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翻訳者歴4年目になり、仕事について思うこと

こんにちは。
先日また新たに担当した仕事は、一瞬、単価低すぎないか!?と思いながら(短尺だったからかな)、大好きなアーティストのVTRだったので二つ返事で受注してしまったという感じでした…。まあ、結局それだって自分の英語力向上や翻訳力向上にはつながるわけだし、すごく楽しいし、見てくれる人も結構多そうなコンテンツだし、ムダではないんですよね。
でも、やはり4年目にもなってくると…。
遊びじゃないんだし、単価も大事だよな~とかいろいろ思うようになってきますね。ダブルワーク疲れるし…。

さて。
新人の頃はとにかく映像翻訳者になれたことがうれしくて、必死で、ほかのことを考える余裕はまったくありませんでした。最近は少~し業界のこともわかってきて、翻訳者ならではのキャリアプランの描き方について、いろいろと悩み、考えるようになってきました。そんな心の内を今日は書こうと思います。

フルタイム会社員とのダブルワークは本当にきつい。これを一生、は私はムリ。

私は翻訳スクールの受講生の時からフルタイム会社員でしたが、会社員+学生(勉強)なら全然余裕でいけるんです。問題は会社員+プロの翻訳者、ですね…。
これをやって4年経ちますが、すうっごくきついです。
今は在宅勤務が多い会社に転職したのでまだマシですが、前職はコロナでも関係なくフル出社だったので、納期が長いもの以外は受注できませんでしたし、依頼が来ても断ってばかりでした。
会社が終わって急いで家に帰って家事をして、寝る間も惜しんで翻訳して、次の日もできるだけ早く起きて出勤するまで翻訳して…という生活で、もちろん土日もプライベートの予定なんて入れられません。
会社のストレスや負担がゼロならいけるかもしれませんが、そんなことはありえないし。
結局、本業との折り合いがつけられずに辞めちゃう人も結構多いです。
私はもう体力的に会社員+翻訳者はなかなか厳しくなってきたので、でも翻訳者はやめたくないので、どうしたらいいかずーーっと考えてます。

映像翻訳だけだとカツカツだから通訳もやりたい!という案は魅力的だけど、決して甘くはない

これは自戒をこめて言っています。
私自身もオプションとして考えていますが、そもそもオプションなんて言えるほど簡単になれる職業ではないですし、映像翻訳者と通訳者では求められるスキルも仕事内容も全然違うからです。共通点は、目指すにあたって英語が得意でないとキツいよ、ってところぐらいでは??
単純に【英語力】だけで見ると、通訳者のほうが高いかなと思います(翻訳者の中にも、もちろん帰国子女や高レベルな人はいますが)。
私が今から通訳者の端くれになろうと思ったら、少なく見積もっても3年はかかるよな…と思うわけで、果たしてそこまでのお金・体力・気力が続くのかという懸念があります。なにがなんでも絶対になるんだ!!って腹から決めないと、なれない職業ですね。だからこそやるなら覚悟を決めないとダメですね。

人間関係のストレスが皆無ってすばらしい

映像翻訳だけで食べていくのは大変ですが、その短所(?)を補って余りあると私が思うのが、コレです。
食べていけなきゃ何の意味もないでしょと思う人もいると思いますが。そこは、副業するなり株をする(?)なりいろいろ工夫はできるので…。
とにかく、自分のペースで、ある程度自分の裁量で仕事ができる!っていうのはもう、私にとっては何よりの至福です。もちろん、チェックのコメントが厳しかったり、他の翻訳者さんと表記や抜き字幕のすり合わせをしたり、それくらいのことは当たり前としてありますが…。でも、会社でよく見る【どうしても理解できない、わけのわからない、理不尽に変な人】の被害に遭って毎日つらい、みたいなことはほぼないのでは?
だから私は、単価が低かったり、ちょっとモチベーションが…と感じることがあるたびに、コレを思い出すようにしています。

完璧を求めすぎるとかなりつらい

字幕翻訳の仕事は訳せたらそれでOKではなくて、スポッティング(ひとつの字幕が出る範囲を決める)とか表記確認(使ったらいけない言葉や漢字)とか文字数制限とか、何を斜体にするとか、とにかくいろいろとチェックすべき項目があります。そもそも論として誤訳はないに越したことはないですし、視聴者にとって流れがよくて読みやすい字幕であることは基本中の基本ですし。
何度見直しても、どれだけ寝不足になっても、絶対に数カ所はミスがあったりします。
最初のうちはいちいち落ち込んだり、納品前に必要以上に見直しをし過ぎて消耗したりしていましたが、今は下記だけはとにかく徹底するようにして、少しだけ心にゆとりを持つことを意識しています。じゃないと、24時間仕事するハメになります…。
どれだけやっても完璧にはならないし、チェッカー業務をしていると、どんな翻訳者さんの原稿だって少しくらい直す部分はあります。手を抜くという意味ではないですが、必要以上に怖がりすぎるとかえって効率が落ちてしまうので、押さえるべきところはしっかり押さえる、を徹底しています。

