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197. 世界で一番不幸になる方法

さて、私は常々世界で最も不幸であることを自負して日々を生きているわけであるが、いざそれを証明出来るかといえば否と言わざるを得ないというのが正直なところである。

ただ今回はもう許せん。
ついにこの事実を世間に突きつけねばならぬ時がやってきた。
今まで誰もがなんだかんだと認めなかったこの私の悲惨さを知らしめ、たしかにお前が一番不幸だ悪かったと言わせれば私の勝ちだ。
これを成し遂げるための方法を日夜考え、並行する日常の不幸に耐え、来る日も来る日も考えた私は既に相当不幸だろう、認めざるを得まいぞ君よ。

それにしても世の中自分が不幸だと思っている人間の多いこと。
私を見ろ。
お前の不幸など朝飯前、いや昨晩の夜飯前だぞと。
おっと不覚にも取り乱してしまった。

そう、私が編み出した、自身の大不幸を証明する天才的手法、それは
自分が不幸だと思い込んでる者達ひとりひとりと片っ端から対話して私の方が不幸であることを認めさせるというものだ。
まったく、偽物の不幸者を相手にせねばならん私の不幸を知れと言いたい。

そうだそういえば友人のあいつはいっつも不幸自慢をしてたな、まったく懲らしめなければならん---


---話を聞いてみりゃあ大したことはない、私が彼の問題を解決してやったさ。

「ありがとう、ほんとは今日死ぬつもりだったんだ。
お前がいなかったら俺はここにはいないよ」

なんてあいつ涙ぐんでいやがった。
まったく大した楽天家だぜ、私もあれくらい能天気だったならもっと幸せだったろうに、どうしようもないやつだ。

この分だと私が世界で一番不幸なんて命題を証明するのは容易くて仕方ないだろうな、そういやあいつもなんか悩んでるとかほざいてやがったな。
話でも聞いて笑ってやるとするか---


---ほんとにくだらないことで悩んでやがるな人々ってやつは。

話を聞いてやっただけで好きだなんて言いやがって。
そんなに簡単に人を好きになれたら私だって大幸福だったはずだぜやれやれ。

まったく人が自分よりも全然不幸じゃないと分かると気分がいいな、不幸ぶりやがって愚民ども。

さて次はどこのどいつに真実をみせてやろうか、お前なんて全然不幸せじゃないってなあ、アーハッハッハ…


彼が世界で1番不幸になったそのときには、世界は今までにないほどに幸せに満ちているだろう。

そしていま少しづつ充実し始めている人生に気付いてない彼もまた、幸せになりつつある。

彼が世界で最も不幸になるにはまだまだ先は遠く、そして彼の周りの人間もまた不幸になるには彼の存在は大きすぎるのである。

まったくやれやれ

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