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大河内健志短編集

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2020年5月の記事一覧

はじめての音楽フェスでボーカルが急に歌えなくなる(小説『天国へ届け、この歌を』よ…

ワタシたちは、現役高校生の青春パンクバンドとして、人気が出てきました。色々なライブにも、…

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たそがれ(『天国へ届け、この歌を』より)

帰りの地下鉄は、混み合う。 特に淀屋橋から梅田方面に行こうとすると、京阪の乗り換え等で降…

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宮本武蔵、参上!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

「ようやく、宮本武蔵様が参られたようです」  付き人の声でやっと我に返った。今までに生き…

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小次郎の知られざる過去(『宮本武蔵はこう戦った』より)

 見る間に試合が行われる島に近づいてきた。思っていたよりそれは小さく、周囲を見渡すには充…

2

本能には勝てない!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

「恐ろしい」 武蔵は、全身が強張って身動きが出来なくなってしまった。 小次郎は、目の前で…

8

燕を斬る!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

 佐々木小次郎の緩慢に空を切る一振りによって、巣に向かって一直線に飛んでいた親燕は飛ぶ方…

2

切り損じる小次郎(『宮本武蔵はこう戦った』より)

 徐に小次郎は、背負っている刀を下から前に回し、鐺で大店の軒先にある燕の巣をはたき落した。白っぽい土煙をたてながら、巣は地面に落ちて、砕けた。砕けた中に、何やら黒いものが、五つ六つ混じっていた。それは、よく見ると、子燕であった。まだ飛ぶことも出来ない子燕は、歩くこともやっとのことで、一つに集まって、唯か弱く泣くばかりであった。  小次郎は、落とした巣には一瞥もくれず、群衆を一通り見渡すと正面に広がる通りに顔向け、視線を空に向けた。空を見つめたままに、小次郎は静かに息を整えて

異形のサムライ(小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

父、無二斎より、小倉藩の権力争いのごたごたを収める意味も含めて、「佐々木小次郎」なる剣術…

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身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(『宮本武蔵はこう戦った』より)

「こだわりを捨てよ」 武蔵は、 自分に言い聞かせた。 大地と一体化するのだ。 自然の声を…

5

海を見つめる武蔵(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵は海を見ている。 日の出から随分時間が経った。陽が昇って頭上近くになろうとしているの…

6

新説坂本龍馬暗殺 5話 あとがき

この作品を読まれた坂本龍馬ファンの方は、さぞかしがっかりされたことでしょう。誤って同士を…

2

初めて自転車に乗れた日の思い出(『天国へ届けこの歌を』より)

 私が、補助輪なしで自転車に乗れた日のことは、今でも鮮明に覚えている。  補助輪を外した…

3

悪魔のささやき 5-1 (『夕暮れ前のメヌエット』より)

 ゴルフ場に着くと、すでに田中と二代目社長は先に着いていた。業界新聞で見たことがあったの…

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救急車を呼べ! (『夕暮れ前のメヌエット』より)

「よっしゃ、ナイスショット。やっと調子が出てきたで」 若社長は、 すたすたと自分だけ先に歩き出した。 「このお調子者が」と、田中の方へ見たが、田中は正面を向いたまま視線を合わさない。 前を歩く若社長が、二人が何事かささやくのを察して振り返るから注意しろと言う意味なのかも、知れない。 それにしても、田中の横顔は、年老いた巡礼者のように、疲れをしわに刻み、思いつめ耐え忍んでいるように映った。 案の定、若社長が振り返って、こちらを見た。 その顔には、先程までの傲慢な二代