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『天国へ届け、この歌を』スマホ版

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#連続短編小説

短編小説『そこに私がいた』(連続短編小説『天国へ届け、この歌を』最終回)

日本からエアーメールが届いた。 差出人は「池田美月」と書いてある。 誰だろう? ニューヨ…

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短編小説『夢の中に出てきた運命の人』

「失礼します」 長身の駅員さんが、制帽を脱ぎながら身をかがめるようにして入ってきた。 駅…

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短編小説『いのちの交差点』

お葬式の最中に私は、崩れ落ちそうになっていました。 ずっと泣いていました。 「最後のお別…

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短編小説『私を救ってくれた人の存在』

「すいません。池田さんと言う駅員さんは、いらっしゃいますか」 「おりますよ。今、上りのホ…

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短編小説『あと3歩踏み出せばあなたのもとへ行ける』

私は今、闇の中にいます。 深い闇の中、一切の音も色もない深い闇の中。 絶望であれば、過去…

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短編小説『闇の中へ』

目を閉じた。 美月と妻の美由紀が現れて、お互いに顔を見合わせて笑っている。美月と美由紀が…

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短編小説『まどろみの中で』

眠った。深い眠りだった。 夢の中で、美月と娘のカンナが入れ代わり立ち代わり出てきて、どちらかの区別がつかなくなった。 カンナの幼い頃の記憶がよみがえった。 補助輪なしで初めて乗った自転車の荷台を両手でしっかりと掴んでいる。カンナは、私が支えているので、安心しきって闇雲に漕ぎ出す。スピードが上がる。カンナの軽やかな笑い声が、風に乗って吹き付けられる。息が上がる。もうついて行けないと、思った瞬間に手が離れた。引き離されるようにカンナの乗った自転車が遠ざかる。 「美月」思わ

短編小説『あの歌をもう一度』

「香田さん、ありがとう」 力を振り絞って声を出したつもりなのに、かすれてしまって弱々しく…

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短編小説『旅立ちの前に』

♬色あせる街並み  光りを失ってゆく街に  窓に灯りだす明かりは  私には眩しすぎる  涙で…

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短編小説『眠っているあなたを見ているのが好き』

裕司が眠っている。 私は、傍らでずっと裕司の寝顔を見ている。 夜は眠れないと言っていた。…

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短編小説『今すぐ、会いたい』

「香田さん、ちょっと」 青山部長に呼ばれた。 別室に来るように言われた。いつもは柔和な表…

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短編小説『伝えられない想い』

「ひょっとして、松村美由紀さん?」 面会に来て、病室に入った途端に、年季の入った看護師さ…

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短編小説『迫りくる黒い影』

翌朝、私も病院についていった。 検査入院だけだと思っていたけど、そのまま入院することにな…

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短編小説『お父さん、お帰りなさい』

玄関に手入れの行き届いた男物の靴が、きちんと揃えられて置いてある。久々に見るお父さんの靴。お父さんが帰ってきている。   「ただいま」 「カンナ、お帰りなさい。あなたの帰りが遅いので、先に食べているわよ。直ぐに支度をするから、カンナも一緒に食べましょう」 元気が戻っているお母さん。 最近ずっと元気がなくて落ち込んでいた。 お母さんの元気のない原因は、お父さんの病気だと知っている。 誰にも話したらだめよと言われている。かなり深刻な状態になっているらしい。 でも、目の