに亡くなった女性の墓へと消えていきました。
ハルは、その女性を弔うために、幽霊画を描きます。幽霊が饅頭を頬張る姿を描いたものでした。
そしてそれは、ハルの初めての作品となりました。

第15話 花

冬が近づくにつれ、川辺はほとんど花が咲かなくなっていました。
花言葉を教えるために、ミヨはハルを連れて花屋を訪れます。花の絵を描いてともに贈るのなら、自分の気持ちをあらわすような花を選ぶべきだと、ミヨは言いました。
また、花屋の店主から、冬でも夏の花が咲く場所があることを教えてもらいます。なぜそれを教えてくれたのかは、謎です。
花屋を出たミヨとハルのもとへ、ウメが走ってきます。
三郎からの電報を持っていて、電報には『サブロイキマス』と書かれていました。どうやら三郎が、急遽やって来ることになったようです。

第16話 三郎

水野家に三郎がやって来ました。ただ事ではなさそうです。
三郎は、来月にも長崎にある兄の会社へ赴任すると言いました。それで、トモを連れて行きたい、結婚したいと、栄達へ伝えます。
急過ぎる話に、栄達は激怒します。三郎の親はイギリスに行っており、結納も顔合わせもない結婚など、到底認められないと。
落ち着くために、栄達はトモと二人で話し合います。そこでトモは、水野家のために、三郎と結婚することを決めました。
その話は女中たちに筒抜けで、ハルが強がりな言葉を吐くのを聞き、ミヨはハルに胸を貸すことにしました。それで、ハルは思い切り泣きました。

第17話 彩

花屋の店主から聞いた、冬でも夏の花が咲くという山を、ハル、トモ、ウメの三人が登ります。
その場所は霧に覆われていて、霧の中はまさに夏の気候。山を登ってきた三人にとっては暑過ぎる場所でした。
ハルが着物を脱いで走り回るのを見て、トモも同じく着物を脱ぎます。恥ずかしがっていたウメも、結局着物を脱ぎました。
夏の花で、ハルは大きな花飾りを作ります。それをトモの髪に挿してやり、記憶にとどめるために少し離れた所からじっと見ます。そのうち、ハルは泣いてしまいました。
トモは結婚の話をハルにできずにいましたが、すでにハルはもう会えなくなると分かっている、ということを知りました。

第18話 河岸

猫の長助がどこにも見当たりません。冬空の下、皆で探しますが、家の中には居ない様子。いつの間にか、ハルの姿もなくなりました。
女学校にて退学の挨拶を終え、帰路に着いていたトモは、川の真ん中で岩の上、震えている長助を見つけます。しかしこの時季に舟は出ておらず、棒でも届かない、冷たい川に入ってまで助けようとする者もいません。
そこにハルが走ってきて、着物のままで川に入ってしまいました。長助の所まで到達したものの、ハルは岩にしがみつくのが関の山、どんどん色を失っていきます。
助けたいけれど、泳げなくて足が震えるだけのトモが目にしたのは、ハルを助けるためにふんどし一丁で川に飛び込む平太の姿でした。
平太は長助とハルを救助します。ハルは毛布を被せられて水野家へ運ばれ、平太の肩を支えて、トモも水野家へ戻っていきました。

第19話 虹

♪ イメージ曲 Salyu : iris~しあわせの箱~ ♪

トモが横浜へ出発する日、停車場には三郎、栄達、ウメ、一助がいました。ハルは先日の件で風邪を引いたため、見送りに来ませんでした。
もうすぐ汽車が発つというところで、栄達はミヨが忘れ物を取りに行ったきり戻ってこないと告げます。
そのミヨは、水野家でハルと話しています。
ミヨは、昔あった出来事をハルに伝えます。それは、実家にいる頃、ヤエという女中とのエピソードでした。今のトモとハルの状況に似たその話を聞いて、ハルはトモに会いに行くと言います。
汽車が出発し、速度を増し始めた時、馬に乗ったミヨとハルが現れます。馬でぎりぎりまで近付き、ハルは馬を飛び降りて、走りながらトモへ絵を渡しました。
絵を開いて見ると、それは虹色で彩られたトモの像でした。

第20話 飛翔

♪ イメージ曲 Salyu : 風に乗る船 ♪

鰻屋に鰻の絵を見せる当日、ハルは鰻に翼を付け加えました。
それは、前日に届いたトモからの手紙に、「翼があったら飛んでいきたい」と書かれていたからです。
玅安は困り果てますが、結局、鰻屋の主人寛次郎に、「これは飛翔を表現している」と適当なことを言います。
川辺で物思いに耽るハルを、ウメが元気付けていました。そこへ商談を終えた玅安がやって来ます。どうやら鰻の絵は売れたようです。
それから二年後の春、子どもを身籠ったトモが停車場に降り立ちました。

第21話 春

♪ イメージ曲 Mr.Children : ハル ♪

トモは、ハルが使っている玅安の工房を訪れました。
そこで、小さな子どもを背負うウメと話します。ハルは、いつもの川辺の土手で花を摘んでいるようです。
トモは、ハルに会いに行きます。
ハルはせっかく綺麗に手入れされた着物を、泥だらけにして花を集めていました。その変わらなさに、トモは笑います。
あの時手渡された虹色のトモの像は、二年が経って、すいぶんと色褪せてしまいました。ハルはもう一度、花の色で塗り直すと言います。
ハルはトモに駆け寄ります。
強い風に飛ぶ花びらが、青空に虹色を作り出していました。

あとがき

毎回、一つ小説を書き終えるたびにプチ燃え尽き症候群になります。きっと今回もそうなるでしょう。特にこの小説は、後半を数日で一気に書き上げています。一日に1万文字越えなんて、僕にとっては大変な量のエネルギーを消費する行動でした。

結果的にエセ明治時代となってしまいましたが、学生時代に勉強なんてしてこなかった自分が、必死こいて本を読みまくり書きました。苦労した割にやっぱり全然上手く時代とか、明治らしさを表現できてなくて、残念な気持ちでいっぱいです。上記の各話あらすじを書いていても、あっこれ書き忘れたとか、もう少しちゃんと書きたいなっていう箇所が多々あります。だから、そのうち書き直すか、ちょっとずつ修正していくつもりです。僕の頭の中にあるこの物語は、本来もっと感動できるはずなのです多分。

この小説の登場人物には、かなり思い入れがあります。現実にいる誰かを参考にしたわけじゃないけれど、こんな人がいたら面白いだろうな、こんな人と過ごせたら楽しいだろうな、幸せだろうなって、想像しました。僕の中では今でもハルやトモ、ウメたちが動いているので、いつか短編で後日談をやりたいとも思っています。

拙くて、やっつけ感いっぱいではありますが、かなり心を込めて書きました。大切にしたい、大好きな小説です。

(2024年5月1日、朝)

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