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「マイノリティ」であること。

週末に、カナダのモントリオールに同学年MBA生の有志60人ほどで旅行してきた。

旅行は楽しかったが、この旅行を通じて、日本人の自分自身がアメリカ社会ではマイノリティであること、そしてマイノリティであることの大変さを実感した。

この記事で伝えたいことは以下。
- 日本生まれの日本人がアメリカに住み続けても、アメリカ社会では一生マイノリティであり続けること。仲良くする人にもよるが、結局アメリカ社会はまだ白人がマジョリティな社会であるということ
- ただし、マイノリティであり続けたとしても、そもそもアメリカは同じ境遇で移住している人が山ほどいる多国籍国家なので、日本人がアメリカの方が肌に合うという理由で住み続けることは全然アリだと思っていること

どんな旅行だったの?

カナダのMontreal出身の同級生が企画した旅行で、もはや現地集合でもなんでも無く、60人全員が一堂に会することはなかった(笑)。
何人かずつのグループに分かれて行動しながら、ところどころなにかする度に、全体チャットに「今からここで飲むけど来る人いるー?」的な感じで話し合って、いくつかのグループが合わさったり別れたりしながら一日を過ごし、夜にはクラブ行ったり、6LDKの巨大な部屋に15人くらいでパーティーしながら適宜雑魚寝するイベント。
多分、ザ・MBA的なイベントなんだと思う。
ちなみに、コロナだったので昨年はこの手のイベントは公式的には一切開催されず、この旅行が我々の学年で初めての生徒企画型旅行だった。同級生の日本人は11人いるんだけどたまたま誰も来れなくて、日本人は自分ひとりだった。

行動したグループ

そしてこの旅行の中では、主に2つのグループで行動した。

①一緒に車でカナダ入りしたグループ(Internationalグループ)
カナダにはボストンから6時間かけて車で行ったが、その車で一緒に行った仲間たち。外国人生徒がメイン。
白人アメリカ人男性のBen(英語以外喋れない)
中華系アメリカ人のLillian(英語以外喋れない)
チリ人のCaro(スペイン語が母国語、英語は第二外国語)
アメリカ出身の中国人のサリー(中国語が母国語だがアメリカ育ちで英語はネイティブ)
コロンビア系アメリカ人のジョアナ(スペイン語が母国語、英語は第二外国語)
日本人のKentaro(日本語が母国語、英語は第二外国語)
1人以外全員知り合い

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②同じairbnbのグループ(アメリカ人グループ)
白人アメリカ人男性3人(英語以外喋れない)
白人アメリカ人女性2人(英語以外喋れない)
完璧な白人ではないが何系なのかよくわからないほぼ白人のアメリカ人女性1人(英語以外喋れない)
Kentaro(日本人)
半分のメンバーは知り合い、半分のメンバーは初めて会った人

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自分がマイノリティだと感じた瞬間

同じairbnbのアメリカ人グループと行動していた時に、ホントに全てにおいてマイノリティであると実感した。
自分は英語は大して問題ない(ネイティブとは程遠いがコミュニケーションは問題ない)んだけど、とにかく話している細かい内容に対して知識がついていかず、会話に入り込めない。
例えば、Montrealの街中を歩いているときに、街中の景色がニューヨークのブルックリンに似ている、とか言う話になったり。たまたま通りかかったおしゃれな本屋に入ったら、高校のときに読んだ本の話になったり。クラブに行っているときに、流れている音楽がわからなかったり、酔った屈強な男性たちが椅子に座った女性を担いでいるのを見て、「ユダヤ人のやつだ」とか言ったり。

その度に俺は、「へー、ブルックリンはこんな感じなんだ」「大学生になるまでは英語の本は一冊も読んだことなかったんだよね」「ユダヤ人は酔っ払うと椅子に座った状態の女性を担ぐんだ。へー」といった感じの返しになります。他の人達が盛り上がっている話題に入っていけないのです。