①SSTの最終チェック機能を使う(めっちゃ心強いので活用しまくりです)
②間違いやすい表記は必ず台本欄に書いておく(案件によって表記ルールが異なる言葉、例えばムダ、無理、分かる、イヤ、完ぺき、など)
③最初の字数設定・字幕間設定・最低尺設定などはダブルチェックする
④スポッティングが終わったら、スポッティング部分にロックをかけて、ミスタッチを防ぐ

モチベーションをあげてくれるものを知っておくと楽になる

映像翻訳は基本的には孤独な作業ですし、単価の問題もあったり、厳しいチェックをいただいたりなどで、落ち込んだり少しモチベーションが下がってしまうことももちろんあります。仕事ですから…。
最初のころはそれこそズーーーンと落ち込んだり、モチベーションが下がってしまって受注頻度がさらに減ったりしていましたが、最近は主に下記のいずれかでモチベーションが復活することが分かってきました。

①自分の担当した作品名をTwitterで検索して視聴者の反応を見る
自分ではあんまりだなと思っていた作品でも、おもしろい!と感じる視聴者さんが結構いることもあったりしておもしろいです。
②他の翻訳者さんと少しやり取りする
用語のすり合わせなどでやり取りをしたついでに少しだけ雑談をしたり、という感じで。中にはいろいろ話をしてくださる方もいて勉強になります。
③いろいろな映像作品を観る
これはまあ、当たり前なんですが。好きな映画やドラマを改めてじっくり観ると、あ~やっぱり映像翻訳っていい仕事だなあと思えます。
④映像翻訳以外の夢や目標を増やす
私にはこれしかない!とか、この人しかいない!とか思いすぎると、結構つらいものです。自分の居場所はいくつかあったほうがいいとはよく言われますが、本当にそうだなあと最近は思います。
翻訳者になる前は【絶対に翻訳者になって、会社員やめて、これだけで食べていく!!】みたいな気概でしたが、今はそこまで思いつめすぎると、結局失うのが怖くなってパフォーマンスが落ちてしまうことが分かってきました。フリーランスの方も肩書きはたくさんあったりするし、芸能人ですら、いろいろな事業に手を出したりされてるし…。私も、映像翻訳という仕事はしっかり持ちつつも、もっと他に興味のあるものややりたい仕事を柔軟に考えてもいいかもなあと思っています。

単価の話を人にするのはやめよう・・・

映像翻訳者だと言うと、結構な確率で【それっていくらもえらえるの?】って聞かれます。今まで何も思わなかったんですが、以前、ベテランの通訳者さんか通訳案内士の方だったかが、Twitterで【あなたの年収いくら?って聞かれてるのと同じことで、失礼な質問だから答えなくていい】みたいなことを書かれていて、確かにそうだよなと思ったわけです。
まあ私の場合は会社員をしつつなので、映像翻訳の単価を言ったところで自分の年収がバレるわけではないので今まで答えてたんですが…
バカ正直に答えると、映像翻訳の仕事って意外に簡単なんだな~と思われてしまうかもなあと思ったわけです。1分○○円、なので。
それは、なんかイヤだなと(笑)
すごく誇りを持ってやってるし、私にとってはまだまだ難しい部分もたくさんある仕事だし、苦労したり努力したりしてようやくここまで来たので、やっぱりある程度は「すごいね」と言ってもらいたい(笑)という変な見栄ですが…。
単価は人や案件によって全然違うよ、とか、戸田奈津子さんだとすごいだろうね、とかなんとか言って最近ではごまかしてます…。

なんだか、心の内を書くといいながらとりとめのないブログみたいになってしまいました。
映像翻訳者になったことを後悔したことは一度もないですが、もっと若いうちから今ぐらい本気で英語に取り組んでいたら、今回書いたようなごちゃごちゃした葛藤はそこまで生まれなくて、もう少し要領よく、うまく映像翻訳と何かほかに楽しいこと(笑)を両立できていたかもなあ…なんて思ったりはしています。
会社員をやめたいんだよ、とにかく…。

今日もお読みいただきありがとうございました。