マガジンのカバー画像

『天国へ届け、この歌を』スマホ版

122
運営しているクリエイター

#創作大賞2022

短編小説『あの歌をもう一度』

「香田さん、ありがとう」 力を振り絞って声を出したつもりなのに、かすれてしまって弱々しく…

26

短編小説『旅立ちの前に』

♬色あせる街並み  光りを失ってゆく街に  窓に灯りだす明かりは  私には眩しすぎる  涙で…

30

短編小説『眠っているあなたを見ているのが好き』

裕司が眠っている。 私は、傍らでずっと裕司の寝顔を見ている。 夜は眠れないと言っていた。…

180

短編小説『今すぐ、会いたい』

「香田さん、ちょっと」 青山部長に呼ばれた。 別室に来るように言われた。いつもは柔和な表…

48

短編小説『暗闇に向かって歌えない』

貴島さんと奥さんが、きんぴらごぼうとだし巻き卵を持って来て下さった翌週の月曜日。貴島さん…

41

短編小説『眠れない夜』

綺麗な満月だ。 眠れないので、カーテンを少し開けて、ずっと見ている。 左手に繋がれた点滴の…

51

短編小説『やさしさに潜む偽りの響き』

「帰ろう」 裕司が、さっとレジ袋を持ってくれた。 私の心の中が暖かくなった。 私は敗者をいたわる裕司の優しさを感じた。 レジ袋が裕司の手に渡った時、娘さんの目の悲しさの度合いが増した。 あなたは勝っているのよ。 なのに、そんなに悲しい目をするの。 「何か邪魔しちゃったみたいね。独り暮らし?よかったら一緒に御食事しない?私が作ってあげるわ。二人も三人も一緒よ。私達ちょうど、あなたと同じくらいの年頃の娘がいるの」 裕司の顔を見た。 何かを言い出しそうな顔。 「