もちろん、MBAに来ている白人たちなんて、ほとんどの人がいいとこ育ちで、言葉や文化がわからない外国人に対しても優しくしろ、というような教育を幼少期から受けてきたナイスな人たちばかりです。彼らは、決して僕の不完全な英語や話す内容をバカにしないし、何ならよくわからなくて入っていけない話題でも一定間隔で誰かが話を振ってくれるから終始無言でいる状態とはならないで済む。みんな超良い人たちなのです。

そうなんだけど、なんだろうこの、仮にあと30年アメリカに住んでも、彼らのコミュニティには入れないだろうなという感じ。

でもよく考えてみたらそれはそうですよね。だって、白人たちがいくら日本語が喋れても、ミニ四駆組み立てたことないだろうし、国語の教科書で出てきたポディマハッタヤさんの話なんか知らないだろうし、丸の内と新宿と銀座の雰囲気の違いなんて話してもピンとこないだろうね。もはやそういう感じなわけですよ。

言語とかは後付けで学習してなんとかなるんだけど、生まれ育ちにより長期に渡り形成されてきた知識レベルで同じ価値観を共有するのはもうほぼ無理だと思う。まぁ、その価値観を共有すること自体にどこまで価値があるのかは人によって違うのだけどね。でも、このレベルでの会話がなされると、アメリカの中心を担っている白人たちの社会には決して同レベルで溶け込むことは無理なのだということが実感できます

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ってな感じの一連の経験をした後、ドライブ中にインターナショナル中心のメンバーと話しながら、「やっぱり白人社会に溶け込むのは無理だわ。この国で残りの一生過ごしたところで変わることがないと思う」とドライブ中に中国系アメリカ人のLillianに弱音を吐いてしまいました。笑
彼女は、わかるよー、という感じでした。彼女は生まれ育ちがアメリカで英語しかできないのですが、中華系なので、受験においても就職においても、結局アジア系アメリカ人というプールでの戦いになるから、そもそも文化をわかったところでまたその先に肌の色という壁もあるというような話をしてました

ちなみに、一緒の車にいたラテン系の人たちは、「まぁ細かいことは気にすんなよ!アメリカはダイバーシティーにも寛容だし、マトモな就職先を確保すれば良い生活できるし!」的な感じでした。白人男性のBenは寝てました。いや、コメントし辛い話だったので寝ているふりをしていたのかも。

この、internationalグループにいて会話していると、かなり楽でリラックスできて楽しい。何故なら、白人コミュニティの共通知識について気にする必要ないし、英語も完璧じゃなくてよいし、気を張る必要がないから。
でも、この時会話する内容は、日本人が日本人同士と会話したり、外国人が外国人同士と会話したりするものよりもかなり浅いものとなる。何故なら、生まれ育った環境や価値観が本質的に異なる人達だから。でもそんなのどうだって良い。少なくとも学校のことやビジネスのことや趣味や、今見たものに対して何を感じるかということさえコミュニケーションを取れれば、まぁ居心地の良いレベルのコミュニケーションとはなるわけで。

総合商社におけるマイノリティ

日本で、私の所属していた総合商社には、外国人の同僚がけっこういた。いや、正確に言うと、メチャ少ないんだけど、海外ビジネスは多いので他の日本企業と比べると多いほうなのではないかと思う。
私の所属していた部門は300人ほどで、その中で10人くらいは外国人だったと思う。殆どが中国人または日本人に帰化した元中国人だったけど、みんな日本で過ごした期間が長かったりしていて、日本語ネイティブまたは日本語がほぼ完璧だというレベルの社員だった。

日本人は、多様性に慣れていない単一民族であり、多様性に関する教育なんかマトモに受けていないので、そのような中国人の名前や、時にアクセントのある日本語の発音をバカにしている社員すらいた。日本生まれの日本人は外国人などのマイノリティと接する機会があまりにも少なすぎて、ダイバーシティーへの寛容度合いは世界最低水準だと肌感覚として思う。

