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story 2度目の鑑別所

17歳の12月27日 夜23時。俺は再び冷たくて重い手錠を付けられてパトカーで地元の警察署に連行された。現行犯逮捕ってやつかな。      パトカーに乗ってから10分も経たずに警察署に到着した。                  「中島。恐喝罪で現行犯だ。」逮捕状を出されてそう言われた俺は2度目の逮捕となった。   「留置所に移動するぞ。明日から覚悟しとけよ」と言われ調べは無しでそのまま大宮警察署に移動となった。留置所に入ると優しそうな刑務官が出迎えてくれた。今回の留置番号は44だった。「うわ、なんか不吉だな。。」と俺がこぼすと刑務官が「4と4を合わせて幸せ。だからきっといい事あるよ」と言ってくれた。何故か少しホッとする。また色々な角度から写真を細かく撮られたり刺青を撮られたりした。体の至る所を見られたりして再び少年房に入れられる。独居だ。ギザギザの毛布に包まれ「あ〜。帰りたい。。」そう思ってまた枕を濡らしてその日は眠りについた。

翌日朝から警察の調べがある。       「はい、おはようさん。よく眠れたかい?」嫌味ったらしい担当の警察が言ってくる。俺は「寝れたよ。十二分に」そう返した。調べはこんな会話から始まる。                「当日の話をしてくれ」           「仲間に裏切られたので話を聞きにいきました」「もっと詳しくだよ」            「ぶっ飛ばそうと思って家行ったら母親でてきて通報されました」              「お前と一緒に逮捕された奴は凶器準備集合と恐喝、傷害の3件だ。カッターナイフ持ってたのお前は知らないって言い切ってたぞ。いい仲間持ったな」                    「そうでしょ〜」調べは2時間くらいかかった。そしてまた少年房へ戻されずーっと1人の時間。接見禁止が付いていて誰にも会えなければ本も入らない。                    次の日、手錠を掛けられ腰にロープを巻かれて埼玉地検に移送されて10日拘留を食らいまた留置所に戻される。                「どうも中島くん。ちょっと他にも聞きたい事あるんだよね」別の警察に言われて色々な写真を見せられた。街頭カメラで喧嘩を撮られてる物だった。それを見た俺が「これがどうしました?」と返す。                   「これなんて中島くんそっくりじゃない」なんて言ってくるので「他人の空似ってやつですね」とすっとぼける。               「この写真、やられた子18歳なんだけど全治1ヶ月だったんだよね」しつこい警察だ。笑 「それで?」と俺が言うと「今認めたらそんな罪重くならないよ」なんて言ってくる。「なにが?」またすっとぼけた。多分、被害届が出てないからパクれなくて認めさせてパクりたいんだろう。   「残念ながらこの写真どれも関係ありません」と伝えるとアッサリ帰ってしまった。年越しは留置所で過ごすことになってしまいかなり残念。彼女のサヤと年越しをする約束だったのに。ごめんな。。

供述調書も終わり逮捕から11日後、2度目の埼玉少年鑑別所に送られる事が確定になった。結局恐喝の一件だ。9ヶ月ぶりの鑑別所。ここは相変わらず嫌な匂いがする。緑のジャージと白のロングTシャツ2枚とパジャマを渡され牢屋の中に入れられる。雑居だからまだ救われた。畳2枚に洗面所とトイレが腰くらいの高さで区切られていて他は畳まれた布団だけがある空間。           「今日からここで生活だ。私語禁止だから分からない事はしおり読む事」そう伝えられる。「どーも」と入っていき荷物を棚に入れ席に着く。後ろの奴らはコソコソ話してる。禁止でもやっぱり話すよな。少し安心。             「いつ入ったの?地元どこ?ちなみに俺は白里」隣のやつに話しかけてみる。         「俺は新座だよ。昨日入ってきた」と返してくれた。「そうなんだ。何回目?」と聞くと「少年院入ってて出て1ヶ月でまたパクられた笑」と言われた。アホなやつだ。笑            「コラー!今そこ話してただろ!こっちこい!」早速ばれてしまう。。            「はい、今分からない事あったので聞きました」「しおり読めといったろーが!」       「それでもわからなかったので」       「そう言う時は職員に聞け!分かったか!」  「分かりました」何とかなにもなく終わった。俺はとりあえず少し黙る事にした。1日目が無事終了し雑居なら余裕かなと思い始めた。      面会には母親が来てくれて「寒くない?大丈夫?」と言われた。好き勝手やって捕まってるのに心配してくれてる。少しの時間だけど母親が会いに来てくれるのは正直嬉しかった。面会が終わり部屋に戻りまた少し涙が出てきた。母親は3日に一回は必ず来てくれた。鑑別所では入浴の時間何班かに分かれて入浴ができるんだけどかなり変わった風習がある。入浴中、湯に浸かっていても親指だけは水面から出さないといけない。笑 これが地味に疲れる。恐らく小細工が出来ないよう考えられたルールだろうけどなんで親指。。  入浴では背中一面の龍にみんな見入っていて後から声を掛けてきたやつと出所後遊ぶ約束をしたりした。どうやらインパクト絶大だったみたい。 鑑別所での生活は2度目でも相変わらず長く感じる。夜は彼女や友達の事を考えたりして毎日眠っていた。時折、寂しさから涙する夜もある。

鑑別所に入って24日後、審判日がやってくる。いよいよ来た。少年院は覚悟してるけど保護観察で帰宅に…と祈って審判の部屋に入る。母親が不安そうな顔で座ってる。裁判官が入ってきて色々と読み聞かせられて今後どう教育していくかを聞いた。すると母親が「引っ叩いてでも面倒見ます。だから今日は連れて帰ります」と言ってくれた。それを聞いて俺はまた涙が止まらなくなってしまう。裁判官が「本人はどうして行こうと考えていますか?」と俺に聞いてきた。        「親の言うことを聞いて行動していきます」と答えた。

「中島龍二を保護観察処分にします」帰宅を勝ち取った。ガッツポーズしそうになったけどグッと堪えた。笑                 逮捕されてから1ヶ月後の1月末、俺はようやく外の空気を吸うことができた。外の空気は比べ物にならないほど美味しい。最高だ。帰りはまた焼肉を食べて自宅に到着。鑑別所では肉なんてまともに食えないから堪らないくらい幸せを感じる。 充電をして携帯を開くとサヤや成塚から半端ない連絡の数だった。みんなに出所した事を電話で報告をした。1ヶ月間も家に帰らないと部屋がほんとに久々に感じてなんとも言えない気持ちだ。フカフカの布団に入りその日は早めに眠りについた。

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