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彼女のヤバイ父親に結婚の報告をしに行くが許してくれない。

彼女の両親は離婚している。
彼女もほぼほぼ会っていない一人で暮らす彼女の父親に結婚の報告に行った。

「許さん」

と、扉越しからの声。結婚の許しがもらえない。
報告の他に、結婚式には来ないでほしいと伝えないといけない。
彼女の母親がどんなことがあっても顔を合わせたくないと言うのだ。

訪問し、顔すら見られず、帰され、三度目。

「許さん」
と、また扉越しからの声。

「もう、お父さんの許可なんか関係ないんだから、もう、一生来ないからね!」

と、彼女が言い、二人で帰ろうとしたときに扉が開いた。
「え」
「あ、初めまして、僕は娘さんと……」
と、僕が慌てて挨拶しようとするのも無視し、父親は僕を睨みつけたのち、彼女の手を掴み、
「ちょっ、なに」
「いいから!」

彼女を車に押し込み、そのまま自分も乗り込んで走り出した。
「え、あ……」

呆然とする僕に、彼女からLINE。
「結婚式の日まで私を拉致しようとしてる! 助けと」
「て」、が「と」になってる。

僕は、慌てて彼女と乗ってきたバイクに乗り、車を追いかけた。
車が見えた。 一気に加速。 

前に回り込み、止めようとするが、車は速度を緩めず、逆にバイクに突っ込んで来ようとする。 マジか! 噂には聞いてたが、ヤバい父親。
だったらっ!
僕は、バイクから飛び降り、横倒しにして、車へぶつけた!
ドガハジャッナンッ! 
と、凄い音とともに車が停車!
車の扉が開き、父親が彼女の手を引き、走り出すのが見えた。
僕は、二人を追う!
「ハアハアハアハアハアハア」と強引に彼女の腕を掴みながら走る父親。
「もう、いい加減にして!」と抵抗する彼女。
「うぉぉぉりゃゃっっ」と、気合を入れ、二人に向かい走っていく僕。

追い付き、父親に覆いかぶさる。
車道横、土手。夕焼け。田舎道。
「む、娘さんと結婚させてください……はぁはぁはぁ」
「はぁはぁはぁはぁ」
父親は、僕を睨みながら、僕をどかし、ゆっくりと立ち上がると、少し先にいる彼女のもとへ歩き、腕を掴もうとした。
彼女が抵抗すると、それでも強引に腕を掴み、
「なに!」
自分の腕に、彼女の腕を絡ませた。
「……」
「ゆっくり、歩くぞ」
そして、バージンロードを歩くように、僕のもとへと進んでくる。
夕日が僕ら三人を照らす。

僕の前で立ち止まると、彼女の手を僕に差し出す。
僕は、彼女の手を取り、そして、僕の腕に絡ませる。
そして、二人、歩を進める。
父親は、その場に座り込み、僕らを眺める。
僕らは立ち止まり、父親の方へ向き、二人でお辞儀をする。

「チューしろ」と父親。
「何言ってんの!」と、彼女。
「結婚式ってのは、人前でチューして拍手される儀式なんだろ?」
「は?」と、言う彼女に、僕は強引に唇を奪った。

父親は、「ハハッ」と、笑い、
僕たち二人に向かって、拍手をした。

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