同じ部署にも中国人が1人いた。彼の日本語はネイティブではなかったし、生まれ育ちは中国だった。でも、意思疎通は完全にできる。彼と日本人の上司たちと付き合いで一緒にランチ行ったり飲み会に行ったりしていた。彼は、あんまり喋らなかったが、他の日本人の中では「まぁ、こいつは中国人だし、細かい話になったら入ってこない」という暗黙レベルの共通認識があった。

彼は、今回の私のモントリオール旅行の状態を毎日、何年も繰り返していたわけですね。しかも日本というダイバーシティーへの理解に欠けるこの環境で。同じ立場になって考えたら本当に凄いよ。まぁ優秀だったのもあって結構前に会社辞めてコロンビアビジネススクールにMBA留学しちゃって卒業後は良い仕事見つけて日本から出ていったけどね。

日本人はずっと日本にいるべき?日本人にとって最も居心地が良い場所は日本なのか?

人によって違うし、自分が好きなところにいりゃ良いと思う。

私は、日本人でありながら、ビジネススクール後だったり、何かのタイミングでアメリカに移住する人たちの気持ちがよく分かる。それは、アメリカは日本より自由だからだと思う。

個人的な感覚だと、日本人は神経質な人が多い。いい意味でも悪い意味でも。
日本人は完璧主義で神経質な人が多く、またクレーム体質な人も多いので、飲食店の中なんかもクレームを避けるために異常なレベルでの清潔さを保っている。公共交通機関の中なんかもとてもきれいに保たれているし、海外からも高い評価を受けている。

一方で、その生活に息苦しさを感じることもある。例えば通勤時の満員電車。わざとでもなくちょっと肩があたっただけで怒号を浴びせてくるトチ狂ったサラリーマンなんがしょっちゅういるからね。あそこまで神経質だとちょっと狂気を感じるしもはや怖い。
私は中国に住んでたんですが、その時も満員電車などで人にぶつかることとかしょっちゅうあったけど誰も何も気にしません。だって満員電車なんだもの。
中国の電車は日本よりもインフラが新しいし清掃も行き届いていて基本的にかなりキレイ。電車の中で大声で会話している人も結構いるのでうるさいのだけど、泥酔して電車乗ったら日本人に私にも「おめー体調悪そうだな、座れよ!」って老人が席を譲ってくれたりといろいろカジュアル。
個人的には、もはや日本の神経質な満員電車より、中国の電車のほうがマシだなー、って思うわけです。多分この感覚で日本を抜け出したいと思う人は一定数いるはず。

あとは、上記の通り、ダイバーシティーに対する考え方が日本より優れているというのもあるよね。アメリカは人種的なマイノリティがかなり多い。多少は差別とかあるけど、白人のanti-vaxxerばかり住んでる南部の小都市とかに住まない限り、単一民族社会日本で外国人が生きていくのに比べたら全然マシかと個人的には思う。
女性&男性の差別という意味でも、日本は圧倒的に遅れていると思う。私の所属していた総合商社は、前身も含めると150年以上の歴史があって、今では常に45人くらいの役員がいるのですが、新卒採用の日本人男性以外が役員になったことはないと思う。ダイバーシティーのかけらもない。この45人の男性を上回る優秀さの女性が社内にいないなんてことは絶対になく、社内の優秀な人トップ45人を選んだ場合、女性も間違いなく入るに決まっているのに。優秀な女性が、女性の出世に限りがあるような環境で働くなら、いっそのこと海外行ったり外資行ったりしようって考えちゃうよね。

でも日本は、街が綺麗だし、ご飯が美味しいし、何より単一民族日本人と価値観レベルでのコミュニケーションを母国語日本語で簡単に行うことができる。日本生まれの日本人にとって居心地が良いことは間違いない。海外に行った日本人がキャリアを熟考した結果、日本に帰って日本にて一生を送ることは全く否定されるべきことではないと思う。

それぞれ自分の人生におけるプライオリティなんて違うし、みんなが好きなようにできる寛容さを持つことが大事ですね。

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読んで頂きありがとうございました!

Kentaro

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