軽やかでいたい
マンション入口の御影石に一粒、節分の豆が転がっていた。黒に白が映えるなぁと思いながらぼうっと見つめる。
節分からひーふーみー…え?すごい日にちが経っているのに、鳥は食べきれなかったのだろうか?
撒かれすぎて飽きたのかもしれない、し、もしかしたら節分の豆なんて本当は食べたく無いのかもしれない。撒いた後の事は鳥に任せようなんて人間のエゴなのか。
キョロキョロと私が撒いたピスタチオを探してしまう。ちょうどこの辺にバルコニーからピスタチオを撒いた。私の節分。
紛れてるだけかもしれないけれど、ピスタチオは見つからなくて、鳥もピスタチオは食べたんじゃ無いかなと思う。ピスタチオは物珍しいし美味しいから、ちゃんと殻を剥いておいたし、たぶん完食したんじゃ無いかな。
先程エゴについて考えた事も忘れて、にんまりする。
悩んだけど、殻を剥いておいて本当によかった。と、きもち軽やかにマンションを背にした。
軽やかになった気分で数日前の朝のニュースを思い出した。
毎朝、ニュースを聞いている。
6時のアラームで右手だけ布団から出してリモコンを探りテレビを点けて、それに反する様に頭まで布団をかぶる。10分のアラームを布団の中で耳を塞いでやり過ごし、20分のアラームで観念する。被っていた布団を跳ね除け、洗面所からも聞こえるぐらいにテレビの音量を上げたら今日のスタートだ。
テレビでニュースを聴きながら化粧をする。化粧をして髪を整えて、終えたらリビングに移りコーヒーを入れる。コーヒーをドリップしながら今度はリビングのテレビを付けて音量を上げる。
夜あまりテレビを見ない私はほぼ7割の日々の情報を、この朝のながら聞きで賄っている。
思い出したのは数日前のニュース特集。荒井首相秘書官更迭にからむ性的少数者への差別についてのインタビューだ。今回の差別発言をどう思うか、街頭インタビューでマイクを向けられた女子高生は「女同士のカップルとか周りに普通にいるし、隣のクラスにもいるし、遅くれてるーって思いました。」ってけらけら笑っていて、いいな。と思う。
この軽やかさがいいな。
本当の意味で差別が無くなるって(色々こねくり回さずに)、軽やかなのかもしれない。
あの時のいい気分を思い出しながら駅に向かっていると、小学生が弾みながら、ランドセルをパカパカしながら私を抜き去っていった。(うちの近所にはひとり、絶対にランドセルがパカパカしている子がいる)
パカパカを眺めながら後ろを歩いていると「俺、将来絶対タバコ吸わないんだ!タバコ1本で寿命が5分15秒縮むんだぜ」って眉唾な情報をでかい声で話していた。(15秒とは。。)
小学生ってほとんどいつも弾んでるな。
軽やかでいたい。
テレビの高校生みたいに。弾んでいる小学生みたいに。
将来おそらく彼女や彼らは、軽やかにそこにある、いや、あるかもわからない境界線をトントンと超えていくだろう。
グ・リ・コ・の・お・ま・け、より楽しげに、ケン・ケン・パ、よりスムーズに。
通学路との分かれ道、パカパカのランドセルを見送る。
「寿命−5分15秒の好奇心、フフフ。」
彼はタバコを1本ぐらいは吸うんじゃないかな、好奇心は猫をも殺すって言うし。なんて思いながら、もう少しだけ体を弾ませて駅を目指す。
ピスタチオを撒いた日の日記はこれです
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