短編小説『まどろみの中で』
眠った。深い眠りだった。
夢の中で、美月と娘のカンナが入れ代わり立ち代わり出てきて、どちらかの区別がつかなくなった。
カンナの幼い頃の記憶がよみがえった。
補助輪なしで初めて乗った自転車の荷台を両手でしっかりと掴んでいる。カンナは、私が支えているので、安心しきって闇雲に漕ぎ出す。スピードが上がる。カンナの軽やかな笑い声が、風に乗って吹き付けられる。息が上がる。もうついて行けないと、思った瞬間に手が離れた。引き離されるようにカンナの乗った自転車が遠ざかる。
「美月」思わ