人間ってなんだろう問題。

よく行くカフェで、よく見るおばさん。
本を数冊と、タブレットとチラシの裏を束ねたメモにボールペンで何やら書いている。

僕が入り、座り、数分後におばさんが来て座る。
そのパターン。

おばさんはいつも同じ席に座る。
その席が埋まっている時には、斜め前の席に座り、いつもの席が空くのを様子をうかがっている。

で、その日僕はそんなことを忘れて、おばさんのよく座る席に座ってしまう。
と、おばさんがやってくる。
ちらっとこっちを見て、斜め前の席に座る。
で、ジーっと見てる。

「……」
「……」

プレッシャー半端ない。

カップを持つ度に、チラッ。
椅子を少し動かす度にチラッ。

おばちゃんが立ち上がってはチラッ。
チラッチラッチラッ。

いやいや。そこで良いでしょ。
ここに座ることによって、何が変わってどうなるっていうのさ。

なんか、かたくなにどきたくなくなってくる。
僕も二十五分だけのリラックス時間なんだ。

けど、まったく落ち着かない。
とにかく時計を見て、早く二十五分経たないかなぁぐらい思ってくる。
チラッチラッチラッ。

「……」
僕は、二十二分で立ち上がり、カフェを出た。

出る間際、おばちゃんが書いているメモをちらっと見た。
「人間ってなんだろう」と殴り書きが読めた。

僕が立ち上がるとすかさずおばちゃんは席を移動して、チラシの裏を束ねたメモにまたなにやら書き込みをしていた。

「……」
人間ってなんだろう。

なんでしょう。
と、僕は考えながら職場への戻る道を歩いていた。